52話 実力の証明
「この石川岳にある未登録ダンジョンを、俺が単独攻略して見せます」
事故のようなものだが、率いていく立場になっていまった以上、不満を消すには実力で黙らせるのが一番効果的。
案の定、場がピタリと静まり返る。
今回レイド祭で設けられている未登録ダンジョンは、安全面を第一に考慮されているとはいえ、何が起きてもおかしくはない。
ましてや、ここにいる全員が初めてのダンジョン。それの単独攻略宣言など、異常としか言いようがない。
みんなが気まずそうな表情を浮かべる中、隣に立つレオナさんは終始楽しげな笑みを浮かべている。
「あの––––––––––––」
俺はふと疑問に思う。
相手からすれば、今の俺は初対面のはず。
それなのに、最初から俺に目をつけていたような違和感。
「何だ?」
「もしかして–––––-気付いてます?」
息を呑み、返答を待つ。
システムによると、俺の中に剣聖の力が存在していることを彼女は知っていることになっている。
それならレオナさんに対しては正体を隠す必要はない。
あれから転職ミッションの数値が変動していないとこを見ると、俺のことは誰にも話していない様子だし。
まぁ、話していて信じてもらえてない可能性も捨てきれないけど。
「何のことだ?」
特に過敏な反応を見せることなく、冷静な態度でそう答える。
俺の考えすぎか・・・・・
「––––––––––––安心しろ。貴様のことは誰にも話してはいない。それに今回は、近くで貴様の力をもう一度みたい欲が抑えられなかっただけのことだ」
気を抜いた瞬間、あっさりと白状した。
レオナさんの方へと視線を向けるも、何て反応すればいいのか困っていると、「やれるもんならやってみろよ!」という少々・・・・・というかかなり怒りの籠った男性の声が響き渡る。
「貴様ならば、この程度のダンジョン、目を閉じていても攻略できるだろう」
「回被りすぎですよ」
「謙虚だな」
そう言うと、レオナさんは一歩前へ出る。
「では、宣言通りダンジョンを攻略してもらうとしよう」
そうして俺とレオナさんを先頭に大移動が開始された。
到着したのは、なんてことない周囲が緑に囲われた開けた森の中。
目の前には、灰色の石でできている高さ2メートルほどの扉が2つ存在している。つまり、両サイドの扉を外側へと開くタイプ。
木の根やつるが絡まり、古びた様相を醸し出している。所謂、『古代遺跡』のようなモノだろう。
そして、扉がそこに存在しているだけで、内部は地中に埋まってしまっているため、規模の想定が掴めない。
「事前調査によると、内部の構造は単純で、道のりに沿っていけば迷うことはまずない。大きさも大したことはない」
いつまでも外観を観察している訳にもいかないな。
後に控える総勢1500名以上の視線が俺1人へと集中している。
「フッ」
「なぜ笑う?」
「いや、少しだけ昔のことを思い出してしまって」
まぁ、昔ってほど前のことじゃないけど。
あの時とは状況がまるで違うけど、この人を見下す時に漂う独特の空気感。
今俺は、勢い余って無茶なことを言ってしまった愚かな奴とでも見られてるんだろう。
当然本気を出すつもりなんて毛頭ない。
イメージするのは、山ごと断ち切ることではなく、ダンジョンの魔力を深く感じ取って、その規模に剣戟を届かせること。
扉に手のひらを添え、目を閉じて意識を深く集中させていく。
一体何をやっているのか、みんなは理解できなくても、貴方なら理解してくれてますよね?
「見えた」
ボソッと無意識の呟きを終えると、俺は腰に携えていたレイド用のなんてことない剣を抜刀する。
軽く刀身に白魔気を纏わせ、滑らかに水平な剣戟を放つ。
直後、切られたことに遅れて気がついた扉が鈍い音を立てて地面へと倒れるのとほぼ同時に、ダンジョンの奥から「ドンッ」という地響きが鳴る。
「核を破壊してきます」
「ああ」
さて、帰ってきた時、みんながどんな表情をしているのかが楽しみだ。
俺は、今の一撃で刈り取れなかったモンスター少数を処理していき、合計103200pを手に入れた。
「帰ってきたな」
始めに視界が捉えたのはレオナさんの笑顔。
続いて、言葉を失ったハンターたちの姿が見えてきた。
「見ての通りだ。この男の実力は、他でもない私が保証しよう。皆、大船に乗ったつもりで着いていくといい」
なぜか自慢げなレオナさん。
あの時の俺は彼女に手も足も出なかったが、所謂、認めてくれているのだろうか。
「その・・・・・レオナ様は、彼の実力をご存知だったのですか?」
「無論だ」
徐々に俺へと向けられる軽蔑の視線が減っていく。
そしてゆっくりと、ダンジョンは頭上に存在している土に押し潰されていく。
その様子を目の当たりにしたハンターたちの表情には、所々笑顔が見受けられるようになる。
嫉妬や嫌悪といった俺を蔑むようなマイナスの感情ではなく、歴とした1人のハンターとして認められたような視線。
次の瞬間、それを証明するかのように大勢が歓声を上げ始める。
このレイド祭が終わる頃には、俺も誰かの憧れる存在になっているんだろうか。
そうであって欲しいと、1人静かに思う。
それ以降のレイド祭は順調も順調。
最初以降はレオナさんの指示なく、みんなの方から俺へと指示を仰ぐようになってきていた。
もちろん、全員が俺をリーダーとすることを納得した訳じゃないと思うが、それでもB級ハンターは言うまでもなく、A級ハンターもその半数以上が認めてくれたことでグループの流れは俺にとってやりやすいモノとなっている。
初日に予定されていたダンジョンは、石川岳のみだったが、実際に攻略したのは2つ。
石川岳に加え、宮古島の海底に存在するダンジョンも攻略した。
沖縄で残すダンジョンは2つ。
那覇に存在している守礼門と瑞泉門。
この2つはどちらも首里城手前に建てられている観光スポットの1つだが、現在は周辺部分が『国会議事堂』のように結界に覆われたダンジョンとなっているため、一般人は立ち入り禁止とされている。
事前調査の情報によると、発生から数日が経過しただけで結界の規模が徐々に大きくなっているとのことで、このままいけば首里城を含めた広範囲が巨大なダンジョンとなりかねないとのこと。
早急な攻略が求められるダンジョンの1つだが、今日のところは透き通る綺麗な海を一望できる贅沢なホテルで休むとしよう。




