到着そして、試験
「やっと着いたわね〜」
そんなことを呟いたニアは馬車の車窓から見えるリュトラシア王国を眺めながら疲れた表情をしていた。
「着いたらまずは...ってあれはなんだ?」
「ん?どれのことよ」
王国への入国手続きやら身元の確認、荷物検査などが行われている。門の前に何やら人集りが出来ており騒がしくなっていた。
門の付近まで行き馬車の御者に降りることを伝え、礼を言ってからリュトラシア王国までのお金を払いニアと二人で人集りに近づいて行った。
どうやらその喧騒の正体は一体の死んだドラゴンのようだった。
「なんで、こんな所にドラゴンがいるのかしら?」
ニアもドラゴンの存在に気づき不思議そうに首を傾げていた。
ドラゴンとは、普段は人が近寄れない過酷な環境の山や渓谷に生息していて、此方から敵意を出して襲わない限りは非常に温厚な生物とされている。
そんなドラゴンが、何故こんな人里に降りてきたのかを近くに居た男性に尋ねることにした。
「すまない、このドラゴンは何故こんな所に居るんだ?」
「ん?あぁ、どうやらこのドラゴンが食料を求めて近くまで来たらしいんだ。そしてそのドラゴンを今年度の学園入学者がたった一人で倒したそうだぜ」
「たった一人でドラゴンを...?」
「そうみたいだ。まったく、たまげたもんだぜ...ところでお前も、今年度の学園入学希望者なのか?」
「ああ、そうだが?」
「そうか、何か爪痕を残せる様に頑張れよ。今年はどうやら実力者が多いみたいだからな。」
「ありがとう、俺の出せる実力で程々にやってみるよ」
それを聞いた男性は笑みを浮かべた後に森の方へと去って行った。軽装な見た目だったが大丈夫だろうか?
そんなことを思いながら、俺達は入国手続きを済ませに門兵の元へと向かった。
手続きは割と簡単に済んだ。名前と年齢、出身地から入国の目的などを書く為の欄が用意されている紙に記していくだけだった。その後荷物検査が行われた後に入国許可証を渡され入国を許された。
「結構直ぐに済んでよかったわね」
「ほんとだな、それじゃあまずは学園を目指すかね」
「ええ」
そうして、歩きながら道中にある屋台で腹を満たしたり出店を覗いたりしながら学園へと向かった。
学園に着くとまず学園の入学希望者だと思われる人達で溢れていた。
それから、学園寮に広めの運動場そして座学などを学ぶ場所であろう校舎が見受けられた。
入試の受付場所である学園の校舎に向かいそこで試験の受付の職員をまずは目指すことにした。
そして、受付では男女別々に入学希望者を捌いてるようだった。
「受付は別々みたいね、それじゃあ受付が終わったら広場で合流しましょ」
「ああ、そうしよう」
その後俺達は別々の受付場所へと向かった。男側の受付窓口に近づき職員に話しかけた。
「こちらで入試の希望したいのだが」
「かしこまりました。それではこちらの石版に触れて下さい。石版に触れると、年齢と名前それから出身地と受験番号が記入された紙が横にある石筒から出てくるので、それをご確認させていただきますので予めご了承ください」
「ああ」
そのまま促された通り石版に触れると、その石版は輝きその光が収まった時には隣の石筒から羊皮紙が出てきた。軽く確認した後に職員に手渡した。
それに目を通した職員はそのまま何かを書き記し、後ろにある羊皮紙が出てきた石筒とは違う物に紙を挿入したようだった。
それから少しすると、銅色のプレートが出てきて職員はそれを手渡してきた。
「それでは、確認が取れましたので入試資格を発行致しました。それはこの学園の試験を受けるために必要な物ですので絶対に紛失などにはくれぐれもしないようにして下さいね。再発行は効きませんので」
「そうなのか、気をつけるよ」
その後試験会場や、試験を受ける際の注意事項を聞きニアと合流する為に学園の広場へと向かった。
広場に着くとそこには既にニアがベンチに座って待っていた。
ニアはベンチに座っているだけで周りから視線を集めているようだった。
改めて思うとニアは相当な美少女だから当然のことかもしれない。現に男達は少し頬を染めて今にも話しかけに行きそうな勢いがある。
そんな注目されているニアを待たせる訳にはいかず足早に向かい声を掛けることにした。
「悪い、待たせたか?」
「待ってないわ、私も今終わっとところだもの」
「そうだったのか、それで試験会場は何処だったんだ?」
「Fの会場だったわ」
「そこなら俺と同じところだったみたいだな」
「そうなの?なら一緒に行きましょ」
ニアも終わったばかりで試験会場も同じところだったらしく、そのままニアと二人で試験会場へと移動することにした。
試験会場ではそれぞれアルファベットで分けられていてAからFの六つが列を成していた。試験へは先頭から十人ずつが順番で行われているようだ。
「なにつったているのよ。早く並ぶわよ」
「ああ」
ニアに言われて俺達はFの列に並び順番を待つことにした。
それから列はどんどん減っていき遂に俺達の順番へとなった。
「次のどうぞ〜」
係の人に呼ばれてニアと俺を含めた五人で別室へと赴いた。
別室では受験者の記録を計測する人と試験の監督の人と受験者の人数分の木人が中央に用意されていた。
「よし、集まったようだな。それじゃあ受付で作った銅のプレートをそこに居る係員に渡してそれぞれ一名ずつ試験を開始する。木人には魔法耐性と斬撃耐性など様々な耐性が付与されているから安心して全力を出してくれ。そして一人一発ずつ魔法か得意の獲物で木人を攻撃してみてくれ」
試験の監督に言われた通り一人ずつ記録員に銅のプレートを渡して試験が始まった。
俺の出番は最後で、ニアが俺の前のようだった。
そうして、まずは一人目の子が挑戦するみたいだった。
「ふん、こんな木人で僕を測るなんて馬鹿ばかしい。跡形も残らぬほど消し炭にしてやる」
なかなか自分の実力に自信があるだけあって、ここに居る五人の中では俺とニアを抜いたら群を抜いて一番の魔力量を秘めているようだ。
そして魔法の詠唱を終えた所で男が突然。
「刮目せよ!インフェルノ!」
そんなセリフを言った瞬間。燃え盛る紅蓮の炎が広範囲に表れ木人包み込み一気に爆発しその後には木人は跡形も残らなかった。
「な、なんて威力なんだ!」
「まさか、第六区分魔法がこんな近くで見れるなんて...」
「こりゃ、とんだ秀才が来たかもしれんな...」
「どうやらそのようですね...」
周りの試験監督や受験者が口々にそんなことを言っていた。
確かに第六区分魔法まで使えれば、将来食いっぱぐれはないだろう。
しかし、ニアの魔法の威力を知っているとどうにも第六区分魔法がお粗末に見えてしまうな...。
こりゃニアの魔法は第三区分魔法までに留めさせておいて正解だったかもな...。
「ニア、絶対に第四区分魔法は使うなよ?」
「言われなくても、分かってるわよ」
「なら、よかった」
ニアも先程の魔法で自分の異常性に気づいたのかもしれない。
そりゃニアは一般人の魔力量を今や何百倍も上回っているから魔法の威力が他人を凌駕するのも当然とも言えるのだが。
「それじゃあ次!」
と、その後も二人目三人目と続いていき、ついにニアの順番となった。
「やっと、私の番が来たようね」
そう言ってニアは木人の前に立ち無詠唱で第三区分の火魔法フレイムを木人目掛けて魔法を放った。
その放ったフレイムはニアの手元から灼熱の焔となって木人へと一直線に着弾し木人を飲み込み破裂した。
その後に残ったのは焼け爛れた地面のみだった。
これには周りの人達も時間が止まったかのように静かになっていた。
「あら?少しやりすぎてしまったかしら?」
「「「「「...」」」」」
その沈黙を破ったのはこの沈黙を作り上げた元凶のニアだった。
そりゃ周りの人達が驚愕するのも納得する。
まず魔法とは詠唱するプロセスを終えて放つことが出来るのだが、今行ったニアの魔法には詠唱のプロセスが含まれていなかった。
因みに俺は、無詠唱で魔法を発動させることは出来ない。だから皆の気持ちは痛いほど分かる。
そして何より、一人目が放った第六区分魔法とニアの放った第三区分魔法の威力が同等もしくはそれ以上に見えてしまったからだと思う。
そもそも第三区分魔法では本来魔法耐性の施された木人を消滅させることはできないはずなのだ。精々木人の表面を焦がす程度しか出来ないほどの魔法耐性がある。
そんな木人を第三区分魔法で焼き尽くしたニアはとても異常なのだ。
「そ、それじゃあ次...」
試験監督はなんとか無理矢理平静に戻ったようだ。
現実逃避しているようにも見えるが。
ニアの魔法には驚かされたものの漸く俺の順番まで回ってきた。しかし、俺にはニアの様に派手な威力のある魔法は使えないので、大人しく腰に下げた二本の刀の内黒い鞘に収まった一振に手をかけたまま静かに木人の元まで歩いていき一閃。
一閃の後には轟音と共に切られた木人とその後ろにある、木人とは比べ物にならないくらい強力な魔法が施されていたであろう建物の壁までも切り裂いており、切り裂いた衝撃で壁一面にヒビが走り音を立てて崩れてしまい壁の向こう側が覗いた状態になってしまった。
「俺もニアのことは強く言えないな...」
「ほんとにその通りね」
「「「「「...」」」」」
ニアには冷たい目で見られ、他の人は誰もが自分たちの常識が覆されたような、遠い目をしていた。
今回も、読んで下さりありがとうございます!
次話も早めに投稿出来ればなと思ってますのでどうぞこれからもよろしくお願いします!m(_ _)m
それでは、また4話目でお逢い出来ることを願っております。おいなり。




