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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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93/103

92話 現代剣王

 てな感じで今に至るわけだが––––––

「クッ」

 正直驚きだ。

 仙善様や蒙白様よりも一撃の威力は上。

 皇帝たちの試練を乗り越えた俺がむしろ押されてる・・・

「やはり貴様が万里の長城を攻略した者か」

 万里の長城だと!?

 どうしてそんなこと・・・・・

「あんた、あのダンジョンを作った『神託者』か?」

 もしそうならこの強さも納得だ。

 けど、どうして『神託者』が俺を狙う?

「だったらどうした?」

「何で俺を狙う?」

「言ったはずだ、実力を示せと」

 再び交わる大剣と聖剣。

「その程度なわけがない。見せてみろ、お前の全力を」

 よく言う––––––そんなもん、俺に百害あって一利なしだ。

 けど、見せてやるよ剣聖の力を。

 事情はどうあれ、お前たちは俺から大切な存在を奪った。

「なら、せいぜい足掻いてみせろよ」

 相手の剣を真正面から受ける必要なんてない。

 俺は静の剣を止め、動の剣を用いて聖剣を振るう。

「クッ」

 静寂と化していた『神託者』の表情に歪みが生じる。

 全く、俺の中に燻る弱者根性を早く何とかしないとな。

 そもそも、こっちには『万能完治』もあることだし、同程度の敵なら警戒しすぎるだけ不利になる。

「その調子だ」

 相手のペースに惑わされるな。

 剣筋を、全身の筋肉の動きをよく観察しろ。

 お優しいことに、相手は上半身の素肌丸出し状態。

 服の上からだと感じずらい筋肉の細々とした動きが、今の俺の目には見えすぎてしまう。

 思考速度にも問題なく体が追いついてくる。

 相手の攻撃を最小限の動きで全て躱し、受ける際は、剣の側面で滑らかにいなす。

 あと足りないのは、攻め。

 流石は『神託者』。

 相手の様子から全力というわけでもなさそうだが、三回に一度の攻撃は防がれてる。

 このまま持久戦にもつれ込んでも結果は変わらないだろうが、時間をかけるほどメラに危害が及ぶ可能性が高くなる。

「一気に行くぞ」

「––––––––––––ッ!?」

 俺は全力の白魔気を全身と聖剣に纏わせ、『神託者』すらも置き去りにするほどの素早さで華麗に聖剣を振り回す。

 研ぎ澄まされた感覚は相手の靭帯を即座に見抜き、容赦無く断ち切る。

 漆黒の大剣は「ドサリッ」と地面に寝そべり、『神託者』の両膝も地へと付く。

「––––––俺の負けだ」

「メラをどこにやった」

「その前に一つ確認したいことがある」

 この後に及んでまだ口を割らない気かよ・・・

「––––––剣聖とは、どういう関係だ」

 



 <––––––––––––転職ミッション––––––––––––現在「3/5」>

 



「––––––!?」

 

 その時、先ほどこの男が口にしていた聖剣に見覚えがあるという言葉がフラッシュバックする。

 けど、その時点ではシステムの通知が出ていなかったことを考えると、他の要素で俺の中に剣聖の力が宿っていることに気づかれたというわけだ。

 思考が冷静になり始め、俺は目の前の人物が何者であるのか、その正体に行き当たる。

「あんたまさか・・・剣王か?」

 正確には、【剣王】の称号を持つ存在。

 剣聖の生きた時代の剣王とは全くの別人。

 つまり、【剣王】という称号は長き時を経て受け継がれてきたモノだということだ。

「––––––孫2人が世話になったようだな」

 その瞬間、体の緊張は一気に解け、俺は無意識に安堵の笑みを浮かべていた。

「何がおかしい?」

「いや、一先ずメラが無事だってことが分かったからな」

「悪いことをしたな、万里の長城を攻略したのが一体どんな奴か確かめておきたくてな。俺の身勝手にお前の連れは巻き込むわけにはいかないからな」

 先ほどとはまるで別人。

 表情こそそこまでの変化はないが、口調が明らかに優しさを纏っている。

「確かにな。けどあの状況じゃ攫ってるようにしか見えない」

「お前の実力を引き出すためには効果抜群だっただろ––––––––––––だがまさか、剣聖の力を手にした存在とは・・・死ぬまでお前のことは忘れないだろう」

「そのことなんだが、どうしてこの力が剣聖のモノだと分かった?」

「【剣王】の称号を得た者には、これまで称号を繋いできた者たちの記憶と技が継承されていく」

 なるほど。

 つまりはかつて剣聖と剣王が出会った時の記憶も有しているということ。

 そう思ったんだが、次に飛び出した発言に俺は耳を疑う。

「初代剣王から【剣王】の称号を継承したのは2人だった。一人は俺たち舞王家の先祖にあたる人物。そしてもう一人が剣聖だ。そん時はまだ「剣聖」とは呼ばれてなかったみたいだが」

 称号【剣王】を得た存在には、宿る記憶と技術が継承される––––––つまりは、現代剣王には俺の知らない剣聖の記憶も存在している可能性があるということ。

「要するに、剣聖の記憶がお前にも宿っているということか?」

「そうなる。だが、力の一切は継承されていない。だから気になったんだ、どうしてお前が剣聖の力を持っているのかをな」

「正直俺にもどうしてなのかは分からない。家系に何か関係があるんじゃないかとも思ったんだが、違うらしい」

「名は何だ」

「八尺 流星」

「聞き覚えのない名だ」

 剣王は少しの間思考するも、案の定答えが出るはずもない。

 俺は自分が何者なのか、ますます分からなくなる。

「戻るとするか」

 靭帯を切断したというのに、剣王はまるで何事もなかったかのように立ち上がる。

「回復術まで使えんのか」

「それはお前もだろ」

「フッそうだな」

 先ほどの睨み合いが嘘のように、俺たちは互いに細やかな笑みを浮かべ合う。

「そうだ、他の奴には俺の中に剣聖の力が宿ってることは黙っててくれ」

「こう見えて口は硬い方だ」

 一体自分がどう見えていると思っているのか分からないが、見た目通り口は硬いようで安心した。

 こうして俺は剣王とともにメラたちの待つ、剣王の城へと向かう。

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