51話 レイド祭開幕!
翌日。
遂にレイド祭決行日。
レイド祭では最初の段階で16グループが存在しており、それぞれのグループにS級ハンターが1人同行することとなる。
現在の日本国内では計16人のS級ハンターが存在し、内2人は『神託者』である。
ギルド所属者・無所属者など問わずに総勢1万を超えるハンターたちが集結し、すべてのグループの戦力が均等になるように調整されていたのだが、夜神 レオナの前日の移動により、一部編成に変更が生じていた。
しかし特に問題が起きることなく正午を過ぎた午後1時。
皆指定されたエリアへと集合していた。
今回攻略するダンジョンは126個存在し、登録されているダンジョンも中にはあるが、未登録ダンジョン数が圧倒的に多い。しかし、千葉の時のような不祥事を未然に防ぐため、魔塔連が総動員で念入りな事前調査を行なっている。
レイド祭は一週間実施される予定であり、指定された区画のダンジョン全てを攻略してしまったグループは、近くのグループと合併していく仕組みとなる。
予め、北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州&沖縄地方に区分分けされており、1つの地方に対して2グループ配置された状態で開始される。九州・沖縄地方に関しては、1グループがまず初めに沖縄単体を担当し、攻略次第九州地方を2グループで担当する流れとなる。
また、レイド祭におけるS級ハンターはリーダーとしての立ち位置ではなく、引率・監督役となり、ダンジョンの攻略を優先しつつも、ハンター全体の教育が重要視されている。
そのため、基本的にはS級ハンターの指示なく、一週間を過ごすこととなる。
中にはE級やF級といった荷物持ちが存在するため、S級ハンターはより視野を広く持てる点が今回のレイド祭ではメリットとなる。
10月初めの沖縄の平均気温は26℃前後。
だけど今日は雲一つない快晴の日。
外気温は30℃を超えている。
日差しが強く、立っているだけで汗をかいてしまう熱さ。
そして今、俺たちの周りだけは更に熱気漂う空間と化している。
「いいかお前たち。私たちの目的はダンジョンを攻略して誰1人欠けることなく無事に一週間を終えることだ! そんな時に輪を乱すような行動をする愚か者はまさかいないだろう。万が一にもいた時は、私の目が常に光っているから覚悟しておくことだ!」
相変わらず熱い人だな。
今回この1500人ものハンターがいるグループを指揮するのはS級ハンターじゃないけど、もうみんながレオナさんの雰囲気に呑まれてしまってる。
それにしても、突然このグループをレオナさんが担当することになったのは何か理由があってのことだよな。
だとしても、ほぼ当日の変更が許されるのは、魔塔連のトップである最門さんの許可あってのこと。それほどの理由とはいったい何か?
そんなことを考えていると、ふと背後から元気な声が俺を呼ぶ。
「おーい! 神威!」
特徴的な声の主。
振り向かなくても誰か分かる。
まさか同じグループだなんてな。
「久しぶり」
「まさか初っ端から同じグループになれるなんて燃えるなぁ!」
愛久は背中に大きなリュックサックを背負っている。
それは、まさしく荷物持ちを意味している。
俺は聞くのを躊躇ってしまった。
表情に出ていたのか、俺の顔を見た愛久は一度小さな笑みを浮かべる。
「いやぁ〜、まさかE級だなんて思わなかったけどよ、俺は絶対ハンターとして生きてくことを諦めないからな!」
ここで俺が愛久の結果について考えすぎるのは失礼だな。
「ああ。ハンターには、愛久みたいな屈しない強い心が必要だ。諦めるなよ」
「もちろんだ!」
俺の差し出した拳に愛久の拳が重なる。
「ところで、神威は何級だったんだ?」
今の話の後だと言いづらいが––––––––––––
「A級だった」
「うおぉぉぉ!! マジか、スッゲェじゃんかよ!」
まるで自分のことのように喜んでくれる愛久。
俺は心から愛久と友達になれたことを嬉しく思う。
「ほぉ、私の話を聞かないとはいい度胸だな」
突如、背後から声がすると、全身に鳥肌が立つ。
さっきからちらほらと俺たちに向けられている視線には気がついていた。
だけど、愛久の声のデカさが周囲の意識を惹きつけているとばかり・・・・・実際は、危険を知らせるアラートだったのか。
俺は恐る恐る振り返る。
視線が合うと、レオナさんは不適な笑みを浮かべた。
「ほぉ、なかなかに男前だな。そっちのは、荷物持ちのチビスケか」
「誰がチビですかぁ!」
「何だ?」
「––––––––––––」
愛久だけではない。俺を含めた周囲の空気が一瞬にして凍りつく。
「貴様は確か、佐々木 神威と言ったか。気配からしてかなりの実力者だな」
「はい・・・・・先日、A級ハンターになりました」
「ほぉ––––––A級、か」
何やら、内側を見透かすような笑みが心臓を高鳴らせる。
「なるほど、文句はないな」
そう言うと、レオナさんは俺の方へと手を回す。
俺はその大胆な行動と、今にも服からはみ出してしまいそうな大きなお胸の感触に衝撃を受ける。
「今から神威がこのグループのリーダーだ。異論のある者は名乗り出ろ!」
「はいぃ!?」
「何だ? 文句でもあるのか?」
いや、ない方がむしろおかしいと思うんだけど・・・・・
佐々木 神威の姿でいる時は八尺 流星だとバレる心配はほぼ100%ない。だけど、あまりにも周囲の視線が痛い。
当然俺に対して向けられる同情の視線もあるにはあるが、A級ハンターともなると、みんながみんなかなりのプライドを持っている。
初めて見るハンターが自分達を指揮する立場に選任されるのは決していい気はしないだろう。
「文句は、ないようだな」
近くにいるだけで息を呑んでしまうほどの威圧感。
今の俺じゃ、この人に逆らう力はない。ましてや逆らったところで、自分の意見を曲げるような人じゃないだろう。
「分かりました。精一杯頑張ってみます」
「そう来なくてはな。もちろん、貴様だけに任せはしない。レイド祭の間はこの私を貴様の部下だと思い、手取り足取り好きに使え」
この人は本気で言ってるんだろうけど、そんなこと恐ろしすぎてとてもじゃないができない。
けれど、支えてくれるって意味ではかなりの心強さだ。
「行くぞ」
俺はレオナさんに腕を引かれ、ハンターたちの先頭に躍り出る。
未だこの場にいる多くのハンターたちが状況を理解できておらず、俺がレオナさんの隣に立つ姿に疑念の視線を向けてくる者が多数。
「今日からの一週間、ここにいる佐々木 神威が貴様らを束ねる主幹となる」
ざわつく目前の光景。
俺へと飛ばされる野次の数々が重なり合い、結果的に何を言っているのか聞き取れない。
「知っての通り、私は貴様らを監督する立場にあり、この場おいての佐々木 神威は私よりも上の立場であると認識しろ!」
ただでさえイライラを募らせているハンターたちへとお構いなしにドブドブ油を注いでいく。
今すぐ後方に逃げてしまいたい気持ちをグッと押え、俺は口を開く。
「それなら!」
こうなったらもう逃げられない。なら、この状況に真正面から向き合うしかない。




