75話 五大皇帝:第三の試練
『剣聖の記憶』
五大皇帝:第三の試練
「その様子だと、かなり苦労されているみたいですね」
前2人の試練で疲れた様子を見せる凪星を見て、楽しそうな笑みを浮かべる王魏様。
「私の試練は、試練というほどのものではありませんから、どうぞ肩の力を抜いてください」
「・・・はい」
なぜか王魏様を見ると、我が家に帰って来たようなほっこりとした感覚になる。
ゆったりと力を抜いて床へと腰を下ろし、数人の侍従たちにお化粧や服の手入れをされている様子を見ていると、むしろ緊張する方が難しい。
それにしても、正午の紫禁城は嘘のように静寂と化している。
水がせせらいでいる音。
草木が揺れる爽やかな音。
鳥たちの細やかな合唱が耳に優しく。
焦りで塗り固められていた凪星の心を優しく内側から溶かしていくよう。
「よければ少しお話ししませんか?」
話・・・・・それが試練と何か関係があるんだろうか?
––––––––––––いや、ここはいっそ流れに身を任せてみよう。
「いいよ」
王魏様は嬉しそうに微笑むと、こちらへと少しだけ身を寄せる。
「妙とは、どのようにして出会ったのですか?」
どんな話題が振られるかと思えば、なんてことない普通のモノ。
「僕が飢え死にしそうだったところを、妙とその家族が助けてくれたんだ」
「ふふっ、凪星はいつも死にそうにしているんですね」
「確かに––––––妙と出会うまでは、生きていくことの意味が分からなかった。だけどなんとなく、死ぬのはダメな気がしてたから・・・死なない程度に生きてたんだ」
凪星のこの気持ちを理解してほしいとも、理解できるとも思っていない。
だけど、王魏様は理解しようと真剣な様子で話を聞いてくれている。
「妙とは、貴方に生きる希望を与えてくれる存在なのですね」
「妙が家族を失った時、生まれて初めて守らなくちゃいけないと思った」
「ということは、一目惚れだったのでしょうか?」
凪星と妙は北海道で約3年の月日をともにした。
いつしか凪星にとって妙は姉のような存在となっていったと思っていたけど、今妙に対して抱いている愛情は、出会った時に感じた温かさをさらに強くしたモノのように感じる。
俺は凪星じゃないから断言することはできないけど、多分、王魏様の言う通りなんだろう。
「・・・僕は妙の辛さが分からないし、僕が死んだ後も色んな人と出会うはず––––––––––––初めて会って言葉を交わした時、それがなんとなく嫌だなって思ったかも知れない」
「そうですか。相手のことよりも、自分のことは分からないものですからね」
「妙は僕に色んなことを教えてくれた。言葉だって、こんなにも話せるようになったのに・・・・・・」
制御できない涙が瞳からポロリと滴る。
「きっと、妙も貴方と同じ気持ちです。ですが––––––いえ、だからこそ、貴方が来ることを、貴方が傷つくことを望んでいないかも知れませんよ。もうすでに、結ばれてしまっているかも知れません」
最も恐れていた言葉が、王魏様の口から飛び出す。
凪星の体は「ビクリッ」と反応し、冷や汗が身体中から滲み出る。
「それでも、心はきっと繋がっています。この先何があろうとも、そのことだけは決して忘れないようにしてくださいね」
「・・・・・・ありがとう」
この人の言葉は、妙本人から言われたわけでもないのに説得力がある。
凪星の中に燻っていた邪念が消化されていくのを実感する。
「私は応援しています––––––––––––」
<『回復の素』がスキル『万能完治』へと進化>
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』『聖道』『空歩』『万眼』『万能完治』
体力:15632
武力:15326
防御力:12846
敏捷:15103
技術:14283
運:15340
魔力:13135
『メモリーツリー:25%「32P」』】




