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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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70/103

69話 5人の皇帝

 1つを除いて締め切られていた4つの建物の扉がゆっくりと開かれる。

「そこで止まれ!」

 若々しい高らかな男性の声が広間に響き渡る。

「王魏との会話は聞かせてもらった故、事情は理解した。しかし、我らが力と信頼を託すに値する存在かどうかを確かめさせてもらう」

 まず初めに視界に入ってきたのは、見上げている真正面の建物内の玉座に腰を据える皇帝の姿。

 剣聖の力を手にして視力も向上したせいか、こんなに離れていても皇帝のお姿ははっきりと窺える。

「あの方は王鳳(おうほう)っていうの。男の人だよ」

 横に立つ王魏に聞かされた情報に目と耳を疑う。

 それほどに直接見る『王鳳』という人物は綺麗すぎる。

 透き通るような白い肌をより輝かせている真っ赤な衣装。

 サラリと伸ばされた黒い長髪も美しさを際立たせている。

「その前に王魏。貴殿は自分の場所に戻るのだ」

「分かりました。では––––––––––––おっと、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「凪星––––––––––––凪星と言います」

 王魏へと小さく囁いた後、もう一度広間に響く声量で自分の名を発する。

「そうか凪星よ、先ほどの兵への無礼は一先ず見逃そう。その代わり、我々の前で今一度己の意思を述べてみよ! 貴様は何がしたい––––––何を成したい––––––己の価値をまずは言葉で示してみせよ」

 そんなのは決まってる。

 流星として答えるなら、一を生き返らせるために命をかけて強くなる。そして、一以外の今を生きる大切な存在をこれ以上失わないように強くなる。

 どんなに己を犠牲にすることになっても––––––––––––

 俺にはそれほどの覚悟があると断言できる。

 だけど剣聖は違う。

「妙を救いたい! 彼女を奪ったあいつらが憎くてたまらない!」

 伝わってくる––––––凪星の怒りが。

 確かに天魔に対する怒りもある・・・・・けどそれだけじゃない。

 妙を守ることのできなかった自分自身への怒り。弱さを嫌悪する感情。

 そして、愛する存在への無限の想い。

「––––––––––––そっか・・・僕でも、愛が何かを理解できたよ・・・・・妙・・・・・・僕は、愛する存在を守るために強くならなくちゃいけない・・・・お願いします。僕に強くなる術を教えてください!」

 俺と凪星は確かに違う。

 生まれる時代が違えば、性格も背丈も声色も見た目も声も何もかも違っている。

 だけど、大切な者を想う気持ちは同じなんだね。

「ワーハッハッハッハー––––––よく言ったぞ小童! それでこそ男というものじゃ。わしはその小僧気に入ったぞ」

「そうさね。わっちもそういうのは嫌いじゃないよ。惚れた女のために尽くす物語–––––– 素敵だよ」

「はっ、俺は惚れた腫れたに豆粒ほどの興味なんざないが、中々にいい面構えだ。それに、王魏との話を聞いた限り、そいつの敵は俺たちと同じ魔教みたいじゃねぇか。覚悟しとけよガキ」

 王鳳は一度小さくため息をつくと、残る王魏へと視線を向ける。

「蒙白(モウバイ)の口の悪さはどうにかならないものか。それで、王魏はどう思った?」

「私には聞くまでもないでしょう。とても素敵だと思いますよ。是非ともお力をお貸しししてあげたいと思います」

 そして王鳳は正面へと向き直り、俺たちの視線は重なる。

「それでは貴殿に命を下す。この場にいる5名の皇帝が課す試練に打ち勝つのだ。初めは仙善(センゼン)、次に麗春(リーチュン)、王魏、蒙白とこなしていき、最後にこの王鳳の下まで来い。そうして全ての試練を終えられたならば、貴殿は神の足元に辿り着いているだろう」

 最後のセリフはよく分からなかったけど、俺はここから、自分でも想像できないほどの力を手に入れられる予感がする。

「最初はわしか。よし、来るがいい小童!」

 息を呑み、俺は一段一段階段を上がっていく。

 近づくほどに細胞を刺激する威圧感が全身を包み込む。

 一体ここにいる人たちは、どれほど強かったのだろうか。

 そんなことを考えていると、建物の奥底に見える空間が白く濁った膜を張って発光し始める。

「さぁ行くぞ」

 俺は導かれるままに歩みを進めていく。

 そして膜に指先が触れた直後、意識は現実へと引き戻されるのだった。


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