92海神の使徒1
「目を覚ますのである。吾輩の使徒よ」
「む………誰だ?」
周囲は青い世界。
深い眠りから覚めると、目の前に鮫頭の人形化物が立っていた。
「お前は?誰だ?」
「何も覚えてないのであるか?」
「ああ、ここはどこで、あんたはだれだ?俺は?」
「ふむ。今、記憶を返すのである」
鮫の化物が、俺の頭を丸かじりする。
「いたたたた」
「我慢するのである。記憶を戻すだけである」
「お、おおおお」
次第にクリーンになる脳髄。記憶も徐々に戻ってくる。
ガチリと、丸かじりしていた牙を俺の頭から外し、半魚人が、
「汝の名前を思い出せるか?」
と聞いてきた。なので、
「ああ、俺の名前は火力発電太だ」
「………すまぬ。吾輩、改造に失敗した。汝の頭パッパラパーにしてしまったのである』
正直に自分の名前を答えたのに、半魚人から謝られた。
………いや、本名ですが。
信じてもらえないかもだけど。
キラキラネーム的なあれだ。
いい名前だと想うけどな〜。
半魚人的にもアウトか。
「あ〜と、頭は大丈夫だ。記憶もあるし、一応俺の本名だ」
「パッパラ頭は、皆。自分は大丈夫だと、言うのである」
「いや、ホントだって、名付け親は?マッマ?アキリア?どっちだっけ?」
「………なるほど。大体わかった。アキリア最低である」
つぶらな魚の瞳で半魚人は呟いた。
あ、なんか納得しやがった。
アキリアなら、この名前つけかねないと思ったか?
こいつ本当にアキリア嫌いなんだな。
「水力発電子、火力発電太。原子力発電男。の中から選んだのさ」
「ネーミングセンス最悪である。火を好むアキリア最悪である」
アキリアが選んだと勘違いしてるな。
でも
「アキリア火が好きだったのか?」
知らなかった。
「吾輩は海神である、吾輩の使徒となった汝は、水力発電子に改名するのである」
「人のセンスの事言えないじゃね〜か。しかも、人に勝手に女の名前をつけようとするな」
コイツ。たち悪いな。
「水力発電子よ、汝の使命を果たすのである』
『その名で呼ぶな。でも使命ってなんだ?」
「セーラが産む卵に、汝の精をかければ良いのである。そうしてできた稚魚に、北の覇者を討伐させるのである」
半魚人はつぶらな目で、そういった。
おい!
………コイツ真面目に頭おかしい。
脳みそも魚じゃないか?
コイツが何を言っているのかがよくわからんが、俺に何をさせたいのかは、なんとなくわかる。
………むう。やってられん。
「は、そうだ。顔。俺の顔はどうなってる?鏡ないか?」
「吾輩によく似たイケメンになったのである」
鮫の頭をした半魚人から恐怖の言葉が放たれる。
「まじか〜、そんな顔になってるの?俺は?」
自分の顔を確認しようと周囲を見渡すが、あたり一面、蒼い世界。
鏡どころか、何も無かった。
「吾輩と同じ顔にするのは、不遜である。汝の魂のステージは、まだまだまだまだ、そこまで高く無いのであるが。汝の望みを最大限叶えて、取り敢えず色は吾輩とお揃いのイケメンにしたのである」
「い、色?色って何だ?」
自分の体を見回すと、全身の鱗が、鮮やかな青色に変わっていた。
あ、この半魚人もそういや、鮮やかな青色だなぁ。
「これで汝も、吾輩に似たイケメンになれたのである」
いや、綺麗だけれども。
「綺麗だけれども、これってイケメンって言うのか?」
半魚人の美的感覚は良くわからん。
でも良かった。
コイツみたいな、ぬぽ〜っとした、鮫の顔に変えられるよりは百倍マシだった。
「イケメンである。アキリアが見たら、激怒発狂アキリアざまあみろである」
「そ、そうなの?たかが色くらいで」
「アキリア、イケメンの吾輩見ると、激怒発狂するのであるからして」
………それってイケメンって言うか、嫌われてるだけじゃないか?コイツ等の考え方、よく知らんが。




