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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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31話 上魔級ダンジョン『富士山:溶岩地帯』(2)

「中央の柱の下からとてつもない覇気を感じるな。私が知っている上魔級よりも随分と楽しめそうだ」

 レオナは、後方でうずくまって動こうとしない熱真に呆れたような視線を向ける。

「全く貴様は何をしている?」

「いや、だって・・・レオナさん一人でも十分なのに、どうして僕まで・・・・・」

「はぁ、他者の協力なくして『ジョブ』を発揮できないとは、帰ったら覚悟しておくことだな」

 そう言って熱真の腕を無理やり掴むと、あろうことか自身の胸を触らせる。

「なっ––––––––––––」

 急激に顔が真っ赤に染め上がる熱真。

 レオナは性格は男っぽくかなりの難はあるものの、外見は誰しもが羨ましがるナイスなモノ。

 それを服の上からでも触れられたとなると、興奮しない男性はいないだろう。

 現に顔を真っ赤に染め上げる熱真は、呼吸することも忘れ、意識を飛ばしてしまった。

 しかしレオナはその様子を見て笑みを浮かべる。

「––––––––––––ハッハー!! 今日も元気にエンジン全開!」

 突如目覚めた熱真は先ほどとはまるで別人の如く人格が変化する。

 

 熱真 明決のユニークジョブ『ムードメーカー』は、物理的・精神的などに関わらず、あらゆる環境への適応能力が発揮される。その上、超人的な身体能力を発揮するという脳筋ジョブ。

 ただし発動には「極度の興奮状態」が必須。それなのに本人は、普段相当な引っ込み思案な性格をしていることもあり、戦闘には常に前向きではなく、基本的に誰かの助けなしでは興奮状態に入ることができない。

 

「よく見ておけ」

 そう言い捨てると、レオナは地を蹴り宙に舞う未確認モンスターへと突っ込んでいく。

「私を退屈させてくれるなよ!」

 拳へと若干の漆黒の炎を纏わせて放った一撃は、宙を舞う数十の上魔級モンスターを一瞬で葬り去るほどの威力を有していた。

「柔らかすぎる!」

「流石です! レオナさん。それじゃあ俺も負けてはいられませんね」

 次に熱真が地を蹴りレオナ同様に宙に舞うモンスターへと拳を振るうも、一体の絶命にすら至らない。

「そんな!? これじゃただの足手纏いじゃないか! よーしっ、一回でダメなら何度でも挑戦してやるまでだ!」

「おい––––––––––––」

 レオナに呼び止められて後を振り向くと、腕を組み強調された大きな2つのメロンが視界に入る。

「ドキッ」

 途端に熱真の全身が小刻みに震え出し、先ほどよりも素早く宙に飛び立つと、威勢のいい大声を上げながら再びモンスターへと拳を振るう。

 すると、先ほどのレオナと同等かそれ以上のモンスターを一撃で葬り去って見せた。

「あいつは私の見込んだ通りの逸材だな」

 レオナは熱真 明決を、S級の中でも潜在能力は『神託者』に届き得るほどだと見ている。

「直に触れさせてやれば、丈一郎のやつも一泡吹かせられるかも知れないな」

 とは言え、実際に触れさせてあげるつもりなど毛頭にない。

「どうですか、俺の一撃は! さぁてとぉ、この調子で大切な仲間を助けに行きましょうか!」

「ん? 仲間とはどういうことだ?」

「あぁ、そうでしたね! 実は夜神さんたちのギルドに所属している女性がダンジョンの変化に巻き込まれてしまったみたいなんですよ!」

「ほぉ、愚弟たちは上魔級に巻き込まれたその者が本当に生きてると思っているのか」

 たとえS級ハンターでも一人で潜るのは自殺行為に等しい上魔級ダンジョン。

 軽く見積もってもダンジョン発生から1時間は経過している。

 集まったS級ハンターたちは最適最速な方法を駆使して集合していたみたいだが、それでも到底間に合うとは思えない。

「弱気になってはダメですよ! 必ず生きてる! そう信じて俺たちが見つけ出してあげないと」

「まぁ、何にせよ、全てを最悪な方向で思考するのは早計だな。だがどう見つけたものか・・・・・」

 上魔級ダンジョンの魔力が充満するこの状況の中、誰か1人の気配を探ることなどほぼ不可能。

 ハンターから発される魔力の気配が、ダンジョンの魔力によって隠されてしまっているため。

「それにしても––––––––––––」

 レオナは一度、溶岩柱の出現部分へと視線を向ける。

「威圧感が増したのは気のせいか?」

 徐々に徐々にと、地下に潜んでいるであろうボスモンスターから感じられる魔力の波長が増していっている様子を、レオナは自らの肌を通じて感じ取っていた。

「このままいけばどれほど強くなるのか興味があるが–––––––––––」

 自らの欲を抑え、巻き込まれた仲間の救出を優先することを決意する。

「仕方がないか」

 そうぼやいた瞬間––––––––––––

 天空から一本の光が中央の柱へと落とされる。

 光が柱を一刀両断するとほぼ同時に、ボスモンスターの反応も消失。

 それに伴い、溶岩の波がレオナたちに押し寄せる。

「ハッ、どこの誰かは知らないが、やってくれるじゃないか! おい、私のケツに触れていろ」

 レオナは満面の笑みを浮かべながら自ら生み出した赤と黒の炎をダンジョン中に放出させ、力技で四方八方に暴れ狂う溶岩全てを焼き消してしまった。

 一方の熱真は、意識を朦朧とさせつつも、レオナのケツに触れた興奮効果により軽症程度の火傷で済むという変態的結果に。

 レオナは力尽きて倒れそうになる熱真の首根っこを掴み、ダンジョンを一撃で終わらせた者の下へと向かう。

 その者は地に降り立ち、大事そうに抱えていた女性をゆっくりと安全な場所へと横たわらせる。

「貴様は何者だ?」


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