68話 不気味な医師
「はっ––––––––––––」
真っ白な天井。
横に並ぶ複数のパイプベッド。
心配そうに俺を見つめるメラ。
「・・・・・メラ。ここは?」
ゆっくりと上半身を起こしてもう一度辺りを見回すと、白衣を着た医師らしき人物が視界に入る。
「医務室。流––––––神威が倒れた直後、警備の人たちが来て運んでくれたの」
故宮博物院の警備はかなりしっかりしているみたいだな。
警備の人が俺を運んでくれなかったら、メラ1人だけに大変な思いをさせるとこだったと反省する。
「目が覚めたわね。答えずらかったら答えなくてもいいのだけど、何か持病を持っているの?」
「持病ですか・・・?」
「ええ。私は医者じゃないから正確なことは分からないわ。だけど貴方の症状は熱中症というわけでも、貧血というわけでもない」
先生の瞳は、俺を心配しているというよりも原因が分からない謎に興味津々な様子。
お世話になって悪いとは思うけど、こういう人とはできるだけ関わらない方が身のため。
「疲れが溜まってたのかも知れないです。もう大丈夫なので・・・ありがとうございました」
「–––––– 待ちなさい」
根拠もなく心臓が高鳴る。
長い黒髪の隙間から見える無駄に見開かれた瞳。
乾燥した唇。
どこか震える声。
俺と同様にメラも緊張した様子なのを見ると、俺が起きるまでの間、メラがどんな気持ちだったのかは容易に想像できる。
「そういえば貴方たち見ない顔よね––––––––––––どこの国の人?」
まさか・・・・・俺たちを日本人だと見抜いて揺さぶっているのか?
いや、この人から特に警戒すべき魔力はそこまで感じないし、敵意も殺意も感じられない。
第一、数年前に日本人が天魔の力を宿してこの場所に現れたからって、俺たちとは何の関係もないじゃないか。
そう叫びたい気持ちは山々だけど、運転手の話を聞く限り、故宮博物院周辺では日本人=良くないイメージが定着してしまってるらしい。
徐々に近づく見開かれた瞳。
そうして俺の頬に吐息がかかる位置まで先生の顔が近づいた時、唇が再びゆっくりと動かされる。
「––––––––––––カッコいいわ〜」
「え?––––––––––––」
俺はその場でしばらく停止することになる。
今、何が起きたんだ?
カッコいい?
え・・・・・? どういうこと?
「いつでも来ていいわよ」
俺は一生、目の前の女性の頬が淡いピンクに染められた景色を忘れることはないだろう–––––––––––– もちろん、悪い意味で。
そうして俺たちは無事に医務室を後にし、他の観光客に紛れて歩みを進めていく。
「鼻の下伸びてるよ」
どこか浮かない声色のメラ。
「バカ言うなよ。先生には悪いけど、あんなのトラウマになるわ」
「フッ、冗談。正直私も鳥肌立ったし、それに・・・・・」
「それに?」
「うんん。何でもない」
「そうか」
おっと、忘れるところだった。
「ステータス」
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』
体力:14830
武力:15326
防御力:12044
敏捷:15078
技術:14283
運:15111
魔力:11098
『メモリーツリー:25%「300000P」』】
「やっぱり『回復の素』はまだスキルじゃないってことか」
とりあえず、今あるポイントで次の記憶までは足りるはずだから球体を解放していくか。
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』
体力:15632
武力:15326
防御力:12846
敏捷:15103
技術:14283
運:15340
魔力:13135
『メモリーツリー:25%「32P」』】
「あのさ、あとどのくらいここでの記憶は解放しなくちゃいけないの?」
「俺にもはっきりとは分からないな」
記憶が閉じる時の感覚・・・・・もしかしたら後数回は覚悟しといた方がいいかも知れない。
「あまり目立つのは避けたいところだけど・・・・・」
「気を失うのはどうしようもないからね。まぁ、私が責任持って守ってあげるから安心して強くなってきて」
「ありがとう」
次なる『剣聖の記憶』は目前だ。




