90.竜の息の根
世界が真っ青に染まっている。
「なんだ?これは?」
俺の体は真っ黒いドラゴンへと変化していた。
む、いつものチビ竜の時はくすんだ色なのに、なんかいつもより、ツヤツヤテカテカしてる。
しかも微妙に背が伸びてる。
自らの変化に気を取られていると、
おおう。
目の前に化物がいた。
凄まじい存在感。
ドラゴンに良く似たフォルムの二足歩行。
鮮やかな蒼い全身に鱗の生えた体。
力強い両手に両足。
ただし、竜とは頭が決定的に違っていた。
頭にはサメのような頭がついている。
「私は東海の覇者。海の支配者」
海の支配者?
この威圧感は、セーラに近い?
もしくはアキリアの本体?
そしてこの場所。
アキリア、と初めてあった場所に酷似している。
アキリアの時は、周囲は真っ赤だったが、
ここは周囲が真っ青だ。
色こそ違うが、それ以外はあの時に近い。
そうか、俺は死んだのか。
俺はたぶん不意打ちで、セルバンテスに首を落とされた。
そうか、そうか。
何でじゃ?
ありえね〜。
セーラとセルバンテスありえね〜。
納得は出来なかったが、
「ここはあの世か?」
「そうである。アキリアのペットよ」
「やっぱり。………アキリアの知り合いか?」
「吾輩は………アレの敵である」
吾輩って、いやそれより敵?
………そういえば海に近づくの嫌がってたし、
半魚人が嫌いとかいってたか?
「もしかして、アキリアと2千年殴りあってた半魚人?」
「ふん。吾輩の勝ちである」
「決着は着かなかったって聞いた気が」
「あの馬鹿が体を捨てて逃げたから、吾輩の勝ちである」
「逃げた?」
「お前も見たであろう。4本腕の馬鹿の体を」
………あったっけ?そんなの。
あ、
「セルバンテスのコレクションにあった奴か?」
「うむ。あれは昔、あの馬鹿が逃げ出した証である」
アキリア負けてたのか?
「てか、俺の行動見てたの?」
「うむ。あの馬鹿は知らないだろうが、この辺りの陸地に、比較的最近。吾輩の縄張りを広げようと思ったのである。城塞都市セイウは、その為の、拠点。あの馬鹿の力が、あの辺りでおよば無いのもその為である」
なるほど。
城塞都市の辺りで、アキリアとの福音が切れたのも、そのせいか?
んで、この辺をこの半魚人が監視してたと。
「う〜む。お前等何やってんだ?神の考えることは良くわからん」
「………飼い主も無礼なら、ペットも無礼であるな。飼い主共々吾輩の邪魔をしよってからに」
「???俺等なんかやったかな?」
首を傾げる。
アキリアが何やったかしらんが?
俺には心当たりないぞ。
「まずアキリアの馬鹿が、吾輩に喧嘩売ってきた。その喧嘩の間に、北と西と南の海に、新たに三人の覇者が産まれた。全員が吾輩に反旗を翻したのである。海の縄張りを大半は取られたのである」
ぶ。甘くないな。
神にも縄張り争いとかあるのか?
「ほほう。それはアキリアにも責任あるな」
「で、あろう」
「まぁ2千年も喧嘩してりゃ、そうなるか?」
二千年、縄張りの管理出来なかったって事でいいのか?
「なので新たに吾輩の強力な使徒を作り出し、北の海の覇者を討伐させようとしたのだが、その強力な使徒誕生の為に、母胎或いは生贄に選んだのが、我が使徒セーラである」
………へ?
「げ!何、あいつ福音スキル保ってたから、アキリアのなんかだと思ってたのに、違ったの?」
「セーラは吾輩の力を、大量に注いで育てた使徒である。福音も我輩が授けたのである」
「それは予想外だった」
「もう一人の強力な使徒との間に卵を産むか、セーラを食べさせれば、北の覇者の天敵を、産み出せる予定だったのである」
なんちゅう計画だ。
人権なんてまるで無い計画。
「セーラは、サラブレッド扱いか?」
「まぁ、お前に邪魔をされたであるがな」
「へ?」
俺なんかしたっけ?
「セーラは、お前のせいで、吾輩の計画参加を拒否したのである。どうしてくれる?」
「いや、知らんて」
「腹立たしい。よりにもよってアキリアのペット風情に、吾輩の使徒をNTRたのである。セーラとつがわせる為に用意した使徒も、無駄になったのでる。どうしてくれる?」
半魚人は四つん這いになり、床をだんだん悔しそうに叩く。
「いや、NTRしてないて。現に俺、セーラ達に殺されて、ここにいるし」
「吾輩の使徒をNTRして、殺されるとか最低である」
「一部始終見てたなら、俺が悪く無いのわかるだろ?」
「アキリアめが、吾輩の計画を潰す為に、送り込んだペットのお前。当然有罪である」
誤解である。
俺にもアキリアにもそんな意図無かったのである。
多分。
でもコイツもセーラと同じく、言い訳を聞いてくれないのである。
多分。




