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ゴブリンの変異種か!?

「流石にあいつは無理だろ……」


自分は現在、匍匐前進の姿勢で茂みに隠れている。どうしてかって?それは、青色の未確認生物との戦闘後の事。あてもなく歩いていると、フゴフゴと鼻を鳴らす音が聞こえてきたからだ。猪かと思って低い姿勢で警棒を構えたが、なんと、二足歩行の豚に似た未確認生物を視認した。こいつは自分よりもデカイうえ、棍棒を持っている。

自分は慌てて地面に寝そべり、匍匐前進で茂みに隠れた。そのままの姿勢で、豚の未確認生物が目の前を通過するのを息を潜めて待っているのだ。

ビビっているからではない。正当防衛が発動していないので、警棒が壊れたりして新しく出すためには、ダメージを受けないといけなくなるからだ。もしかしたら、そのままサンドバッグになるかもしれない。考えがあってのことだ。

決してビビってはいない。自分はいつでも冷静だ。


『ゲギャギャギャ』


「こんな時に……」


あの声が、後ろから聞こえてきた。寝そべったまま振り向くと案の定、青色のあいつがその場で飛び跳ねていた。


『ゲゲギャ〜』


「静かにしろ!」


『ゲギャ!ゲギャ!』


青色の未確認生物は、こちらの状況には関係なく、奇声を発して飛び跳ね続けている。


「やめろ!見つかるだろ!」


すると飛び跳ねるのをやめて、匍匐前進の状態の自分に向かって来た。


「おいおい!冗談だろ!」


自分に向けて棍棒を振り下ろしたが、素早く立ち上がり警棒でそれを弾いた。


「危なっ」


『ガチャッ』


あの音が頭の中で響いたが、それどころでは無い自分は、有無を言わさず警棒を叩きつけた。


「静かにしろっ!」


『ゲギャ!』


ーパッパッパッパカパ〜ンー


レベルが上がった。

しかし自分は気をつけをしてしまった。どうもラッパを聞くと、体が勝手に動いてしまう。

そんな中、さっきの豚が気になって振り向くと、バッチリ目が合った。


「こ、言葉は通じますか?」


『ブホォ〜!』


「ぎゃ〜!」


やっぱり言葉は通じないみたいだ。戦うしかないが、体格差があるうえ警棒では結果は見えている。


「ど、どうする?逃げるか?」


しかし、今レベルが上がった際、新たなスキルを覚えたかもしれない。自分は、すがるようにステータスを開いた。そして新たなスキルを探した。


「頼む!新しいスキルは……双眼鏡……勝てるか!!」


レベルは3に上がっていたが、新たなスキルは双眼鏡。使えない。魔法は?魔導書的な物を読まないと覚えないのか?

今はそれよりも、目の前の豚を何とかしなければ。


『ブホッブホォ〜!』


叫び声を上げつつ棍棒を振りかぶり、こっちに向かって走って来た。


「待て待て!来るな!」


それを聞いてくれるはずもなく、目の前まで来るとおもむろに棍棒を横に振ってきた。自分はそれをバックステップでかわそうとしたが、雨でぬかるんだ地面で足を滑らせ転倒してしまった。


「痛っ!……や、やばい!」


棍棒は運良くかわせたが、仰向けで寝転んだ状態では、どうすることもできない。しかも頭を強打して動くことが出来ない。

すると豚も足を滑らせ、体勢を崩して自分に倒れ込んでき来た。


「うわぁ〜!」


『ブフッ』


「ぐはっ!」


ーパッパッパッパカパ〜ンー


「え?」


レベルが上がった。そして倒れ込んで来た豚は、ピクリとも動かなくなった。


「くっ、重たい……」


豚を押し退けてみると、頭に警棒が突き刺さり力尽きていた。


「ラ、ラッキー……」


警棒を抜こうとしたが、ビクともしなかったので抜くのは諦めた。

レベルが上がったことにより、何か使えるスキルを覚えてないかとステータスを開いてみる。


「あった!……トランシーバー……使えるか!」


レベル4で、覚えたスキルはトランシーバー。仲間もいない自分に誰と会話しろと?きっと女神様は笑っているに違いない。


「早く人を見つけないと……」


そこで、背の高い木を見つけたので登る事にした。自分の位置が何処なのか。周囲に何か見えないか。藁をも掴む思いで登ったのだが、そこから見えた景色は、見渡す限りの森だった。


「そんな……職業ターザンに転職か……」


肩を落としていると、腹の虫が主張し始めた。


「こんな時でも腹は減るんだな……」


薄暗い森を途方に暮れて眺めていると、視界の端で何かが見えた。


「光った!」


自分は光った場所を凝視した。すると再び赤く発光した。


「また!……何かいる!」


今度は光は消えず、そのまま明るくなり始めた。


「あれは……燃えてる」


しかし、木と雨と夜の闇が邪魔をして、はっきりとは見えなかった。


「そうだ!双眼鏡!」


目の前に双眼鏡が現れた。それをキャッチして覗き込む。すると、暗闇でもはっきりと見える、暗視装置機能付きだった。

双眼鏡が役に立った。悪態をついてごめんなさい。


「ありがとう……」


自然と言葉が漏れていた。

燃えている場所に視界を移動させ、倍率を合わせた。燃えているのが何かは分からないが、その近くには馬車があり、数人の人影と、複数の未確認生物が交戦中であった。この森は、青色小人のテリトリーなのだろうか。


「人だ!襲われてる!」


颯爽と現れ救助する。これは自衛官としての使命だ。双眼鏡に表示された距離を確認する。


「要救助者の会合点まで、距離ロクマルマル。合流する!」


自分は木から降りると、炎が見えていた方向に走った。

シナリオは見えた。救助の御礼に村まで案内してもらう。そしてあわよくば、食事をご馳走してもらう。


「ハァハァ。待ってろよ晩飯!」


自分は脇目も振らずに走り続けた。


暫く走ると、前方に炎を視認した。それは雨に打たれて弱まってはいたが、火の手は5カ所に増えていた。


「無事でいてくれ!直ぐに助ける!」


『フゴフゴ』


「フゴフゴ?……嘘だろ……」


後ろから聞こえて来る音に振り向くと、二足歩行のブタの大群が、自分の後を追いかけて来ていた。


『ブホォ〜!』


「ぎゃ〜!」


そいつらは、木を薙ぎ倒しながら恐ろしい勢いで追ってくる。


「何体いるんだよ!ハァハァ」


『フゴッ』


再び振り向くと、先頭を走るブタが棍棒を投げつけてきた。


「ぐっ!」


自分は咄嗟に避けたが、左肩を掠めた。


『ガチャッ』


それに対して、正当防衛が発動した。

そして前方には、要救助者がいるであろう馬車の横っ腹が見え始めた。


「ハァハァ。会合点まで、ヒトマルマル!」


無事でいてくれ!間も無く合流する。自分は力を振り絞り腹の底から叫んだ。


「助けてくれ〜!」


みっともない?冗談じゃない。命には代えられない。なりふり構ってる場合ではない。もう一度SOSを発信しようとしたその時、馬車の前に冒険者風の体格の良い男が現れた。


「大型のゴブリンが向かってくるぞ!オークの群れを引き連れてやがる!リオン!ここは任せた!」


何を言っているんだ?言葉は通じるようだが、意味が分からない。体格の良い男が馬車の後方に向かって走り、入れ替わるようにスマートな騎士が馬車の前に向かって来る。


「このままじゃ馬車にぶつかる!粉々になるよ!」


騎士は立ち止まり、剣を構えた。


「私に任せて!」


騎士の隣に現れたのは、レインコートを着た女性だった。そして、杖のような物をこっちに向けて、何かを呟いている。呟き終わると、今度は大声を出した。


「ファイアボール!」


その声と伴に、突然火球が出現して自分に向かって飛んで来た。


「火炎瓶!」


自分は咄嗟に、そう叫んでしまった。同時に急ブレーキをかけ、左腕を前に突き出した。


「防弾盾!」


現れた防弾盾を斜めに構え、轟々と飛来する火球を左に逸らした。それは後ろから迫り来るブタの1体に当たり、勢い良く燃やし始めた。


「熱っ!魔法……だよな……ハァハァ、どうして自分に向けて放ったんだ……」


「ゴブリンがファイアボールを逸らした!ゴブリンの変異種か!?」


ゴブリン?変異種?何の事だ?もしかして、あいつら自分のことを、青色の未確認生物と勘違いしてないか?未確認生物の名はゴブリンだな。迷彩戦闘服を着てるからか?そりゃあ全身青だけど!


「待ってくれ!攻撃しないでくれ!」


「喋った!」


レインコートの女性が驚きの表情を見せる。やっぱりそうだ。自分を未確認生物と勘違いしている……失敬な。


『ブホォ〜!』


「げぎゃ〜!」


ブタの大群は、直ぐそこまで迫っていた。自分は防弾盾を捨てて飛び跳ね、馬車の方へと駆け出した。

叫び声と言い、飛び跳ね方と言い、まさに青色の小人のそれであった。これでは誤解されても仕方ない。


「こっちに来ないで!」


「誤解だ!じ、自分は人間だから!」


「来ないで!」


レインコートの女性は自分を睨み付け、再び何やら呟き始めた。きっと魔法の詠唱だ。


「嫌だ〜助けてください!」


「どいて!」


「そんなの了解出来るか!」


「貴方が邪魔で魔法が打てないから!」


「了解!」


「ファイアボール!」


自分が直角に走り始めた直後、火の玉が背後を通り過ぎて行った。それは先頭を走るブタに直撃した。


『ブホォッブホォ』


「凄い威力だ。ハァハァ。ブタの油で2割増しだな」


それを横目に、馬車の方へと駆け寄った。馬車の前にはレインコートの女性が立っており、そこまで走ると自分は膝から崩れ落ちた。


「ハァハァ。た、助かった……」


「動くな」


顔を上げると、赤髪の女性が、喉元に剣を突き付けていた。


「げぎゃ!?」


いきなりのことで、未確認生物のような声が出てしまった……



(女神様こちら自衛官。

救助劇どころか、豚の未確認生物を引き連れての救助要請でした。初めて見た魔法の感想とかも一切なしでしたね。余裕が無くて、ごめんなさい。どうぞ)

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