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「ただの友達だから」と言って婚約者とイチャつく騎士系令嬢を物理で返り討ちにします  作者: ふくふくまる
第1章

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第16話 貴方のことはもう好きではない

タイトルを修正しました(2026/9/18)




 あれから数日後、ミーシャはしばらく休学することになったらしい。

 この王立学園(乙女ゲーム)の主人公たるミーシャを舞台から引きずり下ろしまったことに罪悪感はあるものの、とりあえず学園は辞めないでくれてほっとする。

 

 この先のシナリオでは、この王立学園に様々なトラブルが舞い込むのだ。それを解決するために、主人公のミーシャという存在はなくてはならない。


(決闘を通して、恋人や婚約者のいる男の子と適切な距離を取るよう約束したし…………)

 

 それが無ければミーシャは良い主人公なのだ。

 婚約者のいる第一王子ルートやエドガールートは潰えてしまったと思うが、この乙女ゲームには他にも色んな攻略キャラクターがいる。

 婚約者のいない男の子もいるから、然程問題はないだろう。

 

 ちなみに私はというと、あの決闘以降、特進科から騎士科に転科しないかという教師の誘いがあった。

 けれど真剣に騎士になろうとする人達がいる中で、将来騎士になるかも分からない私がいたら失礼だろう。

 丁重に断らせていただいた。

 

 そして現在。

 学園のガーデンテラスにて、私はエドガーと対峙している。


 自分達の婚約について話があると呼び出されたためだ。

 まだフェルゼン子爵家からの回答はないものの、何か動きがあったんだろうなと思う。


 するとしばらくして、エドガーがぽつりとこぼした。

 

「……………この間の決闘、すごかったな」


 そんな彼の言葉にきょとんとする。

 仲の良い男子生徒達は停学となり、ミーシャさえも休養のため学園には来ていない。そのためどこか寂しそうな印象を受けた。

 

「クラリスがあんなに強かっただなんて思わなかったよ。いつもおどおどしてて、怖がりで………別に俺が守ってやらなくても、十分強かったんだな」

「あの、隠していたわけではなくて………」

「まあ、でもそうか。あの白薔薇の騎士の娘なんだもんな。今までずっと半信半疑で、事実だとしても遠い親戚くらいだと思っていたよ」

「……………ごめんなさい」


 そう謝罪するとエドガーが「いや」と首を横に振る。

 そして彼はしばらくして、意を決したように口を開いた。

 

「クラリスとの婚約は、俺の方から破談にするよう生家に伝えた」

「え?」

「だって格好悪いだろ? 散々守ってやるって言ってた女の子は実は強くて、その上俺はお前を守りもしなかったんだから」


 ふと顔を上げれば、エドガーはどこか後悔している様子だった。

 もしかしたら私が騎士科の男子生徒達から苛められていた時のことを思い出しているのかもしれない。


 すると彼は力なく笑う。


「俺、格好悪いよな。どんな面して、お前の隣に立てば良いか分かんねえよ」

「…………ウッドロック子爵家は何と?」

「反対されたよ。でも、フェルゼン子爵家が今回のことで俺との婚約を破棄しようとしているんだってさ。親父も随分と参っちまって渋々了承してくれた」

 

 そんなエドガーに、ふと兄のサミュエルが言っていた言葉を思い出す。

 

 ────優秀な騎士を輩出する家の娘に目を付け始めたみたいで………その上、先代王妃テレジア様を暗殺した革新派の貴族残党を使って市井からも魔力のある娘に目星を付けているらしいんだ。

 

 もしかしてこのことは、エドガーには聞かされていないのかもしれない。


 表立ってフェルゼン子爵家がウッドロック子爵家の裏切りを吹聴して婚約破棄を申し出るより、自身の力不足によってエドガーが婚約を辞退したとの方が外聞は良いのだろう。

 何も知らされていないエドガーをよそに、ウッドロック子爵家当主の思惑が透けて見えて苦笑する。


 であれば私のもとにも生家から、いずれ通達が来るはずだ。

 エドガーに事実を伝えることもできるが、生家間で何らかの取り決めもあるかもしれない。私から話さない方が良いだろう。

 

「そっか、分かったわ。…………その、今までありがとう」


 学園に入学するまでは、エドガーとの仲も悪くはなかったのだ。


 何より好きだった。

 しかしもう、そうも言ってられない状況であるし、私自身彼への純粋な好意は無くなってしまった。

 するとエドガーはぽつりとこぼす。

 

「……………だからさ、待っていてほしい」

「ん?」

「俺が強くなって、クラリスを今度こそ守れるようになったら、もう一度婚約してほしい。俺はやっぱり、お前が好きだから」


 そんな風に言い放つエドガーに呆然とする。

 

(……………………い、いやいやいや)


 きっとエドガーの中では『自分の弱さ故格好よく身を引いた』とか思っているかもしれない。


 しかし実際は私からの申し出に加え、ウッドロック子爵家が裏で私以外の令嬢との婚約を画策していたのが原因だ。


 それにウッドロック子爵家が事を収めようと渋々「エドガーの意思を汲んで」というポーズを取って、婚約を取り下げたというのが顛末であろうが…………。

 

(す、すごい。何も知らされていないから、ここまでのことが言えるのか………!)

 

 何も事情を知らないとはいえ、お気楽すぎるエドガーに絶句してしまう。


 するとその時、テラスに一人の男子生徒が入ってくるのに気付いた。


 ロランだった。


「……──随分と調子の良いことを言っているね」

 

 突然現れたロランに私もエドガーもポカンとする。


 どうしてここに来たのだろう?


 するとロランがにこにこと人好きする笑みを浮かべて、エドガーに詰め寄り始めた。

 

「話は聞かせてもらったよ。その上で聞きたいんだが、随分と自分勝手じゃないかい? クラリス嬢が騎士科の男子生徒達から嫌がらせを受けていた時、君はミーシャ嬢といちゃいちゃしていただろう?」

「な、」

「それで苛めが露見した時、君は何て言ったんだっけ? 『アイツらがそんなことするわけない』だっけ? よくもまあ、そんなことが言えるよね。俺だったら好きな女の子に対して口が裂けても言えないなあ」

 

 流れるような罵倒にエドガーが口をはくはくとさせる。

 どこか苛立った様子のロランに首を傾げるものの、彼はそのままエドガーに続けた。

 

「確か婚約破棄も仄めかしていたよね? それでクラリス嬢は何て言ったんだっけ? 『分かった』って言っていたような………。もうその時点で君はとっくに見限られているのにね! 君はまだクラリス嬢が自分のことを許して、再び婚約してくれると思っているのかい?」

 

 何でこの人、こんなに攻撃的なんだろう………。


 不自然なまでの笑みをべったりと顔に貼り付け、攻撃するロランに「エドガーのことは気に入らないのかな?」と思う。

 

 そういえば原作でもロランは何かとエドガーに当たりが強かった。「彼のどこが良いのか理解に苦しむよ」とまで嘆いていた気もする。

 

 しかし、ロランの話すことは尤もだ。

 むしろ私が言いたかったことを全て代弁してくれたと言っても過言ではなかった。


 するとエドガーが肩を小刻みに震わせて言い放つ。

 

「い、いきなり何なんだよ、お前!? お前には関係ないだろう!?」

「関係なくないよ」

「は、」

「関係なくはないけど、わざわざ俺の事情を教えてやる程親切ではないかな」


 ロランの妙な言い回しに私もエドガーもポカンとする。

 するとロランが私に顔を向けた。


「で、クラリス嬢から彼に何か言うことは無いのかい?」


 エドガーの時とは打って変わって、優しく尋ねてくれる。


 けれど………うん。

 言いたいことならたくさんある。


 そして私ははっきりとエドガーに告げた。

 

「ごめんなさい。もうエドガーのことは好きでも何でもないの。だから待つなんてことはできないし、貴方が強くなったからと言って好きになることは絶対にないわ」

 

 そんな私の言葉にエドガーが呆然と立ち尽くす。

 それからロランは追撃するかのように口を開いた。


「これはお節介かもしれないけど、婚約破棄の本当の理由(・・・・・)を君のお父上から聞いた方が良いんじゃないかな」

「本当の理由………?」

「うん」


 エドガーがきょとんとする。

 ロランの口ぶりからするに、すでに彼はウッドロック子爵家の不義を知っているのだろう。


 「胡散臭い」とか「笑った顔が逆に怪しい」とか色々言われるロランだけれど、決して優しくないわけではない彼に感謝した。







 

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