39話 ハンター適性試験
ハンター適性試験は年中実施されており、時々豊作な時期がある。
しかし、S級ハンターが排出されるのはかなり稀。最後に日本でS級ハンターが認定されたのは神田 創真と東条 香が最後であり、5年も前の話。
そして今日、魔塔連に集まったハンター志望は総勢125名。
正しく超豊作。
しかし、この中からどれだけの人数がハンターの中でも実力者であるB級以上と認められるのかは分からない。
「うぉっほー、すげぇすげぇ! こんなにいっぱいのライバルがいるなんて燃えてくるぜぇ!」
「うるっさいわね。恥ずかしいから声のトーン落としなさいよ」
中でも早速注目を集める者たちが現れ始める。
「んだよ、宇子華〜。お前はこの景色見ても燃えないのか?」
「愛久。私はあんたみたいに子供じゃないのよ」
「誰が子供だこのヤロォォォォォォ・・・・・おぉ! なんだあの人、めっちゃイケメンじゃないか?」
「えっイケメン!? どこどこ?」
「ほらあそこだよ、あの金髪の––––––––––––」
「やだ、マジでイケメンじゃないのよ・・・・・けど、すごい威圧感ね」
遠方に見えるイケメンに目を輝かせるも、その人物から並々ならない気配を感じ取る。
「行ってみようぜ、宇子華」
「ちょ––––––––––––」
愛久に無理やり手を引かれる宇子華。
「あのー、そこの金髪の人!」
「ちょっと!」
周囲も宇子華と同様に金髪の人物に圧倒されている中、愛久は全く気にした素振りを見せずに元気よく声をかける。
「はい。えっと・・・俺ですかね?」
「あらやだ・・・・・・声までカッコいいじゃないのよぉ〜」
思わずこぼれてしまった本音に、宇子華は咄嗟に口元へと両手を運ぶ。
「俺は白華 愛久って言います。こっちのは、幼馴染の桜門 宇子華です!」
「あんた勝手に––––––––––––」
焦った様子の宇子華だが、内心は気負わない性格の愛久に感謝していた。
おそらく––––––いや、間違いなく将来有名になるだろう人物とお近づきになれるチャンス。
宇子華の心は徐々に徐々にと下心で満たされていく。
「まさかいきなり声をかけられるなんて思いませんでした。俺は佐々木 神威です。お二人もハンター試験を受けに?」
「もちろんっす! 俺たち、小さい頃からハンターになるのがずっと夢だったんですよ! だから今日はもう嬉しくて嬉しくて」
神威は微笑ましい笑みを浮かべる。
「羨ましいな」
「え? 羨ましいって何がですか?」
「いや、こっちの話だから気にしないでください」
「はい・・・・・それより、せっかく知り合えたんだし、お互い敬語はなしにしようぜ!」
愛久の距離の詰め方に神威は若干の苦笑いを浮かべるが、悪い気はしていなかった。
「そうだね。お互い良い結果を出せるよう頑張ろ」
「おう!」
そうしてハンター適性試験が開始された。
まず最初に行われるのは【魔力測定】。
魔力を宿す者は、一様に魔力の気配を宿している。それは訓練などで抑えられるモノではないが、等級の高いモンスターなどは生まれつきその気配を偽る術に長けている個体が多い。また、魔力の少ない者は、他者の魔力の気配に鈍感な者が多い。
しかしこの【魔力測定】では、観測された魔力の値が数値として記録される。
次に行われるのは【実技試験】。
種目は「個人」と「対人」とで分かれており、まずは全員が申告した『ジョブ』に適した試験を受けることとなる。
その後、回復やその他支援系職希望の者意外は「対人」試験へと移行する。
この「対人試験」には2段階存在し、1つ目は、『ジョブ』と『魔力』が似通った受験生同士での1対1の戦闘。
2つ目は、1回目の戦闘データを元に選出された現役ハンターとの戦闘。
以上全ての結果を元に、ハンターとしての等級が付与されるのだ。
全ての試験を終えた流星改め、佐々木 神威は、魔塔連の一階ロビーの入り口付近に掲示された1枚のポスターの前で立ち止まっていた。
「レイド祭か・・・・・」
内容は、近頃ダンジョンの数が急速に増加している傾向にあるため、複数の未登録ダンジョンをS級主導で攻略するというモノ。
S級ハンターが主導となる理由は理解できる。間違いなく、俺が剣聖の力を手にするきっかけになった千葉の未登録ダンジョンの件が原因だな。
「おー、神威!」
ポスターの内容に目を通してると、遠くから俺の名を呼ぶ声が響く。
「お疲れ。手応えはどう?」
「まぁまぁね」
「やれることは全部やった! 俺はどんな結果だったとしても悔いはない!」
適性試験の結果は後日ネット上にて発表されることになる。
この2人とは今日会ったばかりだけど、いい結果であってほしいと思う。
「きっといいハンターになれるよ」
そう言うと、愛久は心底嬉しそうな笑みを浮かべ、桜門さんは恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「おうよ! で、神威の方はどうだったんだ?」
「あんたよりは上に決まってんでしょ」
「おいー! 確かに神威も強いだろうけど、俺だって相当努力してきたんだ。そうやって決めつけるのはよくないと思うぞ」
「何言ってるのよ、脳筋バカ。あんたより強いことなんか、一目見れば誰でも分かるわよ」
桜門さんの強い言葉を受けた愛久の表情にほんの少し翳りが差したように感じた。
「––––––––––––そういえば、2人はレイド祭参加する?」
「ん? 何だ、それ」
「簡単に言えば、ダンジョン攻略イベントだよ。複数のチームを組んで様々なダンジョンを攻略するらしい」
「うぉー、めっちゃおもしろそうじゃんか! 参加しようぜ、宇子華」
「しょ、しょうがないわね。神威さんも参加するんでしょ」
「そのつもりだよ」
「よしっ、それじゃあ次に会うのはダンジョンの中ってことだな」
「そうだね」
「これから俺たちは、仲間でありライバルだ!」
俺は差し出された愛久の手を取る。
正直、今の俺の力は、2人なんて相手にすらならないほど。だけどメラと出会ってから、一つ一つの出会いの大切さを知った。
「あぁ」
その後は2人と連絡先を交換して別れた。




