54話 厄災の予兆
レイド祭も3日目を迎えた頃、不安要素は目に見えて大きさを増していっていた。
早朝。
北海道を担当をしていた丈一郎は、関東地方のグループを担当しているアモンと通話を繋げていた。
『おはようございます』
「おう。そんで、今の状況はどんな感じだ?」
『本部によると、新たに39個の未登録ダンジョンの存在が確認できたとのことです』
丈一郎は、その異常性に眉をひそませる。
「一体全体どうなってんのやら。状況をまとめた資料を俺のスマホに送ってくれ」
「承知いたしました」
現在、アモンを関東に配置しているのは、魔塔連との連携の取りやすさを考慮してのもの。
丈一郎は、魔塔連のトップであるため、最終の意思決定のみをする立場にある。
会議においても、参加をするというだけで、最中に口を出すことはほとんどない。
会議の最後にすべての決定を下す立場にある。
一方のアモンは、ハンター適性試験においては丈一郎よりも強い決定権を有しており、その他魔塔連のすべてのシステムの指揮を取る最上位の地位にあたる。
つまり、塔主である丈一郎が不在の時はアモンは最上位の現場の指揮権と、魔塔連が管理するすべての要素における絶対的決定権を委ねられることとなる。
更に、塔主と副魔塔主が不在となる今、決定権の移行は生じず、格部署の責任者たちが現場のすべての指揮権を任されることとなる。
「厄介だな」
アモンから送られてきた新たに発生した未登録ダンジョンの分布を示した図。
それを見た丈一郎は、今回攻略対象となる未登録ダンジョンと、その最中で発生した未登録ダンジョンに規則性がないことを感じ取る。
『はい。この約10日ほどで新たに発生したダンジョン数は139。我々の感知し得ないところで何か恐ろしいことが動き出しているようにしか思えません』
「お前もそう思うか」
『はい』
「発生する直前まで、地表や地中、あるいは大気圏に何か異常が見らる訳でもないんだよな?」
『はい。もしそうなら、魔塔連にその情報が入ってこないのは不自然ですので』
「だよな・・・・・」
今までならば、1ヶ月に新たなダンジョンは多くても2つ3つほどしか誕生していなかったのに対し、今はその100倍から150倍ほどのペースで進行してしまっている状態。
にも関わらず、その原因が全くもって掴めていないのが現状。このままいけば、ダンジョンバーストどころの騒ぎでは済まなくなる。
このまま指数関数的にダンジョン数が上昇していった場合、『神託者』であったとしてもすべての処理は間に合わなくなってしまう。
「5年前とは比較にならねぇパンデモニウムが起きかねねぇな」
電話の先、アモンが喉を鳴らす音が丈一郎の耳に届く。
5年前のパンデモニウム––––––––––––それは、過去類を見ない死者数を出した最悪の厄災。
大規模ダンジョンバーストとも言われるそれは、複数のダンジョンが同時多発的にダンジョンバーストを引き起こしてしまった事象。
あのような悲劇は二度と引き起こさせないと丈一郎は胸に誓った。
「一先ず、予定に組み込まれてない未登録ダンジョンは、予定を消化した後に俺たちS級ハンターで処理することにする」
『承知しました』
「このことを本部に伝えて、そっからS級全員に拡散するよう伝えてくれ。それと、絶対に危険だと思ったら引けとも伝えておけ」
現在発生しているダンジョンは、事前調査など何もしていない未知そのもの。
いくらS級ハンターといえど、運が悪ければ命を落としてしまう可能性は十分にあり得る。
『はい––––––––––––塔主様・・・・・』
アモンの動揺を含んだ声が電話先から響く。
「どうした?」
『今、本部から連絡が入り、沖縄にて新たなダンジョンが確認されたそうです』
「場所は?」
『・・・・・・「青の洞窟」とのことです』
「チッ、この時間だと被害は免れねぇか・・・・・確か沖縄担当はレオナだったな––––––––––––フッ」
丈一郎はほっとしてしまった自分に笑みをこぼす。
『どうされました?』
「いや、あいつには俺から伝えとく。お前は、魔塔連への報告を頼んだぜ」
「はい。では––––––––––––」
通話は切れ、丈一郎は神妙な面持ちでレオナへと電話をかけるのだった。




