40話 気になる受験者
魔塔連塔主室。
「失礼します」
「もう試験は終わったのか?」
「はい」
「どうだ? 今回のハンター候補は随分と豊作だったみたいじゃねぇか」
多少の期待を込めてアモンへと視線を向けるが、神妙な面持ちで手に持った書類に視線を落とす様子に、丈一郎は一つため息を吐く。
「その様子じゃ、期待は出来なさそうだな」
丈一郎はアモンの目利きの力を何よりも信用しているため、ハンター適性試験の総監督を任せている。
つまり、アモンの判断が絶対であり間違いはないため、本来ならば再試験などする必要はない。
「いえ、優秀な人材はいたにはいたのですが・・・・・・」
歯切れの悪い言い方に、丈一郎は眉を顰める。
「んだよ」
「一度、こちらの資料をご覧ください」
そう言って差し出された資料には、本日ハンター適性試験を受けた1人の受験生の試験結果が記されていた。
受験者名:佐々木 神威
『ジョブ』:剣士
【魔力測定】S
【実技試験】A LL S
監督官コメント:パワー、スピード、身のこなし、技術。そのどれをとってもA級ハンターと比較しても遜色はなく、A級ハンターとの戦闘では引き分けたものの、明らかな手加減が見受けられた。
追記:本人はA級を希望するとのこと。
「何だよ、これ」
「見ての通りです。私の目で実際に見ての感想ですが、彼はS級に匹敵する実力の持ち主でした」
「手を抜いてても尚、お前の目にはそう見えたってことか」
「おっしゃる通りです。戦闘中、彼は一度も魔力を使用していませんでした」
「ほほぉう。こりゃまた臭うな」
丈一郎は何かを思いついたようなニンマリとした笑みを浮かべる。
「S級は、ハンターなら誰しもの憧れだ。希望するってことは、こいつは自分がS級並みの実力者だってことを知りながらそうしたってことだ」
「つまり、S級になりたくはない、更に言えば、目立つ行為を極力避けようとしているということでしょうか」
魔塔連としては、ダンジョンが異常な活性化を見せる今、新たなS級の誕生は歓迎以外の何者でもない。
「それに、これほどの実力者が急に現れたのがどう見ても不自然だよな」
つまり、これまでに少なからず佐々木 神威という人物の強さの片鱗が現れた場面が存在しているはず。
ここでアモンは、一つの可能性に辿り着く。
「『L』という人物をご存知でしょうか?」
「いや、初耳だな」
「実は、『国会議事堂』、『富士山』の2つのダンジョンを一刀両断で切り伏せた謎の人物が『ヘパイストス』内でそう呼ばれているのですが、ひょっとしたら彼こそがそうなのではないでしょうか?」
丈一郎もアメリカへ遠征していたとはいえ、2つのダンジョンの情報はしっかりと把握していた。
そして夜神 水たち同様に、この2つのダンジョンにつけられた剣戟は、同一人物によるものではないかと結論付けていた。
「––––––––––––八尺 流星の覚醒に、突発的なダンジョンの覚醒、そして突如現れた訳ありS級実力者か・・・・・いやぁ〜いくら何でも重なりすぎだろよ。これを偶然と呼ぶには流石に厳しいよな?」
「自分もそう思います」
「かと言って、どういう関係があんのかもさっぱりだ」
一気に押し寄せる情報量に、丈一郎は天を仰ぐ。
「フゥ〜・・・・・・まぁ、その2人のことはともかく、ダンジョンの方は見逃せなぇよな」
丈一郎がアモンへと軽く目配せすると、アモンは手元にあるタブレットを操作し始める。
「はい。レイド祭の応募者は着々と募ってきており、ダンジョン手配の方も問題ありません」
「よし、引き続き頼んだぜ」
「承知しました。それで、彼のことはどうしますか?」
「希望通りA級認定で問題ねぇよ。今はまだ、観察といこうじゃねぇか」
丈一郎はこの変化の兆しが、とてつもない何かが動き出す嵐の前触れに感じるのだった。




