↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/135

当然の事をしたまでです

「動くな」


「げぎゃ!?」


喉元にある剣に驚き、奇妙な声を出してしまった。


「ギリゴブリン」


自分は咄嗟に両手を上げた。そして、今の言葉を頭の中で反芻する。ギリギリでゴブリンだってこと?


「ギリって!ちょ、ちょっと待ってください」


「動くなと言った」


剣が近い!驚いた自分は警棒を手放した。


「何者?」


何者だと言われても、何て答えれば正解なんだ。自衛官で通じるのか?


「じ、自分は人間です」


はたして地球で生活をする上で、このような答え方をする事はあっただろうか。


「証拠」


証拠?そんなのいる?顔見たら分かるだろ!だいたい、免許証も身分証も自衛官診療証も無いぞ。取り敢えず、ゆっくりと帽子を取って顔が見えるようにした。しかしそれは正解だったようで、喉元から剣を外した。


「レイア!そいつはゴブリンの変異種か!?」


声のする方を見ると、体格の良い男が馬車の後ろを必死に押していた。


「ギリ人間」


「ギリって何だよ。こんなイケメン捕まえて!」


つい反論してしまった。しかもタメ口。機嫌を損ねないように。今後、言葉遣いには気を付けよう。


「冗談は顔だけ」


「いや、そこで止めないで!それ悪口ですよ」


「ギリゴブ」


「それはもうガチの悪口です」


「そうか。だったらお前も手伝ってくれ!車輪がぬかるみに嵌って動かないんだ!」


どうして、そうか、になるのか分からず、反論しようとして振り向くと、雨でぬかるむ地面に馬車の右の後輪が半分埋まっていた。


「急いでくれ!あの2人はもう限界だ!」


そう言われてレインコートの女性を見ると、膝をつき肩で息をしていた。オークはと言うと、スマートな騎士が1人で6匹を相手にしている。状況は一刻を争う。


「了解!」


そう言って敬礼をした後、馬車の後ろに駆け寄り、力一杯押してみたが、ウンともスンとも言わなかった。


「荷物全捨て」


レイアが冷めた声でそう言うと、荷台の前方から慌てて反論する声が聞こえた。


「そ、それはダメです」


「このままだと全滅するぞ!命には代えられない」


体格の良い男が、必死の形相で訴えた。しかし荷台の声は続けた。


「私の命より大事な物ですから、どうかお願いします!無事に街まで運べたなら、何でもお好きな物を差し上げます」


それを聞いた体格の良い男は、あからさまに態度を変えた。


「おいギリゴブ押せ!」


「ギリゴブって……自分は人間です」


「ギリゴブも今の聞いただろ!全力を出せ!」


「そう言うあなたは、自分の言葉を聞いてないでしょ?」


「ギリゴブ!口を動かす暇があったらもっと集中しろ!」


「はい……もうギリゴブで良いです……」


何でも好きな物を貰えると言われ、目がGになっている。きっと、お金の単位なのだろう。


「何としても、荷物を全て持ち帰るんだ!」


「ダオラ悪い癖」


「言うな!レイアも押せ」


しかし3人で押しても、馬車は微動だにしなかった。

そこで自分はスキルを使うことにした。


「防弾盾!」


「ど、どこから出したんだ!?」


自分はそれには答えず、現れた防弾盾を車輪の下に敷いた。


「一斉に押しましょう!せ〜の!それっ!」


すると馬車は、防弾盾を滑り止めにして、ゆっくりと動き出し、ぬかるみから脱出することに成功した。


「やったぞ!レイア急いで荷台に乗れ!ギリゴブ!お前もだ!」


「了解!」


レイアが乗った後、自分も続いて乗り込んだ。


「リオン!ミラ!動いたぞ!馬車に乗れ!」


ダオラの声を聞き、オーク6匹を相手にしているリオンは、視線はそのままで声を張り上げた。


「ミラ!魔法は使える!?」


「後1回なら何とか……」


「頼むよ!」


ミラは立ち上がり、苦悶の表情で詠唱を始めた。

それを確認したリオンは、バックステップでオーク達から距離を取った。


「ファイアボール」


火球は一直線にオークへと向かったが、威力は弱く全身を燃やすには至らなかった。

しかし、隙を作るには十分。リオンはミラを担いで馬車に向かって走り出していた。


『ブホォ〜!』


突如、森の奥から別のオークの叫びが聞こえた。


「やばい!増援が来たぞ!急げ!テープル、馬車を出してくれ!」


ダオラが言ったとおり、森の中から木を薙ぎ倒す音と伴に、新たなオークの群れが現れた。

それと同時に、御者のテープルが馬に鞭を入れた。


走り出す馬車を追いかけるリオン。しかし、ミラを担いでいるため、オーク達に追いつかれそうだ。


「急げ!」


リオンは必死に馬車を追いかけるが、あと僅かのところで届かない。


「もっと手を伸ばせ!」


ダオラはリオンに手を伸ばすが、やはり届かない。


「無理だよ!ミラだけでも頼むよ!!」


それを聞いたダオラは、荷台の縁を握りしめると、意を結した表情でそこに足を掛けた。


「お前達は死なせない!」


「だめ」


「レイア、後は頼む」


ダオラはレイアに微笑むと、その言葉を最後に馬車から飛び出した。


「待ってください」


しかし自分は、宙に浮いたダオラのズボンを掴み、力一杯後ろに引いた。颯爽と飛び出したはずのダオラは、荷台の中に転がり尻を出して倒れた。


「な、何するんだギリゴブ!邪魔をするな!リオン達を見殺しにする気か!」


そんなつもりはない。

への字になり尻を出したまま、文句を言うダオラに敬礼をして、後方に視線を戻した。するとオークは目の前まで迫っており、リオンに向かって手を伸ばした。


「防弾盾!」


目の前に現れた防弾盾を、両手で持ち上げると、サッカーのスローインのように投げつけた。それはオーク目掛けて真っ直ぐに飛んで行き、防弾盾の側面が見事にオークの顔にめり込んだ。


『ブホォ』


「ストライク!」


サッカーのスローインに例えて、野球のストライクと叫んで申し訳ない。どっちも好きなんだ。とりまそれは置いといて、オークは後ろに吹き飛ぶと、ドミノ倒しのように次々と倒れて行く。爽快だ。

しかし両サイドにいたオークは無事で、中央に寄りリオン達を掴もうとしている。


「防弾盾」


再び現れた防弾盾を同じように投げると、今度は面の部分が、同時に2匹の顔に直撃した。


「ストライクツー!」


2匹は動きを止め、顔を上げた。すると防弾盾は後ろに飛んで行った。一発で2匹。自分の腕も捨てたもんじゃないな。


『『ブホォ!』』


しかし2匹は、倒れそうになるのを踏ん張り顔を戻した。そして再び手を伸ばそうとしたが、自分は次の防弾盾を既に投げていた。それと同時に、次の遠投に備え防弾盾を2つ出した。


『『ブゴォ!』』


「ストライクスリー!バッターアウト!」


またしても2匹の顔に当たった。今度こそ後ろに吹き飛ぶと、残りのオークを道連れにして、ドミノ倒しを始めてくれた。早めに準備した2つの防弾盾は使わなくて済んだみたいだ。


「ゲームセット」


ーパッパッパッパカパ〜ンー


お!レベルアップだ。何匹か仕留めたみたいだ。 ちなみに、覚えたスキルはLEDライト。これは使えそう。今は要らないが……


自分はリオンに手を伸ばした。


「ハァハァ。ミラを頼む」


「了〜解っ!」


ミラを引き上げると、身軽になったリオンも馬車に乗り込んだ。それを見ていた、ドミノ倒しを逃れたオーク達は走るのを止めた。どうやら諦めたみたいだ。


『ガッチャン』


正当防衛にロックがかかった。危機は去ったようだ。


「ハァハァ。すまない。恩に着るよ」


リオンが、右手で左肩を掴み頭を下げた。左肩を負傷したのかな?


「自分は当然の事をしたまでです」


「それは違うだろ!元はと言えば、ギリゴブがオークを引き連れて来たのが原因だぞ!」


「そ、そうでした」


「いずれ来てた」


レイアが助け舟を出してくれたので、自分はその舟に乗っかった。


「それもそうだ。自分が来なければ、馬車も動かなかったはずです」


「いずれにせよ、僕もミラも無事なのは君のお陰だよ。ありがとう」


「ダオラも」


「ぐっ……助かった……」


するとダオラも、右手で左肩を掴み頭を下げた。どうやら、この世界の作法みたいだ。それに対し、自分は踵を鳴らし、気を付けの姿勢で挙手の敬礼をした。


「こちらこそ助かりました」


「自己紹介がまだだったね。僕の名前はリオン、職業は見てのとおり騎士。で、こっちは魔法使いのミラ。双子の妹だよ」


ミラは隣で気を失っている。レインコートかと思っていたのは、フード付きのローブだった。


「レイア。レンジャー」


レンジャー?陸自か?


「重戦士ダオラだ!」


ダオラは胸の前で腕を曲げ、得意げに力こぶを作った。


「私は商人のテープルです。本当に助かりました」


御者をしているテープルは、荷台の小窓から笑顔を見せた。


「自分はゼンジです。職業は……」


あれ?自衛官って言って良いのか?そもそも、自衛官という職業は、この世界にあるのか?



(女神様こちら自衛官。

生きてるのが奇跡です。もっと必要なスキルを覚えたいです!トランシーバーとかLEDライトは必要無いでしょ。魔法とか、もっと使えるやつにしてください。どうぞ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。