表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛については未履修です ~転生先では恋愛心理学の教授になっていました~  作者: パト山


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/31

15.結社との戦い

王都の夜は静かだった。

 だが学院の地下会議室には、重い空気が満ちている。

「……つまり、“心導結社”が動き始めた可能性が高い」

 レオンハルト先生の低い声。

 机の上には数枚の資料。

 ここ最近、王都で起きている不可解な事件についてまとめられていた。

・突然、特定人物へ極端に依存する者

・集団的な思考誘導

・記憶混濁

・感情暴走

 そして共通点。

「全員、“安心感”を与えられた後に行動を変えている」

 私は資料を見ながら呟いた。

 ルミナが腕を組む。

「気持ち悪いよね。“自分を理解してくれる人がいる”って思わせて取り込むんだから」

「宗教勧誘や洗脳でも近い構造はあります」

「洗脳って本当にあるの?」

「完全支配みたいなものは創作ほど単純じゃないです。でも」

 私は資料の一文を指差した。

『自分だけを肯定してくれた』

「孤独な時、人は依存先を作りやすい」

 これは地球でも同じだった。

 人間関係に飢えた人ほど、

 “理解者”へ急速に傾倒する。

「しかも結社はそこへ魔法を混ぜてる」

 カミラ先生が眉をひそめた。

「感情増幅系統の魔術か」

「恐らく」

 厄介なのはそこだ。

 心理誘導だけならまだしも、

 この世界には実際に感情へ干渉する魔法が存在する。

 つまり。

 “心の隙”を物理的に広げられる。

「……最悪ですね」

 私が呟くと。

 レオンハルト先生がこちらを見る。

「斉藤」

「はい?」

「お前に任務が来てる」

「嫌な予感しかしないんですが」

「潜入だ」

「やっぱり」

 ◇

 三日後。

 私は王都南区の酒場街へ来ていた。

 表向きは普通の読書会。

 だが実態は、心導結社の接触地点。

「いやなんで私が……」

「心理学者だからだろ」

 隣でルミナが当然のように言う。

「私は戦闘職じゃないんですが」

「安心しろ。私が護衛」

「それが一番不安です」

「失礼だな」

 酒場の地下。

 薄暗い部屋。

 十数人ほどが椅子へ座っている。

 中央には黒衣の男。

 柔らかな笑み。

 静かな声。

「皆さんは、ずっと苦しかったのでしょう」

 その瞬間。

 私は理解した。

 ――上手い。

 声量。

 間。

 視線。

 肯定の入れ方。

 完全に“人を安心させる話法”だ。

「ここでは否定されません」

 男が穏やかに言う。

「傷ついた人間が、安心していい場所です」

 周囲の参加者たちの表情が緩む。

 中には涙ぐむ者までいた。

「先生」

 小声でルミナ。

「どう?」

「危険です」

「魔法?」

「いや、人間理解が」

 あれは単なるカリスマではない。

 人間が“不安時に欲しがる言葉”を正確に突いている。

「承認→安心→依存」

 最悪の流れだ。

 すると男の視線がこちらへ向いた。

「……そちらの方は初参加ですか?」

「ええ、まあ」

 私はなるべく冴えない感じを装う。

「最近うまくいかなくて」

「そうですか」

 男は優しく微笑んだ。

「大丈夫。貴方は悪くありません」

 その瞬間。

 周囲の空気が変わる。

 参加者たちが“救われた顔”で男を見ている。

 危険だ。

 この言葉自体は間違っていない。

 だが。

 “救済”は強すぎると、人を思考停止させる。

「貴方は理解されなかっただけです」

 男がゆっくり近づく。

「ここには貴方を理解する仲間がいます」

 普通なら、救いの言葉だ。

 だが私は気づく。

 “外の世界”を切り離し始めている。

 典型的な依存形成。

「なるほど」

 私は静かに笑った。

「随分、“上手い”ですね」

 一瞬。

 男の目が細まる。

「……何がでしょう?」

「孤独な人間へ、“居場所だけ”を与える」

 私はゆっくり立ち上がった。

「でもそれ、本当の意味で相手を救ってませんよね?」

 空気が凍る。

「人は弱い時、“全部肯定してくれる場所”へ依存する」

 私は男を見据えた。

「でも、健全な関係って本来、“外の世界へ戻れる”ものです」

 参加者たちがざわつく。

 男の笑みが消えた。

「貴方は誰です?」

「教師です」

「……教師?」

「ええ」

 私は眼鏡を押し上げた。

「人間関係を教える側の」

 すると男が低く笑う。

「理想論ですね」

「かもしれません」

「人は孤独から逃げられない」

「ええ、逃げられない」

 私は頷いた。

「だからこそ、“依存先”じゃなく、“繋がり方”を学ぶ必要がある」

 次の瞬間。

 男の指先が淡く光る。

 魔法陣。

「――っ!」

 ルミナが即座に前へ出た。

「来るよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ