第2の殺人
アパートや古民家が密集した地帯の中に、一見すると校門か役所の出入り口に見えるような、大きな門がある。
そこを越えると、100坪を越える敷地の中に、大きな家が建てられていた。おそらく、この辺りの有力な地主か何かの邸宅なのだろう。
敷地内には、独立した「離れ」があり、そこに少女がいた。
少女もまた昼間からベッドに伏している。
チューブなどが繋がれているわけではないが、蒼ざめた顔や、酷く痩せた手足から、如何にも病弱と言った感じである。ペンキで塗ったかのような真っ白な肌は、少女が、ほとんど太陽の光を浴びたことがないことを物語っているように見えた。
「あなたが枯れてなくなる頃には、私の命も終わるわ」
少女が独り言を云う。
少女の目線は、開いた窓の外に向かっており、そこには一輪の白い花があった。
それは花壇に植えられたものではなく、土の庭にポツンと咲いていた。いわば雑草のように、どこからか風で種が飛ばされてきて、そこに根を下ろしたものだろう。
少女は、この花の命と、自分の命を重ねているのだ。余命幾ばくもない少女にとって、この花は、常に近くで寄り添ってくれる友のような存在なのだろう。
「私、独りで死ぬのが怖いの。あなたがいてくれて本当に良かった」
少女が笑顔だか泣き顔なのだか分からない痛々しい表情を見せる。
そのとき、庭に「黒い円盤」が現れた。
お掃除ロボットである。
「なんで? なんで外をお掃除ロボットが走ってるの?」
少女が慌てるのも無理はない。お掃除ロボットは室内清掃用であって、屋外を走行することは考えられないのだ。
しかし、お掃除ロボットは、デコボコした地形を苦にすることなく、かなりのスピードで庭を走行していた。
進路の先にあったのは、少女の分身である白い花である。
「やめて! お願い! やめて!!」
少女の叫びは、お掃除ロボットには届くことはなかった。
お掃除ロボットは、ブチっと白い花を踏みつぶしたのである。
一度通過しただけではない。何度も何度も白い花のところを往復し、跡形もなくすり潰した。
そのあまりにも非情な光景を目撃した少女は、一頻り泣いた後、クローゼットにあったマフラーを使い、首を吊った。
少女が自殺する様子を、お掃除ロボットは、窓の外から静止して眺めていた。




