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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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68/103

68話 王魏(ワンウェイ)

 クッ・・・・・全身に焼けるような激痛が走り続ける。

 周囲は現代よりも色鮮やかな建物に囲われ、目前には矛と盾を構える数多くの兵士の姿が見える。

「妙を、返せ・・・・・」

 口が勝手に動かされる。

 そしてよく見ると、血の滲んだ包帯が雑にお腹周りへと巻かれている。

 この状況から推測できることは、剣聖=凪星はあの危機的状況から自力で生き延びて中国まで渡航しただろうこと。

 もしかしたら『絶歩』を習得していてもおかしくないけど、並大抵の精神力じゃ成せない。

「無礼だぞ貴様ぁ! この場をどこだと心得る! 天帝様に認められし方々が在らせられる神聖な場であるぞぉー!!」

 鬼気迫る兵士の迫力。

 だけど凪星は微動だにしない。

「お前たちが、妙を傷つけてたんだ・・・・・僕は彼女を傷つける存在は絶対に許さない!」

「なんなんだ、こいつは・・・・・」

 凪星の異様な殺気立った迫力に気圧される兵士たち。

「何事ですか?」

 殺気立つ空間に差す光のような軽やかな声色。

「王魏(ワンウェイ)様・・・・・・」

 妙が着こなしていた華やかな衣装とは異なり、純白を模した色気のない素朴な衣装に身を包んだ女性。

 上半身はスタイルがよく分かる造りとなっており、下半身はスカートのようなスタイルとなっている。

 透き通るほどの白い肌に、消えてしまいそうな空色の長髪。

 スッと伸びた鼻筋にシュッとした目つき。

 一般的な美人の枠組みには当てはまらなくも、とても魅力的な中華の美人。

「貴方様は––––––ひょっとして「和(わ)」のお方でしょうか?」

 敵意剥き出しの凪星を前に一歩も引かないどころか、優しい笑みを向けてくる。

 その笑みに殺意は溶かされると同時に、徐々に意識は遠のいていく。

 



「うぅ・・・・・」

 目覚めて一番初めに視界に入って来たのは、薄暗い部屋の中央に横たわる俺の側に座り込んださっきの女性。

「お目覚めですか。良薬口に苦しですが、どうぞ」

 俺は薬を勧められるがままに一気に飲み干した。

 表情を引き攣らせるほどの不味さ。

 味覚まで鮮明に再現されている点は、良いのか悪いのか・・・・・

「ふふっ」

 そんな俺=凪星の態度を見るや否や笑みを浮かべる女性。

「それにしてもです。そんなお身体でよく動けたものですね。とっくに命を落としてしまってもおかしくはないほどの怪我だというのに」

「死ぬわけにはいかない・・・・・妙を救うまでは絶対に死ねないんだよ」

「妙・・・・・どこか聞き覚えのある響きです」

 そう言って首を傾げると、何かを思い出したかのように目を少しばかり見開いた。

「そうです。剣王のご子息と婚約されるというお話を耳にしました。私も素敵な殿方に出会いたいものです」

 締め切られた扉に視線を向けながら本音を漏らす。

「違うんだ!」

「何がです?」

「結婚は妙の意思じゃない。天魔と呼ばれた男がいきなり妙を連れ去ったんだ・・・・・」

 振り返った女性は凪星の体をじっくり見つめると、何を思ったのか再び薄らとした笑みを浮かべる。

「彼女のことを愛しているのですね。素敵なことです」

「えっ・・・いやっそんなんじゃ––––––––––––」

「ですが、天魔に挑むことは愚かだったとしか言えません」

「あんたに何が分かるんだよ」

「王魏と呼んでください」

「・・・・・・王魏に何が分かるんだ・・・僕といる時の妙は幸せそうだった・・・・・あそこで見捨てることは、僕にはできなかった」

「––––––––––––素敵な想いです」

 そう言うと、王魏は突然、凪星の手を握りしめる。

「––––––––––––!?」

「一ついいことを教えてあげましょう。ここは中国の北––––––貴方が求めている妙がいるのは南の地です。正確にはここからだと南西方向ですが」

「じゃあ、王魏たちは妙とは何にも関係ないってこと・・・?」

「そうですね。存じ上げる程度で、直接話したこともありません。ですから、私は敵ではありません。そして、貴方も想い人のために力を行使できる素敵な殿方––––––敵にはなり得ません」

 淀みのない王魏の笑顔に、心なしか心の辛さと体の痛みが和らいでいく気がする。

「これはお近づきの示しです」

 すると、一瞬にして全身の痛みが消えてしまった。

「何を、したの?」

「気にするほどのことではないですよ」

 そう言って微笑む王魏の姿は、とても可愛く、魅力的に見えた。

「さて、それではみなさんに挨拶と参りましょう」

「挨拶?」

「行かれるつもりなのでしょう? でしたら、今のままでは無駄死にしてしまうだけです。焦る気持ちは理解しますが、魔教と争うおつもりなら力になれるかも知れません」

 そうしていくつもの建物を抜けた先、5つの巨大な建物が見えてきた。

 そこは故宮博物院の案内地図では、確か太和殿(たいわでん)が記されていた場所。

 この時代には、こんなにも大きな建物が5つも存在していたのか。

 俺たちはその内の1つ–––––– 正面の建物に繋がる長い階段の始まりに足を掛けようとした途端、記憶の再生は終了した。

 



 <王魏より学びし『回復の素』を獲得–––––––––––– 記憶を進めることでスキル『万能完治』へと進化が可能>

 

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