マイホーム・・・いい響きだ!
「あ~、お酒が旨いんじゃあ~」
そんな感想を言いながらお酒を飲む。この世界ではビールのようなお酒は出回っておらずムルガ酒という酒が銅貨二枚ほどで飲める。この世界の食事がだいたい銅貨十枚ほどだからそれなりの金額である。アルコール度数が低いのでかなり飲みやすい。
ちなみにあのチンピラから奪った袋には金貨二枚と銀貨十一枚、銅貨二十八枚持っているので今日の飲み代にはなるだろう。
「こっちの肉も旨いな」
今、食べているのは憧れの骨付き肉である。漫画で見ていた通りまでとはいかないまでのそれなりのサイズでかなり旨い。料理のレベルが高いのは喜ばしいことである。
そんなことを考えていたら夜が明けてしまった。
「・・・朝か・・・。」
一徹してしまった・・・。まさか、異世界の一日目から徹夜するとは考えてもいなかった・・・。ちくせう。
「とりあえず、仕事行こう。」
そんなことを言いながらギルドに向かう。
「ああ、失敗したなあ・・・。」
宿屋かなんかに入ればよかったんだろうけど泊まるたびにお金を取られるのは嫌だ。こんな事を思ってる自分って随分ケチだと思う。
「家欲しいなあ」
なんか、おっさんっぽくなってきてる気がする。
そんなことを考えながらギルドの扉を開ける。意外にもみんな早起きのようだ。
「昨日の奴はいないな。」
まあ、そりゃそうだ。威力を抑えたといっても肋骨一本ぐらい持ってってるぐらいである。そんなの食らった次の日に仕事する人間なんていないだろ。
「おはよう御座います。マルヤマさん!昨日の喧嘩大丈夫だったんですか?」
リアナさんに心配されたようだ。猫耳の女の人に心配されるのは最っ高だ!
「いや、大丈夫ですよ。」
「大丈夫じゃないですよ!ギルドに登録したあとすぐに喧嘩しちゃうなんて!」
「はい、すいません・・・。」
「すいませんじゃないですよ!あの後、喧嘩で負傷した男の人を運ぶの大変だったんですよ!」
なんと!ギルドはこちらの喧嘩に関与しないわけではなかったようだ!これは申し訳ない!
「す、すいません。まさか、喧嘩に関与するとは思ってなくて・・・。」
「・・・今度から気を付けてくださいね!」
「・・・はい、すいません。」
「で、今日はどんな要件ですか?」
「あの、薬草採取の依頼なんかきてないですか?」
「えっと、ギルドが薬草を買い取るので持ってきていただいても大丈夫ですけど?」
「はい、分かりました。えっと、いくらぐらいで買い取ってもらえるんですか?」
「そうですね。一本銅貨十枚ですね。」
「有難うございました!それじゃ取ってきますね!」
「えっ、薬草とってくるんですか?」
「はい?取り行きますけどどうしたんですか?」
「えっと、ここら辺の薬草はもうあらかた取りつくされているんですよ?」
「ええ、そりゃそうでしょうね?だから何ですか?」
「だから何ですかって・・・。ワイバーンの巣ぐらいにしか残ってないんですよ!」
「なるほど、ワイバーンの巣にあるんですね!それじゃ行ってきます。」
そう言って扉を出ていく。
「・・・ワイバーンの巣知ってるみたいだったけどどんな場所か知らないのかしら?まあ、諦めて帰ってくるでしょう。」
リアナの声が呆れた様な話し方になっている。
さて、こんなやり取りをして出てきた俺がマップを確認していて気が付いたことがある。それは検索機能だ。どこに何があるかが分かるという便利機能だ。そんなわけで簡単にワイバーンの巣の中で一番生えているところを探し出せた。今はそこに着いたところである。
「そういえば・・・。」
今更になって自分の失態に気づいた。袋持っていないということである。
「一回もどるかなあ?」
なんて、考えていたら自分の固有スキルについて思い出した。
「そーいや、物体創造なんてのがあったな・・・。創れるか試してみるか」
自分の頭の中でそれなりの大きさの袋を思い浮かべると手に何か乗っている。手を見ると袋が出来ていた。
「おお!改めてチートだという事が分かるな!」
そんな感想を言いつつ薬草を入れていく作業を始める。
日が暮れてきたころになって作業を止めた。
「そろそろ帰るか・・・。」
そんな俺の横には十個ほどの大きな袋がパンパンになっている。初めてでこの量はなかなかじゃないだろうか?
「よし、帰ろ!」
ギルドの受付嬢リアナは今とても驚愕していた。何故か?それは今朝ワイバーンの巣に行くと言っていた自分よりも小さくリアナから見れば可愛い弟ほどの少年が大量の薬草を持って帰ってきたからである。
「リアナさんいくらぐらいですかね?」
唖然としているリアナにその少年は問いかける。
「えっと・・・もしかして・・・ワイバーンの巣に行ってきたの?」
恐る恐る聞いてみると案の定
「いやー、リアナさんの言った通りいっぱい生えてましたよ!これもリアナさんのおかげですね!」
「・・・。」
「どうしたんですか?」
何故だ。なぜこの少年はあんな恐ろしい所へ行って無事なのだろうか?
「おーい?リアナさん?」
おかしい。おかしいのだ!冒険者ギルドの中でもCもしくはB程度の人間しか行かない様な所に行って無事でしかも怖い目にあったわけでもなく誰かに助けられたわけでも無いのに傷一つないなど異常なのだ!
「おーい!リアナさん!リアナさーん!」
「ハッ、すいません。少しボーっとしてました。大丈夫です。」
「そうですか?まあ、大丈夫ならいいですけど。で、いくらぐらいですかね?」
「すいません。今計算するのでそこらの席に座って待ってて下さい。」
「あっ、はい」
何故だろう?
マルヤマは戸惑っていた。
「リアナさん!」
話しかけても返事がない。もしやなにかあったのだろうか?薬草の入った袋を出してからずっと黙っている。俺に何か問題が?それとも薬草に問題があったのだろうか?
「おーい!リアナさん!リアナさーん!」
「ハッ、すいません。少しボーッとしてました。大丈夫です。」
やっと返事してくれた。大丈夫だろうか?まあ、本人が大丈夫と言っているのだから大丈夫だと信じよう。
「そうですか?まあ、大丈夫ならいいですけど。で、いくらぐらいですかね?」
「すいません。今計算するのでそこらの席に座って待ってて下さい。」
「あっ、はい」
そういって俺は近くの椅子に腰かける。
「仕事のストレスだったら可愛そうだな。俺が相談相手になれればいんだけどそんな事にどうやって返事すればいいのか、解らないからなあ。」
そうやって、五分程待っていると
「マルヤマさん、計算できましたよ!」
リアナさんが呼んでるので受付まで行く。そこには持ってくるときに使った大きな袋ともう一つ皮の袋がある。
「えっとですね。マルヤマさんが持ってきた量が多くて計算に時間がかかってしまいましたが金貨二百枚と銀貨二十八枚そしてどうか四十枚ですね・・・。」
結構な量の硬貨である。これなら一年ぐらい働かなくても生活できそうだ。
そこで俺は気づいた!この金で家買えるんじゃねえか?そう思うといてもたってもいられずリアナさんから袋を受け取りギルドから走り出す。走るといっても町の外で出しているような速度は出さない。ちゃんとリアナさんには有難うございました。と言うのも忘れない。マップを視界の四分の一ぐらいに起動させて検索を使い不動産屋を探す。表の通りに面した所に一軒見つけたのでそこにいくことにした。ほどなくして店の前に着く。扉を開けると店長が挨拶してくれた。
「いらっしゃいませ。お客様は今日はどのようなご用件で?」
「ここで売ってる家の価格で最低価格っていくらですかね?」
「そうですね。新築だと金貨三百枚ですね。中古だと一番安いので金貨二百枚ほどですが?」
「その中古で一番安い家に案内してくれませんか?」
「はい、分かりました。では」
そういうと店長は立ち上がり、扉を開けてくれる。親切な店長である。
「では、行きましよう。」
店長の後をついてきて数分で着いた。こじんまりとしていて広すぎず狭すぎない二階建ての一軒家だ。なかなかいいが何故この家が最低金額なのだろうか?
「なかなか、いい家じゃないですか!なんで最低金額なんですか?」
「いえ、ここに前住んでいた人の物がそのまま残っているんですよ。それに・・・。」
「それに?」
「でるらしんですよ。前の家の持ち主の霊が」
なんだ、そんな事か。最低金額だから変な虫が湧いてるとかバカでかいネズミが中に住んでるとかかと思ったがそういうわけでは無いようだ。
「それなら、買います。」
「えっ?買うんですか?」
店長が不意打ちを食らったように驚いている。別に驚かなくてもいいじゃないか!それにしても、いい家である。
「そうですか・・買うんですか・・・。それなら少し安くしますね。この家いつまでも売れ残ってたんでこっちもどうしようか考えてたんで。」
店長優しすぎです。女だったら絶対惚れてるわ~。
店に帰ってきた俺はすぐにサインして金貨百七十枚を渡して家の権利書をゲットした。
「ありがとう御座いました。」
店長に挨拶を返して店を出る。
そして、家に向かう。我が家だ。新しいマイホーム。心が躍るようだ!
家の権利書と共に貰った鍵で扉を開ける。扉を開けると横にボタンのようなものがあるので押してみると部屋の明かりがついた。電気などはないので多分魔法だろう。魔法ってスゲー!
部屋はワンルームで左側にキッチン、その向かい側に本がずらりと並んだ本棚がありその横には小さな机がありその上に窓がある。まっすぐ進むと二階への階段があるので上へ上がってみる。上はベットが置いてある。その横に扉が二つあり右がトイレで左がシャワー室だと開けてみて分かった。二日ぶりのシャワーを浴びた。やはり魔法の力だろう壁の部分にあるボタンを押すと上から暖かいお湯が来たので驚いた。やっぱ、魔法ってスゲー。
さて、今日はテンションが上がりすぎて完全に夕飯を食べずにベッドに入ってしまったがもう寝てしまおう。
「・・・。」
「お・・・・・。」
「おい・お・・。」
「おい、起きろ!」
何事だ!そう思い眠い頭を持ち上げて起こした相手をみる。
「起きろ!ここは私の家だぞ!」
相手はそんな事を言っている。よく見ると体が半透明で足がない。顔は美人で耳が尖っている。エルフかな?
「おい、何ボーっとしてるんだ!ここは私の家だぞ!」
「あんたこそ何言ってんだ!今日この家を買ったんだよ!」
「何言ってるんだ!ここは私の家だ!」
「ふざけんな!金貨百七十枚払って買ったんだよ!」
「なるほど、出て行く気はない・・・と?」
いきなり、幽霊の空気が変わる。だが、ここで逃げる様な俺ではない!
「ないね!そもそも俺の家だ!」
「そうか、なら実力行使だ!」
そういうと幽霊は手を広げながら何かを呟く、すると雷で出来た矢のようなものが出来上がる。そして、その矛先を定めると俺に飛んでくる。かなり早い。
「幽霊って魔法出来んのかよ!」
だが、俺の動体視力をもってすれば避けるのは簡単である。首を少し横にそらすといままで頭があったところを矢が通っていく。
「なっ、貴様やるではないか!」
幽霊の奴は俺が避けたことに驚いているようだ。だが、まだ出せそうだ。
「だが、それもいつまで続くかな?」
そういうと今度はもっと多くの矢が出来上がる。また、俺に定める前に近づいて殴ってみたが、やはり当たっていない。こんな事を試してる間にも作られるたびにこちらに向けて放たれる矢を全て最小限の動作で避け続ける。
「化け物め!この数の雷を避けるとは・・・。」
相手はかなり驚いているようだが作り続けている。このままではジリ貧だ。なんて、考えていると雷の矢がやんだ。
「どうした?もう終わりか?」
最後の矢がさっきまで右足の甲があった所に突き刺さったのを見ながら聞く。
「うるさい!少し疲れただけだ!ここからが本当の地獄だ!」
と、言うと彼女は手を合わせて何かを呟く。さっきよりやばそうである。
「散れええええ!」
さっきより大きい雷の槍のような物が飛んでくる。
「あー、やばい!」
何故俺が慌てているかだって?簡単さ!さっきの矢は良ければそれで済んだろうがこれは違う!まず規模がさっきの矢なんかと比にならないぐらいでかい!そんな物がベッドな当たったら消し炭である。そんなことになったらベッドを買い替えなければならない!そんなのめんどくさい!それにこれに当たったらかなり痛いだろうからベッドの代わりに当たることも出来ない!どうする?なにか、なにか無いのか?そう考えていると頭の中で空間魔法が煌めく!そうだ!この雷の槍をどっかに飛ばしてしまえばいいんだ!
そう考えた時には体が動いていた。右手を雷の槍の前にかざすと吸い込まれるように消えて行った。ベッドを助けることに成功した!空間魔法に感謝である!
幽霊はというと
「嘘だろ・・・私の使える最大の魔法だぞ!それを片手をかざしただけで・・・。」
唖然と俺を見ている。さすがに今のが最大出力のようだ。よかった!第二形態なんかあったらベッドが大変なことになっていた!
「これで気は済んだか?」
「ひっ、わ、悪かっただから消さないでくれ!」
そんな化け物みたみたいな言われ方は酷いと思う。
「消したりなんかしねえよ。そんなことしたって意味ないしな。」
「そっ、そうですか。有難うございます。」
うわっ、すっげえビビってる。なんか土下座しそうな勢いだな・・・。
「そんなビビんなくていいからさ。で、反省してるの?」
「はっ、はいっ、とても反省しております!」
「そう、それならいい」
「えっ、許してくれるんですか?」
「何?許されたくないの?」
「いえ、そういう事ではなく・・・。あんな事されてそんなんで許されてしまうのですか?」
自分で酷い事した自覚あるならやめろよ・・・。
「いや、別にいいからそういうの」
「あっ、有難うございます。」
「名前は?」
「なっ、名前ですか?」
「そう、名前」
「カラって名前です。」
「んじゃ、よろしくカラさん」
「えっ?いても居んですか?」
「留守の時に泥棒とかが入ってきてもこの感じなら安心できるからおいときたいんだけど駄目?」
「いえいえ!この家においていただき有難うございます!」
「じゃあ、よろしくカラさん!」
「はい、よろしくお願いします。えっと・・・。」
「マルヤマだ」
「よろしくお願いします。マルヤマさん!」
そんなわけでルームメイトが出来ました!
家を買ったからといってここだけで活動するわけではないのでご安心ください!




