本領
「へえ、あんた凄いな」
代わりにステラステラの後ろに立つバロッサが腕を組んでニヤリと笑う。
「今、あんたは魔族の攻撃を受けていたんだぜ?」
「魔族だと?」
夢と魔族が結びつかなかったユラスは聞き返す。
「何故夢の中に魔族が出てくるんだ?」
「酒を勧められただろ?」
バロッサは盃を差し出す仕草を取りながら問う。
「それを飲むとな。夢の中だけでなく、起きている間でも心の中に魔族の侵入を許してしまうんだ。四六時中幻覚や幻聴に悩まされて精神が参り、廃人もしくは傀儡と化すのさ」
何とも恐ろしい手口である。
さすがの豪胆なユラスでさえもその話には冷や汗を禁じ得ない。
「そんなことを知っていたのなら」
ユラスは咎める口調で。
「何故事前に教えてくれなかった?」
そうすればここまで心身を冷やさずに済んだものを。
「言っても無駄だからな。何せ夢の中だぜ? 恋人や恩師が現れて酒を勧められたら、会ったばかりの俺の忠告など頭に浮かばないだろうが」
どうせ無視されるのだから伝える必要はない。
バロッサはそう言外に言っていた。
ステラステラのように一理あると黙るのが一般的
しかし、残念ながらユラスは普通じゃなかった。
「この……大馬鹿野郎が!!」
怒髪天を衝く勢いでユラスは怒鳴る。
「何故お前は勝手に失望してるんだ! この俺がお前を信頼していない? 信頼してない奴を俺は仲間に加えるか!?」
ユラスが怒る理由は大事な情報を教えてくれなかった事だからではない。
もっと根本的な、ユラスが己の幕下に加えようとする人物に対してその程度の存在しか見ていないというバロッサの憶測を怒っていた。
「気分が悪い! しばらく散策してくる」
吐き捨てるように宣言したユラスはマントを羽織ってテントの外に出る。
「誰もついてくるな!」
ステラステラがその後に続こうとしたが、ユラスは一声で制する。
ユラスの怒気に充てられた彼女は硬直するが、ユラスは一瞥すらせず去っていく。
怒り心頭のユラスは、今誰かが傍にいれば八つ当たりしてしまうので、あえて独りになった。
「「……」」
ユラスが去った後はまるで嵐が通り過ぎた時のよう。
何も変わらない風や風景がこの上なく愛おしく見えてしまう。
「ユラス=アルバーナか……」
しばらく時が経った後、バロッサは吟味するかのように口で転がす。
「面白いな」
バロッサからすると、あのユラスの反応は新鮮だった。
まさかあんな理由で怒られるとは、呆気に取られると同時に不思議な感情がバロッサの胸の内から湧いてくる。
「なあ、死霊使いよ。今度あいつと話す機会を作ってくれねえかなあ?」
バロッサが抱いた感情。
それは興味。
ユラスという人物は何者なのか。
そして何処へ行こうとしているのか。
彼に関する疑問が次から次へと湧きあがり、それは留まるところを知らない。
「……」
「ん? どうした死霊使いよ?」
バロッサがそう聞き返すのも無理はない。
ステラステラは白い顔をさらに蒼白へとし、脂汗をかいていたからだった。
「――何の用だ」
不機嫌極まりない声でユラスは来訪者に問う。
あの出来事から数刻経った今でも彼の機嫌は悪い。
そう、腹心の部下であるステラステラが訪れようともユラスは不愉快な感情を隠そうともしなかった。
「懺悔と……献策を」
ステラステラは努めて平静に声を出す。
「此度の魔族の魔法。あれが軍の中にかかっている者がいます」
夢の中に現れて酒を勧める魔法。
ユラスだけでなく、幹部や一兵卒までかけられている可能性があると。
「何故今頃そんな報告を?」
軍隊の内部で操られている者がいる。
もしそれが事実なら真っ先に知らせておくべき内容である。
「……確証がなかったのです」
ステラステラはつばを飲み込む。
魔族の領域に侵入してから何度も気になる気配はあった。
しかし、ステラステラはそれを気のせいだと考えていた。
何故なら、ここの瘴気の影響で己は神経過敏になっているのだと言い聞かせていたから。
「本当に申し訳ありません」
ステラステラは平伏する。
「最初ならまだしも、現在ではどれほどの規模なのか皆目見当がつきません。もしかしたら全員が魔族の術にかかっている可能性すらあります」
もし最初の異変で気づいておけば対処できただろう。
が、全てが手遅れとなった今、魔族の術に対処する方法どころか状況でさえ不明の状態だった。
「撤退を……進言します」
ステラステラは震えながら言葉を続ける。
「この状態で進んだ場合、軍内での同士討ちが始まります。その時に魔族の眷属から襲撃を受けたらひとたまりもありません」
誰が敵で誰が味方なのかもわからない。
極論すれば目に映る全員が敵。
そんな状態になればユラスの命は風前の灯火となるだろう。
「罰を受けます」
彼女は懇願するような口調で。
「死罪でも構いません。ゆえにここは英断して下さい。魔族討伐は何時でも出来ますが、王が死なれると全てが終わります」
ステラステラは必死だった。
己の命を投げ出してでも叶えて欲しいという嘆願。
それを聞いているユラスの心境は如何なるものだろう。
「……」
幸か不幸か、目を伏せているステラステラにはユラスの表情を確認することが出来なかった。
「皆の者、よく集まってくれた」
ユラスはそう口火を切る。
高台に立ったユラスは己を見上げる聴衆――兵士達の顔がよく見える。
今、ユラスは魔族討伐に参加した兵を全員集め、演説を行おうとしていた。
「さて、我らの目的はカナリア地帯と併合、そのために魔族は必ず滅ぼしておかねばならん」
魔族は裏で争いを引き起こすことを性分とする。
ユラスとしてはその性分が改善されない限り、滅ぼさなければならない相手だと考えている。
「ここでお前らに聞くが、夢の中で酒を勧められなかったか?」
勇敢なる兵士諸君とは言わず、あえてお前らと呼ぶユラス。
その意図は兵達を第三者ではなく、第二者と置くことによって親近感を持たせるゆえであった。
「「……」」
彼の問いかけにぎくりと身を強張らせる者が数人。
「カルタ―、ナイス、ギロン……お前等もか」
その中に彼が信頼する者も含まれて悲しくなるユラスだが、そんな内心はおくびにも出さない。
「聞け! お前等よ!」
むしろ不安や悲しみを払しょくさせるかのようにユラスは声を張り上げる。
彼のみが持つ、聞く者の感情を揺さぶらせる声音。
今のユラスの声は兵士達の勇気を引き出させる特性に特化していた。
「その酒を飲んだ者は心を奪われ、魔族の命令に従うという恐ろしき代物だ。その通りなら俺はその酒を飲んだ者を炙り出し、更迭しなければならん」
ユラスの言に騒めく兵達。
昨日までの戦友が今日から裏切り者となる。
不安だけでなく、仲間同士で監視し合うという冷たい関係に兵達の心がざわめく。
「安心しろ! 俺はその者を炙り出したりはしない! そんなことをする必要がないからだ!」
兵達の頭に浮かんだのは疑問マーク。
何故そう言い切るのか、兵達は静かにしてユラスの言葉を待つ。
兵達の関心が己に集まったと知ったユラスは声を張り上げ。
「何故ならお前らは一騎当千の猛者であり、勇敢なる英雄達だ! 卑劣な術を使う魔族になど誑かされる弱卒など俺は率いた覚えはないからだ!」
ユラスの確信溢れる言葉に兵達は心を震わせて感動する。
一体誰がここまで自分達に絶対の信頼を置いてくれるだろうか。
「いいか! 魔族などに負けるな! この俺が信頼したお前達は誰一人として卑劣な術に負ける輩などいない! 上を向け! そして顔を俺に向けろ! お前らの瞳には何が映っている? 言ってみろ!」
「「「陛下です」」」
「そうだ! その通りだ! お前らが付き従うべき相手はこの俺、ユラス以外に置いて他はない! 魔族になど! 心を奪われるな!!!!」
ユラスのこの演説で奮起しない兵などいない。
「……素晴らしいです」
兵達が魔族の術を打ち破ったことを感じ取ったステラステラは感動に身を震わせ。
「こりゃあますます興味がわいたな」
己だけでなく、付き従う兵達からも解き放らせたユラスにバロッサは好奇心に目を輝かせた。
「以上だ、出発は一時間後。それまでに全ての準備を整えておくように」
ユラスは最後にそう言い切り、演説を終了した。
ちなみに魔族は兵達の夢の中でどのような形で現れたのかステラステラに調査させたのだが、その結果を最後まで聞くことはなかったという。
何故なら……
「実は夢の中で現れたのはユラス陛下であり、陛下が『お前だけ特別だぞ』と豪快に笑いながら勧められて、つい……」
「夢の中とはいえ、憧れの陛下と同じテーブルに座っている状況に舞い上がってしまいまして」
「断ると『そうか……』と傷ついた表情をされると困りました」
どうやら彼らの夢の中で魔族はユラスを形どっていたらしい。
つまり彼らにとって最も尊敬する人物はユラス=アルバーナ。
「もういい、止めてくれ」
「はっ」
むず痒い気分になったユラスがステラステラの報告を中断させたのは自明の理だった。
「突き進めぇ!」
「「「おおおおおおおおお!!」」」
ユラスの号令によって兵達は勇んで敵を薙ぎ払っていく。
あの演説は兵達の心境を根本から変化したようだ。
以前よりも躊躇いがない。
「左翼! 突出しすぎだ! 中央が到着するまで待て!」
そうだからこそ、味方の被害も増えているが故、ユラスが静止するよう命令する場面もちらほら見えるようになった。
「っが!」
「ぐう……」
敵は統率されているとはいっても操られた者達。
維持と信念がぶつかり合う状況にまで引きずり込まれると為すすべなく討ち取られていった。
「一方的展開って退屈だなあ」
「何を言うのですかバロッサ。味方の損害は少ない方が良いんです」
直接戦闘に参加しない、バロッサとステラステラがそんな会話を行っていたとか。
「――そろそろ魔族の本拠地に辿り着くな」
地図を見ながらユラスはそう口火を切る。
「問題なのは魔族がゲリラ活動を始めることだが。バロッサ、それは無いよな?」
「ああ、その可能性は心配しなくていいぜ」
ユラスの問いかけにバロッサは自信満々に答える。
「奴らの力の源は本拠地のどこかにある鏡――魔鏡台だ。それを破壊されるということは魔族の信念を破壊されると同義、抜け殻になるぜ」
「信じるぞ」
「鉄板だ、もし間違っていたのなら俺の首をかけてもいい」
バロッサの頼もしい答えにユラスは安心し、心置きなく注意を戦闘に向けることが出来た。
「戦線を立て直せ!」
ユラスの怒号が戦場に響き渡る。
魔族の本拠地を眼前に控えた決戦。
ここを陥落すれば勝敗が決するため敵も味方も必死だった。
まずユラス率いるサンシャイン軍。
ユラスがいる戦場の常として、彼は勇ましい号令をかけることが多い。
が、今回は『応援に回れ』や『予備兵力を前に』といった防御気味の命令が目立つ。
それもそのはず、何せ此度の戦は依然と比べ物にならないぐらい敵が精強だったからだ。
向こうの敵の大半は意思を失った者。
その者達は魔族に気に入られるだけあって戦闘能力が高い。
そこまではいつもと変わらない。
しかし、彼らは己の意思――生きようとする生存本能まで消し去られていた。
死を恐れない兵士ほど怖い者はない。
敵兵は皆反動を恐れず突っ込んでくる。
加えて味方の被害を考慮しない戦法と組み合わされるとその破壊力は跳ね上がる。
数では優っているが、見かけ上の統率力は完全に向こうが上だったため、ユラス達は苦戦を強いられていた。
「このままではじり貧だ……バロッサ!」
「何だい大将!?」
弓矢で応戦していたバロッサにユラスは問いかける。
「魔族の本体を叩く! 魔鏡台の位置は分かるな!?」
「ああ、その辺は心配しなくても良いぜ!」
「そうか! 分かった!」
バロッサの答えにユラスは大きく頷く。
「ステラステラ! そして翡翠! 俺を囮に使え!」
「え?」
「は?」
ユラスの突拍子のない命令に二人は理解不能状態となる。
「俺はこれからバロッサと一団を率いて本拠地へ突っ込む! すると敵は混乱するだろうから、その際臨機応変に動け!」
ユラスの考えた戦法。
それは総大将であるユラス自身が敵本陣へ突撃することである。
大将自らが矢面に立つなど、裏でしか動かない魔族になど想像できまい。
魔族の理解範囲を超えた行動に戸惑っている隙に戦況をひっくり返すことがユラスの狙い。
そして、あわよくば魔鏡台の破壊も目論んでいた。
成功すれば一発逆転、が。
「そんな命令には従えません!」
「無謀でござる!」
二人が血相を変えて反対するようにこの作戦は失敗する可能性の方が高い。
しかもその失敗は致命的な類の代物である。
誰が判断しても危険きわまる作戦。
「大丈夫だ」
しかし、ユラスはいつも通り不敵な笑みを浮かべて。
「俺を信じろ、必ず成功させる」
その表情は昔と変わらない、どんな絶望的状況であろうと諦めず、救いの蜘蛛の糸を掴み続けてきたそれだった。
「さて! 行くぞ! 俺のために死んでもいい奴は付いてこい!」
この時、ユラスはどの部隊にも、誰に対しても命令しなかった。
ただ、前線付近に立ち、そう号令をかけただけである。
「……おいおい、あいつ大丈夫か?」
その様子に不安を感じたバロッサはステラステラに尋ねる。
「もしこれで誰もついてこなければあいつ一人だけの特攻となるぜ?」
ユラスをあいつ呼ばわり。
その無礼な態度にステラステラは目を細めるがバロッサは気にしていなかった。
「その心配はございません」
バロッサは後に教育が必要、とステラステラは内心思いながら質問に答える。
「あれが陛下本来のやり方なのです。希望制、死にたくなければ応じなければよいのです」
「祭事や催し物ならともかく命のやり取りをする戦場だぜ? そう簡単に頷く輩が――」
バロッサの言はここで途切れる。
何故ならユラスの背後に続々と兵が並び始めたのだ。
その数は十や二十で聞かず、瞬く間に一個大隊の規模が出来上がった。
集った兵は皆バラバラ。
新兵らしき鎧がきれいな兵もいればベテランもいる。
子供っぽさが抜けない兵もい、逆に老年に達した兵もいる。
共通点といえばユラスを慕って集った者ばかりだった。
「……」
その光景にバロッサが閉口したのは当然のことだろう。
「ご覧なさい、これこそがユラス陛下です」
ステラステラは微動だにしないユラスの背中に感激しながら。
「レルムント地方。いえ、大陸を統一するに相応しいお方でしょう」
そう締め括った。
「……ああ」
呆けていたバロッサだったがステラステラの問いに気付き、ニヤリと笑う。
「マジで興味深い野郎だ」
そう言葉を残したバロッサは道案内役を務めるためユラスの元へ急ぐ。
「陛下を野郎呼ばわり……これはきつい教育が必要ですね」
ステラステラがそんな暗い情念に満ちた言葉を呟いたとか呟かなかったとか。
「邪魔をするものは叩き潰す! それが誰であろうとな!」
ユラスの咆哮から始まった突撃。
この攻撃に魔族側は大きく面食らった。
戸惑った一つ目の要因は、ユラスが突撃した位置。
彼は陣の薄い場所でなく、全く逆の最も厚い中央へと矛先を定めた。
まさかここに突撃は無かろう。
そう高を括っていた魔族は驚き慌ててしまい、術の効力も弱まる。
すると統一性が薄れ、為すべくなく蹂躙されてしまった。
二つ目の要因はユラスの声。
彼の声は理性や本能を越えた先、魂を震わせる。
その震えは僅かなものだが震えは震え、ユラスはその隙をついて動揺させ、敵を屠っていく。
そして最後がバロッサの弓の技量。
彼の放つ弓は正確に指揮官である魔族を射ぬき、戦闘力を奪っていく。
突撃を行ってから数分。
まだ数分にも拘らず、討ち取った魔族の数はこれまでの戦闘で屠った魔族を上回っていた。
「すげえな! 大将!」
矢を番えながらバロッサは笑う。
「後ろを見てみろよ! 本当に戦況を変えやがったぜ!」
「後方など見ている余裕はない!」
ユラスはそう怒鳴る。
実際ユラスの突撃で戦場の空気は一変した。
中央に大穴を空けられた敵はそれを防ごうと両翼の戦線を薄くする。
が、それを見逃す翡翠やステラステラでない。
ユラスは約束通り、仕事を果たした。
ならばそれに応えなければ彼の隣にいる資格はない。
そういった使命感からか二人は活躍し、掃討選に近い様相を呈していた。
「大将! こっちだぜ!」
バロッサの先導の下、ユラス達は集落の中で最大規模のテントに辿り着く。
魔力がないユラスでもわかる。
ここから禍々しい空気がこれでもかというほど発せられているのを。
「よし! 行くぞ!」
ユラスはそう掛け声をあげて馬首の方向を定める。
そのまま突進し、粉砕するかと思いきや、距離が縮むごとに馬は躊躇いを見せ、ついには止まってしまった。
「何が起こった!?」
ユラスは手綱を引くが馬はびくともしない。
この事態にユラスはバロッサに聞こうとするが。
「すまねえ大将、突然頭が痛くなってきて……」
珍しいことにバロッサの褐色の皮膚から脂汗がにじみ出ていた。
バロッサはまだ良い方である。
ユラスに従ってきた兵の中にはわき目も振らず逃亡するものまで現れていたからだ。
「大将は何ともねえのかい?」
「少し痛むがそれだけだ。支障はない」
実際頭痛が起こっているが、気合で我慢できるほどの痛さである。
「ハハハ、さすが大将といったところか」
そんなユラスにバロッサは乾いた笑いをもらした。
「……全員! その場から動くな!」
一瞬の沈黙の後ユラスはそう怒鳴る。
「これから先! 俺一人で行く! 誰一人として敵を中に入れるな!」
味方が入れないのであれば、ユラスが単身行くしかない。
だったら味方は外で待機してもらい、援軍を阻んでもらうのが一番である。
「大将、こいつを持って行ってくれ」
苦痛に顔をゆがめながらバロッサはユラスに金槌を手渡す。
見たところ何の変哲もないただの金槌である。
「これはな、俺の妹が大事にしていた代物なんだ」
バロッサは続ける。
「俺と妹は魔族に気に入れられ、ここに連れ去られた。操り人形だった俺を救い出してくれたのが妹だったんだ。だから頼む、こいつで魔鏡台を砕いてくれ」
最も危険な魔族がいる集落への道案内。
にもかかわらず何故ここまで詳細な道案内が出来たのか。
その理由が分かった気がした。
「……分かった」
詳しい話はまた後で聞こう。
これから先、バロッサとは長い付き合いになるんだ。
同情や慰めは出来ないユラスだが、それでも聞くことは出来た。
ユラスは痩身な体に似合わない長剣を構える。
全体的に細身なユラスだが、傭兵団の一員として戦った経緯からこれぐらいの代物は振り回せた。
右手に剣、左手に盾。
そして腰に金槌。
それらを装備したユラスは地を蹴り、一直線に目的地へと向かっていった。




