53話 密かなる脅威
海水が青く輝く海岸に存在している巨大な洞窟。
ここは元々、それほど大きな規模ではなく、観光スポットとして非常に人気溢れる場所の1つ。
現在は魔力が充満し、ダンジョン化してしまっている。
洞窟の奥深く、海水が届かなくも青い鉱石が周囲を照らす幻想的な景色が広がっている。
そこに、何者かの姿があった。
1人は見下ろし、もう1人は跪き頭を垂れている。
「––––––––––––こうしてまたお会いできたこと、誠に嬉しく思いますじゃ」
「僕もだよ」
「カンバル様がお目覚めになられているということは、もしや「マオウ」様も?」
「そっか、目覚めたばかりだし主人の結末を知らないよね」
「おっしゃる通りですじゃ」
「まだ知らなくても大丈夫だよ。とりあえず、僕の中で眠っていてくれるかな?」
「喜んで––––––––––––」
すると、跪いていた人影はあっという間にもう1人の体内へと吸収されてしまった。
「これで140体目––––––––––––魔力も大分回復してきたし、そろそろアラフルとカモナエルの2人も復活させてあげられるかな」
男の嬉しそうな声が洞窟内に静かに響き渡る。
「もう一度、僕たちだけの幸せな王国を築けるかな?––––––––––––主人」
男は切に願っていた。
できることならば、争いなどは一切ない、身近な存在全てが笑顔で幸せになれる生活をもう一度送ることを。
死んだはずのこの命は、気がつけば見知らぬ土地に誕生していた。
自身と仲間の幸せを純粋に願うその想いが、人類にとって脅威となっていることなど、本人はまだ知らない。




