60話 数百年の時を経て
海底洞窟に姿を現したカンバル。
「この時代にも、あんなに強い人間がいるなんてね・・・・・」
カンバルは始め、レオナを見縊っていた。
所詮は魔力も自由に操ることのできない人間だと。
しかし、レオナとの一戦はかつての死闘を思い起こさせるものであり、人類への恐怖を再発させるトリガーとなった。
この時代にも『勇者』に匹敵する存在がいるのではないのか、と。
しかし、カンバルは恐怖で逃げたのではない。
すべきことのために、むしろ自らの怒りを呑み込んだのだ。
大切なのは、「仲間を顕現させること」。
目先の殺意に目が眩んで貴重な魔力を無駄にしてしまうことだけは避けなければならない。
全ては、幸せになるために––––––––––––。
「予定よりも時間が掛かっちゃったけど、君たちも日の目を見る時間だよ」
無愛想な雰囲気を纏いつつも、口元には若干の笑みが浮かべられていた。
そうしてなんてことない海底洞窟の一部へと、今ある全ての魔力をありったけ注いでいく。
次第に、魔力を注ぐ洞窟の一部に白く発光する八面体の核が生成されていき、洞窟内に核を中心として濃い魔力が充満していく。
洞窟内の地形はみるみる変化していき、数多くの多様なモンスターたちが出現。
カンバルの背後には、6本の腕を左右に生やした巨大なボスモンスターが姿を見せる。
しかし、ダンジョン生成完了間近になっても誰一人として仲間の存在が確認できない。
ダンジョンには貯めておける魔力総量というモノが存在し、超過分がダンジョンバーストとなったりするのだが、今回の場合、ダンジョン生成後に超過したカンバルの魔力はダンジョンを破壊してしまうこととなる。
カンバルもそれを本能で悟っているために徐々に焦りの様子が見えてくる。
「嘘だ・・・・・このままじゃ魔力が無駄になっちゃうよ」
焦りと怒りが入り混じる中、一筋の願いが届いたのか、核の光が半分ほど収まった段階で遂にその時は訪れる。
核の中央から現れた鋭利かつ歪に折り曲がった白と黒の2つの角。
「僕は信じてたよ。きっと目覚めてくれることを」
心からの嬉しさを含ませた弾む声色。
しかし、角から下がなかなか姿を見せない。
その間に核の光は止んでしまい、完全に顕現の動きは停止する。
「は?––––––––––––何で・・・・・どうしてだよ!!」
冷静さなど微塵も感じられないカンバルの叫び。
「後少しじゃないか・・・・・・カモナエル––––––––––––僕だよ。もう一度君と、君たちと、平和な国を作っていきたいんだ・・・・・だから––––––––––––」
直後、核から顔を出す角が白銀のオーラを纏うと同時にダンジョンは緩やかに振動を始めると、徐々にその大きさは増していくのだった。




