38話 特魔級ダンジョン『自由の女神像』
アメリカ ニューヨーク州ニューヨーク市ニュヨーク港に浮かぶリバティ島
––––––––––––特魔級ダンジョン『自由の女神像』。
自由と民主主義の象徴である『自由の女神像』は、魔力が宿ってから絶望と恐怖の対象に成り下がってしまっていた。
ダンジョンの仕組みとしては、像本体がダンジョン化していたため、内部に無数のモンスターが潜んでおり、それら全てを倒し切ることで女神像本体がボスモンスターとして君臨するというモノ。
つまり、『国会議事堂』のようにリバティ島一帯がダンジョンとなっていた訳ではない。
今のところ世界的に見てダンジョンの最高難易度とされる特魔級を、今回はたった3人のレイドで攻略した。
何よりも驚きなことが、比較的小規模の戦力だと見られている日本人ハンターが内1人だとういうこと。
1人目は、アメリカ人『神託者』アスマン・ローズ・スミス。
2人目は、同じくアメリカ人『神託者』ユニオン・デビッド・ウィリアムズ。
そして3人目は、日本代表『神託者』最門 丈一郎。
「ありがとうジョウイチロウ。君のおかげでやっと『自由の女神像』を攻略できたよ!」
ユニオンは心底嬉しそうな笑みを浮かべて丈一郎へと握手を求める。
「いやいや、そんなことねぇよ」
差し出された手を取ろうとした瞬間、背後から挑発的な発言が飛んでくる。
「自惚れるなよ日本人。ユニオンと私ならばいずれ攻略できたのだ」
「強がんなよ。確かにユニオンは俺よか強い・・・俺の国の最強生物とためはれるくらいにはな。けどよ、特魔級ってのはそう甘くないだろ?」
アスマンは丈一郎のニヤケ顔に眉を顰めると、舌打ちをする。
「私は先に失礼する」
そうしてアスマンは一足先に2人の下から姿を消した。
「全く、ツンデレだな」
「それにしても、以前よりも英語が上手になったんじゃない?」
「そうか? 別に練習したりはしてねぇんだけどな。まっ、仕事でそこら中飛び回ってっから、自然と身に付いたんだろうな」
「ハハッ、そうかもね。そういえば、さっき僕と同じくらい強い人がいるって言ってたけど、どんな人なんだい?」
丈一郎は待ってましたと言わんばかりに揶揄うような笑みを浮かべる。
「んだよ、いつもジェントルマンみたいなツラしといてやっぱり男の子だな、おい」
「いや、そう言うわけじゃ––––––––––––うん、そうだね。強情だと思われるかもしれないけど、僕は全てのハンターの中でも5本の指に入るほどの強さを有していると思ってる」
「まぁ、否定は出来ねぇな」
ユニオンのジョブは、『勇者』と『星騎士』。内エピックルーンで手に入れたのは『星騎士』のジョブ。
歴史上の文献に、「勇者」に関するモノが存在している。
魔王を討ったのは「剣聖」であるが、剣聖とともに魔王軍に立ち向かった存在––––––––––––それが「勇者」である。
ユニオンが手にした『勇者』のジョブが果たして歴史に関係しているのかは分からない。
しかし、ポテンシャルを鑑みれば、ユニオンがハンターの頂点を掴み取ることは不可能ではない。
本人も少なからず自分以上の強者を日々意識しているからこそ、丈一郎の発言が気になってしまう。
「もしもそいつが今日本にいたら、俺じゃなくそいつがこの場にはいるはずだと思うぜ」
「君ほどの男が謙遜するとは、そこまでなのか・・・・・」
「まぁ、謙遜なんかじゃなく事実なんだがよ。実際何度か戦闘を目にしたことがあるけど、あれはヤバイぜ」
ユニオンの表情から余裕の笑みが消え、キリッとした真剣な表情で丈一郎の話に耳を傾ける。
「悔しいが、タイマンじゃ万が一にも俺に勝ち目はねぇな」
丈一郎のジョブは『巨人王』と『バーサーク』。エピックルーンで手にしたのは『バーサーク』であり、発動時のトランス状態を未だ上手くコントロールできない弱点もあり、丈一郎はレオナに及ばない。
「ぜひお目に掛かりたいものだね。その人は今どこに?」
「さぁな、もう10年以上は会ってねぇし、生きてんのかすら分かんねぇな––––––いや、十中八九生きてはいるだろ」
「もしも日本に帰って来た時は僕に連絡してほしい」
「おう」
丈一郎は軽く右腕を上げて了承の意を示す。
一見軽そうに見えるリアクションだが、丈一郎の約束は絶対に無碍にしない性格を知っているからこそ、ユニオンは笑顔を浮かべる。
「そうだ。この後アスマンも招待してクランのみんなと祝勝会を開こうと思ってるんだけど、君もどうかな?」
クランとは、日本で言うギルドのようなモノ。
「悪ぃな。参加したいのは山々なんだが、最近の日本は異常事態が多くてな、国のトップとしてはやることが山積みなんだわ」
「それは・・・・・大変だね」
ユニオンは優しげに同情の笑みを投げかける。
「人事みてぇに・・・・・まぁ、人事なんだけどよ」
そうして2人もダンジョンを後にし、丈一郎はアモンから『富士山』に関する知らせを受けて急いで日本に帰国するのだった。




