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0話:悪魔と共に歩む一族

 紫藤家、過去に引き起こされた日本崩壊の危機について、影で動いて崩壊を阻止していた一族である……と言われているが、その実は崩壊を導こうとしていた一族との対話を進めていた日本随一の和平を願う一族であった。

 和平を望むからと言って、この現代日本の中では類まれなる能力者を有する一族でもあった。その能力者とは現代社会の中においても「異能」と呼ばれている部類の能力であり、一般人には到底理解が出来ない能力である。

 その能力の筆頭であるのが紫藤家で。能力は「悪魔召喚」と呼ばれている能力であり、地獄の冥府から契約を果たす「悪魔」を召喚することを可能としている一族とする。

「お父様」

 紫藤家の次男で、次期総代として役職を決められている青年綾人あやと、綾人は自分の持ち得ている能力についての研究をすることを好み、高校卒業後の今は時間の許す限り研究に没頭している程であった。

 そして、その綾人の父親で紫藤家の現当主である男性、耳より下まで伸ばした茶色の髪と赤味が深い瞳を持つ……悠真はるまが声を聞いて歩いていた足を止める。

「どうしたか綾人?」

「はい。先日お父様より調査を依頼された件について、調査の中間報告をしたく思います」

 綾人の右手に持たれているノートパソコンに視線を向けて、悠真は小さく頷き綾人を連れて当主の部屋に向かった。当主の部屋で作業をしているのは綾人の兄であり、次期当主の座が約束されている長男のかえでが、何かの資料をまとめている最中であった。

「お帰りなさいお父さん。綾人! どうしたんだい? 僕に会いに来てくれたの?」

「楓、お前はそういうことを言うから綾人が兄離れをしたいと常日頃から言うのだよ。綾人に依頼していた調査の件について中間報告をしてくれるらしい」

 悠真の言葉に明らか様に落ち込む楓を綾人は少しだけ、本当に少しだけではあるけれども、申し訳ない気持ちになっていた。だが、それも楓の一言でやっぱり訂正する気になるのだが。

「兄離れなんてさせないよ!? 綾人には僕がいないと生きていけないように躾けるんだから!!」

「いっぺん、死んでくれませんか兄さん」

「辛辣!?」

 黒髪を背中まで伸ばしている楓は、その大きな黒い瞳を潤ませて綾人のことを見つめる。だが、綾人はそんな兄のことを嫌っている訳ではないのだが、自分に依存すると後々兄が困ることを理解しているから、冷たくしているだけであって、自立を促す意味でもあるのだが。

 悠真は兄弟の温度差を対して大きな問題と捉えているつもりはないが、家族だから、と言って放置するつもりもない。楓も本気で綾人が嫌がるのであれば、それは調整するつもりでいる。

「大体……兄さんは俺に甘くし過ぎなんです。俺は次期総代で、兄さんは次期当主。依存していたら片方が何かあった際にこの紫藤家を守れる人材がいなくなるのを考えると……」

「そんなの僕達には関係ないよ! お父さんも常日頃から言っているじゃないか。「感情の赴くままに、素直に生きなさい」って。僕は自分の感情のままに綾人を手放したくないから、想いを捧げているんだよ!?」

 ダメだ、と弟と父は考えてしまう。楓がこうなったのも理由がある。その理由を二人は一番に理解しているからこそ、無理矢理考えや行動を変えたり止めたりすることをしてこなかった……出来なかったというべきか。

 とりあえずということで楓が綾人のことをずっと見ている。それも受け入れた上で綾人は悠真へと中間報告をすることとした。

 悠真が綾人に依頼をしたのは「悪魔による契約者へのアドヴァース・エフェクトについて」の内容であり、この案件の調査をする為に綾人は自分に力を貸し与えてくれている悪魔の一人、「ベリアル」に協力を求めている。その協力を仰ぐ為に冥府に赴いた時は楓が付き添っていたので、楓もこの報告については知らない訳ではないのである。

「まず、アドヴァース・エフェクト……和名で言うなら好ましくない副作用と申しますが、悪魔による契約者へのアドヴァース・エフェクトについて判明している中身をお話致します。今現状で確認がされているアドヴァース・エフェクトは次の二つが一番の報告例が上がっています。……兄さん、分かりますよね?」

 話を振ってもらった楓は嬉しそうに優し気な微笑みを浮かべていたが、真剣な表情になって綾人が調査した結果の一部分を説明するべく、話をし始める。悠真も綾人の調査を楓が少しだけとはいえ、手伝ったのを知って少し安心してはいた。

「まず、一つ目が「見えないはずのモノが見える」、これは幻視とは異なっていて、通常ならば見えない筈の存在を認識していることが挙げられているのが一番に確認がされている。続いて二つ目に確認がされているのは……「悪魔の力が身体の一部分に浸食している」現象であることが挙げられているね」

 悪魔の力が身体の一部分に浸食している、それを聞いた悠真が心なしか眉を寄せて険しい顔をしているのを、綾人は確認をしているが楓が出鱈目を言っている訳ではないことは、綾人が一番に理解している。

 だが、この二つが一番の報告例としては数を占めているのもあって、正直な所でいえば調査をする中で答えが最も出しにくい報告でもあるのを、綾人と楓は知っていた。

 ここからは楓から引き継ぐのは綾人で、綾人はノートパソコンを悠真が使っている机に置いて、独自の調査で把握している症例の分析結果を表示させると、そこには0~100までの数値を刻んだグラフで示されて、検証件数と比例することが出来る。

「悪魔の力が身体の一部に浸食、と申し上げましたが……この件数を見てもらうとお分かり頂けるとは思いますが、浸食が主に出ているのは統計数の確認をするに至って、瞳の部分に力の傾向が見られているのが確認出来ました」

「瞳に悪魔の力であるなにかが浸食しているということか。楓はどう思う? お前もいわば悪魔の力を浸食させている身であるだろう?」

「お父さん、僕の場合は意図的に浸食を受けている方で。無意識の浸食とは異なるんですが……?」

 楓の黒い瞳、その両目には金色の糸で描かれているかのような模様が薄っすらと刻まれていた。その模様を知っている綾人は密かに羨ましくも思う反面、その模様を少しだけ愛おしく思っているのを、綾人は楓には隠している。

 悠真は綾人と楓の気持ちには気付いている人間だ。だからこそ、この二人が手と手を取り合わないといけない案件でもあるのは間違いない。悠真はノートパソコンの画面を少し見ていたが、ある件数が上がっていることに気付きながら少し眉を寄せた。

「綾人、これは……? やけに件数が上がっているようではあるが……?」

「それは……その……」

「なんだ? ハッキリ話してみなさい」

 綾人の瞳が数回彷徨った。それについて楓も何か思い当たる部分があるのだろ同じ様に視線が彷徨っている。悠真がその様子を見て何かしらの力の浸食なんだろうと考えていると、楓が盛大な溜め息を吐き出してから悠真に事情を説明する。

「その件数は……悪魔と婚姻関係を結んだ件数だよ。悪魔の嫁になった人の件数ですね」

「悪魔と……婚姻、だと?」

「俺もまだこの情報の真偽を調査をしている訳ではないので、しっかりした調査報告をするまでもないかと思いまして……しかしながら、これが事実なのであれば少々問題が……」

 綾人がそう告げる問題、それは一体何を意味するのであるかは楓意外は知ることはなかった――――

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