48第三王子2
目の下に濃いくまを作った第三王子が、
気狂いじみた凶相をしていた。
その手には禍々しい抜き味のドラゴンキラー。
………これもう通報案件だな。
思ってたよりも、この王子やべー奴だった。
いや、元々は温和な人格っぽいが、
結婚生活に追い込まれて発狂したのだろうなぁ。
「世に三毒虫あり」
「ウギャ?」
「ドラゴンの魅力をわからぬ馬鹿兄貴」
「ウギャ」
「存在自体が罪の、愚かな豚皇女嫁」
「ウギャウギャ」
「悪魔の化身、邪悪なセーラ」
「ウギャャャ」
「三大毒虫を討ち滅ぼしてこそ、世界に平和が訪れる」
「王子。それはあまりにも」
「ウギャ」
「いいか。彼奴らを始末せねば未来は無いのだ」
だいぶ第三王子は出来上がってる。
なんかもとが可愛らしい顔つきだけに、
悲壮感あるな。
カワイソス。
「ウギャウギャウギャウギャ」
部屋の入り口に飾られていた禍々しいドラゴンキラー。
少し離れた場所で、
発狂王子がそれを手に持って振り回している。
あれが怖くて部屋に入れなかったが、
王子が入り口から持ち出したから、
これで王子のコレクション部屋に入れる。
なので、王子はおいといて、
一人で上機嫌に王子コレクションを見回る。
「ウギャ?」
………ドラゴンの糞。使用済みティッシュ。
ドラゴンの牙。爪。骨。鱗。
駄目だ。まるで興味を惹かれない。
「ウ〜ギャ」
もっと魅力的なものが無いかな?
と、キョロキョロする。
む、氷漬けにされた肉発見。
ナニナニ。説明文によると氷河竜の肉。
保存しなくても腐ることのない竜肉。
「………………ウギャ」
大きく口を開けて、一気に丸呑みする。
バリバリと歯ごたえがあって美味い。
「ひ、そ、それは王子の大切にしてるコレクション肉」
「ウギャ?」
近衛がビビってる。
食べちゃ不味かった?と首を傾げる。
「ど、どうしよう王子にどう報告すれば」
「ウギャ」
気にするなと親指をたてて、その場を去る。
肉は食べるためにある。
ドラゴンに激甘な王子なら許してくれるさ。
もし怒られたら………肉があった場所に、
肉を消化した糞を残してやろう。
きっと喜ぶはずだ。
腹が満ちたら眠くなった。
ペタペタと歩いて寝床へと戻る。
近衛兵がついてくる。
気にしない。寝床へ、そして寝る。
朝起きると、ちょっとした騒ぎになっていた。
昨日氷河竜を食べた時、
近くにいた近衛が捕まってる。
「ドラドラちゃんに罪をなすりつけるとは」
「ホントです王子。竜が食べのです」
「君は死刑だ」
「!!!」
しょうがないな〜。
「ウギャウギャ」
「え?なんだいドラドラたん」
手を上げて自首してやった。
ボディランゲージで肉を食べたと伝える。
「氷河竜の肉を食べちゃったの?」
「ウギャ」
「そうか〜。しょうがないな〜」
「王子、私だと死刑で竜だと無罪ですか?」
「当然だ」
それで無罪だった。
チョロいな。この王子。
「王子。チゴヤ商会のセーラ様より手紙が」
「燃やせ」
「いや、そんなわけには」
「ろくでもない事が書かれてるはずだ」
「それが竜についての事で」
「話し給え」
この王子。
ホントにドラゴンの事になると態度ちがうな。
「………セーラ様の婚約者のドラゴンを返してほしいと」
「………へ?セーラ、ドラドラちゃんと婚約してたの?」
「ウギャ?」
首を傾げる。
そういや伴侶とか言ってたな。
アキリアの用意した地雷臭するんだよ。
あの娘。
「ゆ、許せん。僕は豚みたいなのと結婚したのに」
「お、王子」
「セーラはドラドラたんと婚約だなんて。羨ましい」
「ウ、ウギャ?」
「セーラには婚約破棄の手紙を偽造して送っといて」
「え?」
「最後にドラドラたんの名前と手形つけといてね」
そんなん送られたらセーラビックリするだろな。
騙せるわけがないし。
「お、王子しっかりしてください」
「僕は正気だ。あんな悪魔にドラドラたんを渡すものか」
「ドラドラちゃんと添い遂げるのは僕だ」
「お、王子はすでに結婚してます」
「豚皇女とは離婚する」
「お、王子。無理です。正気に戻って下さい」
「僕は正気だ」
「離婚なんてしたら、この国は豚皇女の皇国に攻め滅ぼされてしまいます」
「ウギャァァァァ」
もうだめだ。
この王子イロイロつんでるわ。
国ごと巻き込んで自爆しそうだ。
自爆スキル持ち特有の
俺と同じ匂いがするわ。




