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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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59話 竜人(ドラゴンフォーム)

 レオナの発した言葉の音がカンバルの耳に届いた時には、レオナの拳が目と鼻の先にまで迫り来ていた。

「––––––––––––ッ!?」

 眉をピクリと動かし、一瞬の動揺を見せるカンバル。

 直後、レオナの拳が顔面へとめり込んだ。

 しかしその場から一歩たりとも動くことなく顔のみを右へと逸らして威力を受け流す。

「やはりこの程度では効かないか」

 不適な笑みを浮かべるレオナ。

 自身の全力をぶつけさせてくれる強者に出会えたことが嬉しくて仕方がない。

「どういうこと・・・・・」

 ボソリと呟かれた言葉をレオナは聞き逃さない。

「そのセリフ––––––––––––どうやら貴様の攻撃も魔力によるものだということか」

「何が言いたいの?」

「私が竜人と化した時、一切の魔力を遮断するのだ。つまり、魔力を有した攻撃は効かん!!」

 鬼気迫る表情でカンバルへと猛攻を振るうレオナ。

 全ての攻撃が決定打になり得ないものの、先ほどとは打って変わりカンバルは動揺も相まって防戦一方。

 赤と黒––––––––––––2種類の炎が空間ごと2人の姿を埋めていく。

「ほら、どうしたどうしたどうしたぁ!! そんなものかぁ! 魔力がなければ貴様はその程度なのかぁ!」

「・・・・・・はぁ、うるさいなぁ––––––––––––」

 視界一帯が炎で覆われる中、突如カンバルとレオナを中心として2色の炎が内側から弾け飛ぶ。

 炎が決して止んだ訳ではない。

 先ほどまで全体を埋め尽くしていた炎は外側へと広がり、2者の姿が明らかとなっている。

「あんたに使えないなら、自分に使えばいいだけだよ」

 どこか不貞腐れた口調のカンバル。

 次の瞬間、再び2色の炎入り混じる目にも止まらぬ攻防戦が繰り広げられる。

 いや、互いが互いに引くことのない「攻」にのみ意識を置いた荒れ狂う激闘。

 ダンジョンは次第に悲鳴を上げ始め、天井から崩壊を始める。

「ここまでか・・・・・」

 悔しそうに呟くレオナ。

 しかし、戦いにばかり意識を向けていられないことは理解している。

 このまま続ければ外にいる仲間を巻き込むことになってしまう。

 ここは時間内に仕留めきれなかった己の未熟さをしかと刻み、撤退を決意する。

 問題は、相手が引いてくれるかどうか––––––––––––

「そうだね。今日は引くよ。だけどもしまた僕たちに危害を加えようとすれば殺すから」

「フッ、モンスターが仲間を語るか。それに、まともな会話もできるじゃないか」

「そっちが人の話を聞かないだけでしょ」

 そう言い残すと、カンバルは煙のように一瞬で姿を消してしまった。

 

 レオナは強引に天井を突き抜け、外へと脱出する。

「ふぅ〜・・・・・」

 どっとため息を吐いて『竜人(ドラゴンフォーム)』を解除すると、その場に倒れ込む。

「危ないところだったな」

 「最強生物」と謳われるレオナよりも強い存在など、『神託者』を含めても片手に収まる程度。

 レオナは魔力無効化というチート能力に救われたが、能力ありの闘いでは手も足も出なかったのが現状。

「一先ず合流するとしよう」

 起き上がり崖下へと視線を向けた瞬間、海岸付近に広がる残酷な光景に顔を歪めるのだった。

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