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91竜の息の根2



 目の前の半魚人の眼が、丸っこい魚の目から、無機質で恐ろしい鮫のそれに変わりつつある。

 半魚人はユラリと立ち上がる。

 怒ってるな〜。

 ちょっと怖いわ。


「一応、無駄だと思うが、言い訳させてくれ。全ては勘違いだ」

「お前はアキリアの馬鹿から送り込まれた工作員。あの馬鹿のペットで工作員である」


 アキリアが馬鹿だと思ってるなら、そんな頭脳プレイ出来ないのは、知ってるだろうに。

 基本いきあたり、ばったりだったぞ。アキリア。


「あいつにそんな計画性とかないて、そもそもセーラは呪いで死にかけてたし。俺がいなけりゃ、どっちみち計画破綻してたろ」

「死んでもセーラの魂があれば、治すか別の体を与えるだけで、計画に支障は無いのである」

「マジカ」


 おい。そんな簡単に変えがきくようなもんなのか?

 人間の命ってもっと尊い物だと思うが?

 こいつ等には、そうでも無いのか?

 アキリアも殺して治して遊ぶとか言ってたか、そう言えば。


「アキリアの馬鹿は何処にいる。なにを企んでいる?」

「ア、アキリアは」

「言わねば拷問だ」


 半魚人は ギザギザした歯を見せびらかす。

 禍々しい。

 俺の黒い竜鱗も紙のように千切られそうだ。

 ま、今。俺たぶん魂だから、竜鱗に意味あるか知らんが。


「アキリアは王都で神器の中に入って、出られなくなってます」


 いかん。

 ドラゴンともあろうものが、ビビって丁寧な口調になってしまった。

 ドラゴンたるもの、いつも堂々としないと………

 でもドラゴンでも、怖いものは怖いのである。


「………何?」

「ホントです。封印されてます」

「何をやっているのだ?あの馬鹿は?」

「さあ?」

「まて、少し待て。調べる。王都だな」


 半魚人の目は基の丸っこい魚の目に戻っていた。

 むう、この目だと怖くない。

 取り敢えず危機は去ったか。


「お、おう。アキリアの愚か者が、筋肉達にもみくちゃにされているのである。あれば何の儀式であるか?」

「あ〜像から出られなくなったから、筋肉達に壊してもらおうとしてるのだと」

「………アイツは何をしてるのであるか?」


 サメ頭の半魚人が首を傾げた。


「いや、だから、そう言うやつだって、アキリア」

「アイツと2千年戦った吾輩の立場がないのである」

「ドンマイなのである」


 気持ちはわかる。

 俺だってあんなのに閉じ込められた、アキリア見たときは微妙な気持ちになった。

 猫が高い所に登って降りれなくなったみたいな。


「ま、まぁいいのである」

「いいのか?」

「アキリアが身動きとれないなら好都合である」

「なにがさ?」


 半魚人が鮫の顔でニタリと嗤い、ゆっくりと近づいてくる。

 そして、


「これで誰にも邪魔されず、アキリアのペットを、吾輩の使徒に改造できるのである」

「え?え?どゆこと?」


 半魚人がなんか怖い事言った。


「吾輩の使徒セーラたっての希望である。お前となら、つがっても良いと言うので、セカンドプランとして。汝を吾輩の使徒に改造。セーラとつがわせれば、全てが解決するのである」

「………ちょとまて」

「待たないのである」

「これセーラの計画か?」

「アキリアのペットを仕留めるよりも、吾輩の使徒に改造、再利用した方が、愉快痛快アキリアざまあみろである。セーラ賢いのである」


 あ、間違いないな。事情を全て知ったセーラが、半魚人焚き付けたなこりゃ。


 ぺとぺと湿った足音をたてて、半魚人が近づいてくる。

 何を考えてるかわからない目。

 不気味なフォルム。

 纏ったオーラだけは、凶悪そのもの。

 怖、セーラの親玉だけあって、コイツは怖いわ。

 金縛りスキルか?ただビビってるのか?

 身動きがとれない。


「ヒイイ近づくな。改造って何するんだ?」

「吾輩のエッセンスを注入して、かき混ぜるだけである。魂を弄るだけである」

「何だ?その危なそうな改造は、せめてイケメンに、イケメンに改造してくれ〜」

「わかったのである。吾輩に良く似た、イケメンに改造するのである」

「あああ。逆効果だった」


 ガッシリと鮫頭の半魚人に掴まれ、

 大きな鮫の口で齧られる。

 俺は、こうして大切なものを失ったのである。



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