85話 蠱毒
万里の長城攻略から24時間以上が経った。
あれから少し低級のダンジョンを回ってみたが、『闘神』を使った結果は『メテオの子』を獲得した時点よりも弱くなってた。
日本のハンターレベルで言うと、A級ハンターよりも少し強いくらいのレベル。
メラに事情を話したところ呆れた顔をされたが、それ以外は特に何もなく、すっかり元通り––––––––––––と言いたいところだったが、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
王鳳様からの試練には、他の5人とは違った地獄が用意されていた。
試練の名は『蠱毒』。
突如飛ばされたこの闇に包まれた空間には、獣や虫、この世界のありとあらゆる生命が王鳳様の力によって強化された状態でひしめきあっている。
正直常軌を逸している。
中には人間らしき姿も薄ら見えるが、王鳳様曰く、彼らは罪人とのこと。
それでも、その残忍性に衝撃を受けずにはいられない。
俺自身身動きが取れず、鼓膜が破れそうなほど巨大なうめき声が響き続ける。
『蠱毒』とは、壺などに多種多様な毒虫を閉じ込め、最後の一匹になるまで争わせるというもの。そして、生き残った最強の毒虫を呪いに用いていたらしい。
つまり凪星は、皇帝たちでは敵わない「天魔」に対抗するための道具であるというわけだ。
別に俺も凪星も、そのことに対して怒りや何か思うことは一切ない。
むしろ、力を授けてくれて感謝しているくらいだ。
それよりも、この生き残りをかけた状況の中、無数の殺意が一点に俺へと向けられていることに意識を奪われる。
やらなきゃやられる。
正直、万里の長城ダンジョンで出現したモンスターの数は数万はくだらなかった。
けど、俺が現状気配を感じ取れる1kmの範囲だけでも数百万の殺意が存在している。
この暗闇がどれほど続いているのかは分からない。
もしも万里の長城以上続いていたとすると––––––––––––
いや、考えたくもないな。
俺は全身へとオーラ状の白魔気を纏う。
躊躇う気持ちは捨てよう。
必ず生きて試練をクリアし、一を生き返らせるんだ。
感情の高鳴りとともに勢いよく胸から取り出した聖剣の威力によって、周囲一帯の生命反応が消失する。
飛散する液体の感覚。
剣から伝わる重さ。
これは幻覚なんかじゃなく、本物。
俺は、生きた生命の命を刈り取ったんだ。
止まれない。
止まることは許されない。
だけどしかと胸に刻んでおこう。
剣聖の力は、様々な命の犠牲の上に成り立っている真実を。
そうして俺は斬りまくる。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って––––––––––––––––––––––––
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
終わりが––––––ない。
敵の姿は見えないが、はっきりとした殺意のみがとめどなく流れてくる。
一体いつになったら終わりが来るんだ?
もう、丸一日は動きっぱなしだ。
万里の長城の比にならない速度で命を刈り取ってきた。
それでも、一向に終わりが見えてこない。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って––––––––––––––––––––––––
「はぁ・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・」
下に行くほど敵の強さは増していき、疲労と傷は増えていく。
この空間は、どういうわけか『万能完治』が発動しない。
もうお腹も音を立てなくなり、喉が渇いているのかすら分からなくなった。
聖剣を握る手の感覚と一の存在のみが、俺に戦うことをやめさせない。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って––––––––––––––––––––––––
もう・・・・・・・・・・手の感覚も無くなってきた。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って––––––––––––––––––––––––
・・・一。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って––––––––––––––––––––––––
・・・・・・・・・・
斬って––––––––––––––––––––––––
俺は・・・目的・・・・・一のために。
俺は今、寝ているのか、立っているのかすら分からない。
もう手足が動かせないほど体はボロボロになり、息も絶え絶えになっている。
まだ先が長いことだけははっきりと分かる。
諦めるわけにはいかない。
諦めたくない!
今回も運に頼ることになるなんてな。
俺は『闘神』を発動させて、文字通り最後の力を振り絞り再び聖剣を握る手に力を込めて命を刈っていく。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って––––––––––––––––––––––––
お願いだ・・・・・こんなところで、終わるわけにはいかないんだよ!!
<王鳳の試練を達成–––––––––––称号【支配者の素質】を獲得。それに伴い、『50%:死者蘇生』解放までに存在している『剣聖の記憶』以外のメモリーツリーを全て解放>
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】【支配者の素質】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』『空歩』『万眼』『万能完治』『流星闘鬼』『闘神』
体力:20050
武力:20000
防御力:16999
敏捷:21001
技術:23414
運:18899
魔力:16533
『メモリーツリー:42%「32P」』】




