34話 レオナvs『剣聖見習い』
周囲を囲むモンスターを一瞬で蹴散らし、溶岩の柱ごとボスモンスターを断ち切った後、香を比較的熱の届いていない安全な場所へと横たわらせる。
「–––––––––––– 貴様は誰だ?」
声のした方向へと咄嗟に振り返る。
すると、2人の人物が目に入った。
1人は見たことのあるS級ハンター。だけどもう1人の女性の方は、一度も目にしたことがない。
上魔級ダンジョンに入れたということは、実力は相当なものだと推測できる。
「見ない顔だな。こんな場所で一体何をしている?」
俺は咄嗟に顔を逸らしてしまったが、側から見ると明らかにおかしな挙動。
「俺は・・・・・知り合いを助けに来ただけです」
「1人でか? 私はお前のようなハンターを見たことがないし、正式な攻略隊では、私たちが一番乗りなはずだ」
「自分もそう思います!」
まず、この力のことを話すのは論外。
だとしても、俺を敵だと思っているのか、今にも殴りかかってきそうな雰囲気。
さて、どうしたものか・・・・・
「ならば、彼女をこちらに渡してもらおう。貴様の言うことが本当ならば、私たちが預かろう」
ここはなるべく荒波を立てず、穏便に済ませるんだ。
「分かりました」
俺は香を抱えると、慎重にハンターたちとの距離を詰めていく。
「お願いします」
「随分と聞き分けがいいじゃないか」
女性の挑発するような笑みが、俺の緊張を更に加速させる。
「おい。彼女を愚弟たちの下へ運ぶんだ」
「はい! 任せてください! 自分にかかれば100人だろうと1000人だろうと、10000––––––––––––」
「早くしろ」
女性の威嚇を受けたS級ハンターが、まるで蛇に睨まれた蛙のように大人しくなる。
今この状況で彼女と関わるのは非常にまずい気がする。
S級ハンターがこの場を離れる様子を見守った後、俺も続いてこの場を去ろうとする。
「待て––––––––––––」
なぜかこの展開が分かっていたかのような感覚に襲われる。
つまり、この後起きるであろう出来事の検討がついているということ。
俺は立ち止まり、横目で彼女の姿を捉える。
「貴様の言い分は信じてやろう。だが、このまま返してやる訳にはいかないなぁ」
「俺には貴方と戦う理由がありません」
「ほぉ、なかなかにいい直感をしているな。ならば話は早い」
俺は覚悟を決めて体ごと彼女に向き直る。
そして悟る、この場の試練は、避けては通れないのだと。
今にも爆発しそうな女性の狂気の笑みが俺にそう思わせる。
「一度だけ聞く––––––––––––先ほどの一撃を放ったのは貴様で間違いないな?」
「・・・・・だったら?」
「気に入った!」
直後、目にも止まらぬ速さの拳が目と鼻の先へと迫る。
「––––––––––––ッ!?」
咄嗟に聖剣を出し、間一髪で受け止めるも、今にも吹き飛ばされてしまいそうなほどの威力。
「私の拳を止めるか! ハッハッ、ますます気に入った!」
腹部に繰り出されたもう一方の拳を躱し、俺は聖剣に白魔気を纏わせて峰打ちを狙う。
「なっ––––––––––––」
俺の一撃は相手の体に届くことなく、漆黒のオーラによる壁に防がれてしまう。
「そうではないだろ、貴様の一撃は。先ほどはもっと鋭く、重いモノだったはずだ」
いや・・・・・この人がおかしいんだ。
今の一撃は、さっき放った一撃と何ら威力に大差ない一撃だった。
それを、魔力によるオーラ一つで防いだのか?
誰なんだこの人は・・・・・考えろ、考えろ、考えろ、考えろ––––––––––––
「なるほど––––––––––––貴様もそっちタイプの人間か」
1人でに何かを納得する素振りを見せた後、発散する魔力の質量が爆発的に増加する。
「何だ・・・・・これ。2色のオーラ?」
俺のオーラが白と黒だとすると、彼女のオーラは赤と黒。
「死んでくれるなよぉ!」
直後、防御する暇もなく、腹部へと強烈な痛みが走る。
「カハッ」
俺は噴火後の富士山の地をひたすらに爆進する。
道中、いくつかの岩山を破壊し、入り口とは反対の山の麓まで吹き飛ばされた。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
まるで勝てない。
今の俺の実力は、S級ハンターよりも上のはず。
つまり、あの女性はS級ハンターよりも強い存在。
言い換えれば、S級ハンターたちの頂点に君臨する存在。
「神託者––––––––––––」
そう考えればあの規格外の強さにも納得がいく。
「あぁ・・・・・強くなることって・・・・・こんなにも楽しいのか」
瞳に浮かぶのは嬉し涙だ。
そして、悔し涙。
理性的に考えれば、この場で退散するのが正解。
『絶歩』を使えば、それも難しくない。
まだ、転職ミッションのカウントは1/5のまま。
一番大事な目標を考えれば、引くのが正解なのは分かっている。
「だけど––––––––––––」
一撃だけでいい。
たった一撃に、今の俺の全力を注ぐ。
もうやられっぱなしの八尺 流星はいない。
「ステータス」
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』
体力:7080
武力:7500
防御力:5000
敏捷:8335
技術:5000
運:7112
魔力:8342
『メモリーツリー:12%「1507321P」』】
【ステータス
称号:【記憶喪失剣聖】【メテオ】
ジョブ:『剣聖見習い』
スキル:『×10のポイント増加』『白魔気』『聖剣メテオ』『聖剣の恩恵』『絶歩』
体力:9360
武力:11379
防御力:6344
敏捷:10311
技術:8452
運:8021
魔力:10032
『メモリーツリー:13%「688863P」』】
「いくぞ、メテオ」
俺は『絶歩』を使用し、全力の一撃を神託者へ向けて放つ。




