32話 共鳴の先にいた者
S級ハンターたちがダンジョン付近へと到着する少し前。
「このダンジョンは攻略したはずじゃ・・・・・どうして魔力を感じるんだ?」
噴火したことと何か関係が・・・・・?
いや、そんな単純な話じゃない気がする。
それに気になるのは、『月読山』=『富士山』から観測した謎の力と、剣聖の力が共鳴を起こした点。
この場所は、かつて聖剣メテオを生み出したツクヨミと剣聖の出会いの場所。だからこそ、『記憶の道標』によって導かれた理屈は理解できる。
「何も感じないけどな」
もちろん、ダンジョン内からはとてつもないほどの魔力の濃さを感じるけど、それはダンジョン自身のモノ。
あれからシステムが何も反応していないことからも、今ダンジョン内を満たしている魔力は、『謎の力』ではない可能性が高い。もちろん、『謎の力』が、この再びのダンジョン化を促した可能性は十分に考えられる。
灼熱の溶岩に囲まれるダンジョンで1人思考に浸っていると、突如システムが反応する。
<––––––––––––共鳴を感知––––––––––––距離50メートル>
「誰か、いる・・・・・?」
視線の先、何やら小さな人影が見える。
中央の溶岩の柱が立っている辺りだ。
それにしても・・・・・この寒気は何だろうか。
肌が焼けるほどの熱さが漂うダンジョン内で、なぜか俺の肌には鳥肌がビシビシ立っている。
何秒、何分、その場で硬直していたのかは分からない。
気が付くと耳元で、覚えのない声が聞こえた。
「君は誰?」
–––––––––––– 振り向けない。
息をすることすら忘れてしまうほど、俺は背後に佇んでいるだろう謎の存在に意識だけを向ける。
「どうして何も答えてくれないの・・・・・? あぁ〜、人間は僕たちのことが嫌いだったね」
何一つ感情が乗っていない冷めた声。
魔力でも、殺気でもない。ただただ、存在感に圧倒されてしまっている。
「そういえば僕は助ける理由がないけど、人間同士は助け合うものなんでしょ?」
「えっ」
小さく漏れた声。
それは吐息だったのか、発しようともがいて出た小さな一言だったのかは自分でも分からない。
「あそこに誰かいるよ」
顔のすぐ横から伸びてくる真っ黒い腕。しかし手首から先は白く、人間のように5本の指が存在している。その内4本の指が折り曲がり、残る1本が柱の頂点を指す。
途端に体が楽になり急ぎ振り返るも、すでにそこには何の気配も姿形も残ってはいなかった。
「一体何だったんだ?」
ただ分かることは、俺とあの存在は決して無関係ではないということ。
知りたければ、剣聖の力を取り戻していくしかない。
「よしっ」
俺は聖剣を体から取り出すと、地を蹴って宙に舞い上がり、飛翔するモンスターたちを伝って中央に聳え立つ溶岩の柱の頂上を目指す。
生きていてくれる保証はどこにもない。
ただ、あいつのあの言い方・・・・・
まだ生きている可能性は十分にあり得る。
「間に合ってくれ!」
一体誰がいるのかなんて分からない。
ただ何となく、助けに行かずに見捨てれば、俺は一生後悔することになる・・・・・そんな気がするんだ。
ここはおそらく上魔級以上のダンジョン。
そんな中で生きていられる人間なんて、S級ハンターくらい。いや、S級ハンターでも難しいくらいだ。
俺は根拠のない焦る気持ちが込み上げるまま、頂上に辿り着く。
そして理解した。
この抱く感情が決して錯覚などではなかったことに。
「香––––––––––––」




