55話 芽吹く思い
「あのさ、目的を達成した後のこと考えてる?」
「メラが言いたいことは理解してる。けど、とてもじゃないけどあの場でレオナさんに逆らうことはできなかった」
メラは呆れた様子でため息をつく。
「そんなに強かったんだ」
「それはもう、手も足も出なかったよ」
「『神託者』が他のS級とは別格なのは知ってるけど、そんなになんだ」
流星も現状が悪いことは理解している。
すでに多くの者の記憶に強く「佐々木 神威」の記憶が刻み込まれてしまったことで、転職ミッションをクリアした後の問題がより濃く浮上してしまった。
つまり、現在は別人に成り切っていることで八尺 流星だとバレる心配はほぼないものの、後に犯罪を犯していた事実が明るみに出てしまう可能性が高くなってしまったということ。
その責任は流星だけでなく、メラにものしかかり、加えてメラは過去の犯罪歴までも刑罰に処されることとなる。
「そういうことなら、私もレイド祭に同行すべきだったよ」
現在流星たちがいるのは、港区六本木のタワーマンション。
あれから必要な家具などを揃え、かなり快適空間となっている。
レイド祭の最中は、流星が『絶歩』を習得したことにより、早朝に自宅と沖縄を『絶歩』で行き来している状態となっている。
「いや、参加しなくてよかったよ。俺の事情でメラを危険な場所には連れてけないから」
流星のその一言に、メラは顔を多少赤らめる。
「・・・・・レイド祭に参加しなくてもさ、ホテルで待ってるとかできるでしょ」
「確かにそうだけど、泊まるホテルは毎回違うし、あまり負担をかけたくないんだ。それに、メラだって自宅の方が遠慮せず生活できるだろ?」
メラは、自分の気持ちを何一つ理解していない流星にイライラを募らせる。
「そうじゃなくて・・・・・むしろ心配っていうか」
「大丈夫だよ。レオナさんもついてるし、何よりも俺の強さを知ってるでしょ?」
「まぁ・・・・・」
そういうことではないのだ。
当然、流星の身の安全も心配しているのは事実だが、更に心配しているのは––––––––––––
「1つだけアドバイスさせて」
「うん」
「レイド祭の最中は、人と距離を置くことを意識したらいいと思うよ。今の流星はイケメンだから、特に女性には気をつけて欲しい・・・かな」
もう今更な気もするため、メラが送るアドバイスにしては違和感があるものの、一応納得はできる。
「そうだね。できるだけ意識しておくよ」
流星の言葉を聞いて、少しだけ安堵の表情を浮かべるメラ。
「それじゃあ、もうそろ集合の時間だから行ってくる」
「うん。気をつけて」
そうして流星は再び沖縄のホテルの自室へと『絶歩』で瞬間移動した。




