45話 モソ族の墓
あれから6日。俺は黒川 命と共同生活を送りながら十勝岳に存在する『剣聖の記憶』を全て解放した。
元々この場所に『剣聖の記憶』がどれほど存在しているかは知らなかったが、レイド祭までの時間をこの場で過ごすことができるくらいの数が存在していた。
記憶内時間にして3年。
剣聖がモソ族に出会ったのが11歳の頃であるため、14歳になるまでの記憶を解放したということ。その間、剣聖は妙とともに今俺たちが暮らしている地で生活を送り、次第に関係を深めていった。
まるで姉と弟のような関係性に。家族を失った妙の心の穴を、剣聖は埋める存在となった。
それでもこの地に3年もとどまったのは、妙の中に色濃く一族の存在が刻み込まれているからだろう。いい意味でも––––––悪い意味でも。
「もう帰る日なのだな」
命がどこか寂しそうな表情で呟く。
この約一週間は、剣聖たちと比べればほんの少しの時間だったが、仲良くなるには十分な時間だった。
日々互いの深い部分には触れることなく、たわいもない話で盛り上がる。
女性との会話に苦手意識を持っていた自分がどこへいったのか、命とは心から楽しめる時間を過ごすことができた。
「早いな・・・・・なんだか寂しくなるよ」
そう言うと、命も同じような気持ちだったらしく、嬉しそうな表情を見せる。
「そうだな。流星はいいやつだったし、何よりも私たちはとても気が合う。私はもう少しと言わずにいて欲しい気持ちはあるがな」
「そういうわけにもいかないんだ。俺にはやらなくちゃいけないことがあるから」
「そうか。ならば、帰る前に私の家族に会っていってくれないか?」
家族とは、一族の者たちのことだろう。
この地で見た『剣聖の記憶』には、白鬼によって命を奪われたモソ一族と先住民のみんなの亡骸を土へと還し、お墓を建てるシーンが存在した。
妙は毎日のように墓へとやって来ては、2、3時間ほどその場にとどまる習慣が身についていた。これまで常人には理解できない数多くの出会いと別れを経験してきた妙が背負う辛さは、剣聖にも、当然俺にも一生理解してあげることはできない。
一度帰る前に、顔を出して行こうと思っていた場所。
「断る理由なんてないよ」
「ただ一つ問題があってな」
「問題?」
「ついてきてくれば分かることだ」
そう言われ、俺は命の後についていく。
そこは、命の家が存在している広場の更に上。十勝岳のたくさんある山頂の内の一角。
岩を削って作った石板に刻まれた短な文字。それら一つ一つは、妙の家族と先住民たちの名。
石板に絡みつく木の根や草の様子から、時の差を感じる。だけどそれにしては、まだしっかりとみんなのお墓が残っていることに驚き。
「2、3週間前までは、私が毎日手入れをしていたのだがな・・・・・」
何千年と時が経った今も尚、妙改め命のあの頃の心の傷は過去に取り残されたままのようだ。
「不用意に近づいくことのないようにな」
「どういうこと?」
特に不安な気配は一切感じられない。
一体何をそんなに警戒しているのだろうか?
「この場所は2、3週間ほど前から突如ダンジョン化しているのだ」
「ダンジョン? それじゃあ、魔力の気配が全く感じられない理由は・・・・・」
俺は、『国会議事堂』ダンジョンを思い出す。
「結界・・・・・?」
「その通りだ」
だとしても、ダンジョンの結界自体を捉える術を魔塔連ならば有していても不思議ではない。
「私の仕業だ。元々あった結界へと私自身の力で生成した結界も施してある」
突然の告白に俺は耳を疑う。
「どうして?」
「失いたくないからだ・・・・・もうすでに亡くなっている者に向ける言葉ではないが、本心だ」
ダンジョンを攻略してしまえば、崩壊してしまうケースがある。自然環境主体の場合は攻略後に原型が残るか、残らないかは攻略してからでないと分からない。
事実、『富士山』は確証なく崩壊しない上で建築案を進行していたため、様々な意味で大赤字となった。
「私には少し人とは異なる力があってな、ダンジョンの出現と同時に結界など関係なく存在を悟ることができたのだ。故に踏み入れば何が起こるのか自体皆目検討が付かない」
命の気持ちは理解できる。
だけど俺的には、ステータスのポイントも底をついたし、ここらでポイントを手に入れたいところ。
後少しで『30%:感情』が解放できるところまで迫っている。
「ステータス」
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』
体力:12331
武力:14003
防御力:9135
敏捷:12517
技術:9122
運:10000
魔力:10032
『メモリーツリー:20%「6P」』】
どうにかお墓を残した状態で攻略できないものか・・・・・・
<結界内から解放の意思を観測––––––––––––怨念の消失を推奨>




