第40話 真の友
ロボティクス戦記編(シキside)
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俺は、この国であったことをすべてエマに話した。
エルフの姉弟についても。
『じゃあアルセスは、その国にいるのね?そして魔窟と交易を開始する手はずだと』
『あぁ』
『…わかった、私たちもいずれ一度は魔窟に戻らなければいけないから…シカさんもいるし。そこでアルセスにまほろばの猫を召喚してもらえば、わざわざ探して捕まえなくてもいいわね』
『そうなるね』
『エルフの姉弟にもいずれまた魔窟で会おうと伝えておいて、それと真名を聞いた理由もそれとなくね』
『伝えておく』
『あとはシロね』
『彼はおそらくこの国に必要な人材だ…それにだいぶ馴染んでしまっている…いずれ必要であれば彼に真実を伝えて帰る手立てを与えるということにして、今はそっとしておく方がいいんじゃないかな』
『私もそう思っていた。魔窟とその国はつながるみたいだし、そうしましょう』
『わかった』
そしてエマも、倭の都であったことをすべて話してくれた。
ロキと言うハザマの者を捕まえ、今、取り調べの最中であることも。
女神の発言から、そいつがおそらく様々な国にハザマの者を送り込み、その記憶を消していたのだろうと、俺たちは予想した。目的も方法もまだ曖昧だが。
『とりあえず今話せることはここまでね…私はそろそろ行かなくちゃ』
『ゲームの世界?』
『うん』
『はやいな…俺は次の目的地がそこか分からないんだ。実はこの国にくるときにあった竜巻は、この国につながり、大渦ならばゲームの世界につながっていたらしいんだ。そのとき、その先の世界でより奴隷を必要としている方につながる仕様になっているみたいで』
『そうなの?奴隷船は他にどこをまわるの?』
『ゲームの世界と、闘技場だって』
『闘技場?』
『国全体が闘技場になってる世界、剣闘士として奴隷が必要とされる』
『ゲームの世界ならすぐに合流できるけど、闘技場へ行ったらまだ会うのは先になるわね』
『そうなる』
シキはエマとの通信を終え、リオンとレインと話し込んでいた。
そこへ、急いだ様子のフィレが現れる。
「やっと見つけた」
「フィレ」
リオン達と少し離れてシキはフィレと話し出す。
「次の世界に行くならすぐに奴隷船に乗ってくれ。襲撃で大破した船を思ったより早く不在心がなおしてくれた。すぐに行くとエレファが言っている」
「すぐ?」
「あぁ…かなりの数のもと奴隷がフジミの軍にいた、あの人数でかつて自分を売った奴隷商人に報復を挑まれたらさすがに太刀打ちできないと考えてるみたいだ」
「それは確かに。リオンは?」
「彼女は残る」
「ここに?」
「リオンが船を召喚して、ここから魔窟に向かうそうだ。そしてこの国への奴隷の供給をやめてもらう代わりに、この国の技術を伝えるための正式な貿易商として認めてもらうらしい」
「…レインからその話は聞いていたけど、そうか、リオンが一緒に居れば心強い」
「そういうことだ」
「しかし、リオンとレインは二人とも自分の国に戻らないのか?」
「まぁ帰りたいとは思っているだろうが、現状、リオンは翁に逃がされた身、今戻れば確実にスネイクによって罰が与えられるだろう」
「…国の体制が変わらない限り戻れない、と」
「そうだ」
そこで話を終え、二人はエルフの姉弟に向き直った。
シキはリオンと、固く握手をする。
その後フィレもリオンと握手をした。
レインとハグをすると、小声で『お姉ちゃんを助けてくれてありがとう』と言われた。おそらくエルフの国であった決闘のことだろう。別れを惜しみながらも、またいずれ会おうと言い合った。
そしてフィレと共に奴隷船に向かって歩き出す。
「船員が一人減って気づかれないか?点呼とか…流れ弾にってことに?」
「それなら心配いらない。船に着けばわかる」
「?」
少し嬉しそうなフィレをシキは不思議そうに見た。
「K、あとは任せたよ」
[行くんですね、翔]
「もともとあっしはこの国の者ではないようすからね」
[私があなたにそれを教えたせいであなたが行ってしまうなら、言わなければよかったと思っています]
「長い付き合いだったな」
[本当に。過去のデータを復元した今では、アラミと友だったあのとき以来、一番の真の友です]
「それは嬉しい…どうか平和を」
[必ず維持します]
「人は必ずまた間違える」
[そうかもしれませんね、でも、感情のある今、私たちロボットですら間違えるという高度な所業ができるやもしれません]
少女の声は嬉々としていた。
「それはまたすごい皮肉すね」
[人には及びませんよ]
「それじゃあ、K…いや、アラミ」
[…お元気で、翔]
「また会おう」
[はい]
小さな女の子のホログラムがシロに手を振った。
シロはフードを目深にかぶり、歩き出すと右手を一度挙げ、そして下げた。
振り向くことはなかった。
奴隷船に乗り込み、フィレの船室に行くとそこにはフードを被った人物がいた。
リオンは残ると言っていたはずなのに
とシキが思ったとき、その人物はフードをとった。
「よろしくっす」
「シロ!?どうして…この国は君がいなくても大丈夫なの?」
「大丈夫、アラミが居ればここは平和さ」
「アラミって…Kのこと?」
シキの言葉にシロは頷き、そしてごそごそと自分のポケットを探るとフィレに何か放った。
「忘れもんですぜ」
「…すまない、ありがとう」
「商売道具忘れるなんてうっかりしてる」
「…お前が乗り込むと言うからもってきてくれるだろうと踏んでいたんだ」
本当か分からないその言い分を聞いて、シロはわざとらしくやれやれというポーズをして見せた。




