カバラ
夏風邪引いた時に書いたものです。
不気味に煌めく黄金の王冠は
呪われた黄金で造られたもの
誰も黄金の呪いを解くことはできず
今も不気味に輝き続けていく
不幸を呼び招く宝石を従えて
所有する者たちを不幸の崖に突き落とす
王冠を巡る争いに負けた者たちの
怨念が込められた負の遺産として
しかし、最後に所有したのは
魔界の全土を統べ死を司る魔王のみ
勇者が振るう聖剣によって
魔王の身体もろとも
呪われた黄金の王冠は砕かれた
破壊された王冠を寄代にしていた呪いは
力を失い消え去った
王冠を巡って争っていた者たちの魂も
救いを得たように天上へと昇っていった――
大いなる知恵の源は天にある
万物の創造者が住まう天
天使たちによって口伝された知恵は
人々のために書物として
残され続けている
神魔の知恵を紡ぎ描かれた書物は
真に偉大なものとして
天に近しい塔の最上に奉られ続けている
地上の賢者たちが欲するも
塔を登る力が無ければ
叶うことは決してない
天使たちが書物を石として
地上に落とさない限りは――
悠久の時を経てもなお
閉ざされているのは理解の扉
対になる鍵はどこへいったのか
天使たちが住まう天上か
悪魔たちが住まう魔界か
地上をいくら探そうも
時の流れに委ね待とうも
閉ざされた扉を開く鍵は
蜃気楼を掴もうとするものなのか
天上に漂う雲海のいずこか
地上の最下のさらなる最下か
すなわち魔界のいずこか
閉ざされた扉が開く時は
まだ来ない
あるいは、鍵も扉も無いのかもしれない
単純にして精緻な騙し絵なのかもしれない
ただ、スライドさせれば良かったかもしれない
押すか低かすれば良かったかもしれない
今となっては分からない
扉の場所がどこなのか
忘却に呑まれてしまったから――
万物すべてを深い慈悲の心で包むものは
親愛の情に突き動かされている
だというのに、人が当たり前と捉えている限り
慈悲の心を感じることはできないのか
生きるのに必要なものは身近にある
それらが欠けてしまえばどうなるのか
当たり前に陥られているものは
当たり前になってはならない
慈悲を感じたなら、感謝すべきではないのかね
生きるために必要なものを
すべて備えてくださった存在に――
満ち溢れる神力によって万物は創造されたというに
悪しき者はその事実を否定する
しかし、彼らの否定は極薄の布を重ねたようなもの
納得のゆく否定の厚さは彼らから離れ去っている
なのに、滑稽かな滑稽かな滑稽かな!
彼らの手中には厚さがあると思い込んでいる
その滑稽を、なぜ笑わずにいられよう
真実の揺るがない主張に彼らは恥をかくしかない
自ら抱いていたものが虚構なる幻想に過ぎないことを
虚構が覆われた悦楽は
苦汁へと移り変わるもの
真実の甘い果汁に勝ることはないのだから――
正しき美に酔うならば
その心は感動に震えよう
石像、絵画、配置、機能
世界にはあらゆる美が
咲き誇る花たちのように
地に満ちている
また、思慮の巡りにより
未だ知られざる蕾が
咲く時も見られよう
新たな花を見られるという祝福は
天翔ゆく鳥を捕まえようとする思考者であり
その時を捉えようとする観察者のものだ――
その戦いの勝利の美酒に酔いしれるのは誰か?
数多の敵を、剣で薙ぎ
槍で突き刺し、弓で射抜いた英雄なる将軍か
押し寄せる大軍を、その叡智から導き出される
数々の策謀で翻弄し抜いたところを攻め囲み
勝利をもぎ取った知将か
傷ついた者たちのために
心を尽くして支え抜いた
慰めの巫女か
あるいは、それらすべてに
全身全霊で叶えようと
炎馬のごとく戦場を駆け抜け
求められる限り
助力を惜しまなかった兵士たちか
それらすべてに受けし祝福は
勝利の美酒に酔うこと
ふさわしい働きには
ふさわしい美酒を
それは理の流れに属し
流転しながらも
性質は不変であるもの
変わることはないのだ――
輝かしい栄光を掴んだとしても
それを維持し続ける努力を払わないならば
風に舞い去られる木の葉のように
手中から離れゆく
天から地に落ち、災いで満たした
稲妻の化身のようになるべきではない
正しく行うならば、栄光を有すべき時と離すべき時とが
自ずと見えてくる
それを知ることを悟るならば
歩むべき道を導く術に気づくだろう
差し出されている手に
注意を払い調べるならば――
万物の基礎は土台とすべきであり
自らを閉じ込める鳥籠にすべきではない
思考を持って独自に書き加えたものが正しいわけではない
観察した事象を書き留めること
それだけで良いではないか
孫子が今の状態に落ち着くまでの経緯に、何があったのか知っているのか
独自が水増しと言う裏目となり、叡智ある傑物によって編纂をしなければならなくなったではないか
正しく土台を据えれば、大空へと羽ばたく応用の翼が得られる
コンドルや鷲や鷹のように
ツバメやカモメのように
地を駆ける鶏や成長を待つ雛とは違って
応用の翼を持って大空を翔けるのだ――
この世に存在する王国に永く続く術などない
いくら延命を施そうとも
去るための時は堅く定められている
それに抗おうとするも、手の平で踊らされていることに気づかない
あるいは、気づけないのか
荒廃しか先を許されない娼婦
踊らされている王たち
響き渡る嘲笑は聞こえないのか
見ろ、怒れる悪しき偽りの神が
道連れ欲しさに幾千の罠の数々を
地上にばらまいている
思考を侵す罠を、心を乱す罠を
思いを引きずり込む罠を、闇に誘う罠を、
餓えたライオンのような怪物が
獲物を求めて彷徨っている
しかし、彼の手中に収まっている王国は
定められた滅びのシナリオへと向かっていく
猛る猪のように突き進んでいく
その先にある業火の湖へと
落ちるしかない道を
牛のような歩みから
馬のような疾走へと
速度をあげている
理想が夢想になり代わっていることを
悟れずにいるから
業火によって砕かれた石のようになるのは
かつての王国たち
一つの王国のみが世界を支配するだろう
あらかじめ定められた見えざる領域に存在する王国が――
《終》
王道の勇者と魔王の流れから、教訓めいた流れになってしまった理由はなんででしょうかね?




