表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/163

翁はアルバイトを決めた

 見よう見真似でやらかしたことが。

 いつかは。


 誰にも真似できない技術になる。


 ◆


「あの、……千さん。本当にいいんですか? おれェ」


「いいさ! 出世したら返して頂戴w」


 コートを羽織らせた啄木鳥は。

 翁を連れ回して背広一式にコートと買い与えた。

 思いがけない行為に翁は戸惑った。


(こんな初見のおれなんかに、っこ、こんなっ。怖いっ! 怖いぃいい~~)


 ガクブルで、口をへの字に啄木鳥の後ろに翁はついて行く。

 啄木鳥も後ろにいる翁に振り向くと、

「ほら! ほらほらぁ! 着いたぜ~~食事何処みんみんにw」

 肩に手を置くと店を指差した。


「‼ ぁ、ありがとうございましたぁ~~」


 翁が目を輝かせて啄木鳥に礼を言う。

 それに啄木鳥も「いいさ。出世したら頼むぜw」と親指を立てた。

 大きく頷く翁だったが。

(おれが翁だって知っても、そう言ってくれるのかな?)

 訊きたくなった口を、ぎゅっと閉じた。


「あのさ? 俺、君の名前訊いてなくないか?」


 ギク! と翁の身体が、顔が強張った。


「ぉ、おれの名前は――……」


 言い淀む翁に、

「!? あー~~ッ! ダンマルじゃないか‼」

 買い出しから戻って来た叶かなめ子が、袋から手を離した。

 落ちた袋に翁は視線がいってしまう。


「本当に来たんだ! 旦那が言った通りになった♡」


 目を輝かせる叶を啄木鳥が見て、

「ダンマル君て言うの? 君は」

 改めて翁に訊く啄木鳥に。


「尾田ダンマルです」


 翁は嘘を吐いた。


「ささ! ぅんじゃま、一緒に働こうな♡」


 ◆


 日中の昼間は食事何処であるが。

 夜間では一変して、

「ぅお!」

 酒場ギルドに変わるのだ。

 食事は昼間のものが引き継がれるのは言うまでもない。


 啄木鳥は中に入らずに、そのまま手を振って帰っていた。

 恐らくは店内がこういう状況だと、知っていたからだろう。


「店内。結構暗いんですね」

「ああ。一応、雰囲気はあるだろう? 客の要望でもあるからなw」

「そういうもんなんですか」

「飲み屋とか行ったことないの? お前」

 叶の言葉に翁は顔を横に振った。

「飲めるのかい? お酒は」

 それに翁は手を軽く横に振った。


「缶の半分も飲めないんですよ。おれェ」


 苦笑する翁に、

「っはっはっは! っほぉらなぁ! かなめちゃん♪」

 厨房から顔を出し、翁の顔を確認した百足蝉が駆け足で出向いた。

「私の勘は当たるんだよっ! やぁ、ダンマル君。こんばんわ」

 両腕の二の腕を掴むと百足は被り振った。


「で? アルバイトは短期? 長期? それとも――正社員?」


 真っ直ぐに見据える百足の顔を。

 翁も真っ直ぐに見据え返した。


「っふ、不定期でもいいですか?」


 翁の言葉にきょとんとなったが。

 噴き出すと、肩を揺らして笑った。


「いいさ。歓迎するぜ、ダンマル君」


 ◆


「なんだ。こんな夜に行くとか、てっきり飲みに行くかと思ったんだけどなぁ」


 煎餅布団に内伏せ、腕を伸ばして携帯を視るミドリ。

 横には息子の翡翠も枕に肘を点いて。

「飲めないって書いてあるじゃないか、あいつ」

 一緒に視ていて、つっけんどんに声を吐き捨てた。

 彼らは。

 何も纏わない真っ裸に毛布を乗せている。

 まだ4月でストーブを止めて寒く身体を寄せ合っていた。


「あのねぇ? なんでもかんでも視るなんざ行儀が悪いぜぇ? 翡翠君ミドリくぅんw」


 軽く注意されてしまった息子の翡翠は上半身を持ち上げて。

 毛布を羽織って立ち上がると、

「父さんに言われたくない、っね!」

 リビングに行ってしまった。


 ピシャリ! と閉じられる襖に。


「確かにw オイラが言えた義理じゃねぇわなぁ~~……っはぁー~~」


 ミドリは顔を枕に乗せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ