28話 最強生物
太平洋海底『マグナム遺跡』。
巨大な円柱状のこの遺跡は、別名「再生ダンジョン」とも呼ばれている。
水中は気体の存在する地上とは異なり、水分子が豊富に存在しているため、魔力が溶け込みやすいという特徴がある。
そのため、地球を覆う海の大半に大量の魔力が存在しているため、水中に存在しているダンジョンの数は地上よりも多く、核を破壊しても再生してしまうダンジョンが多くある。
また、水中での魔力は循環効率がかなり悪いため、大量のモンスター発生の心配はほとんどないが、強力なモンスターがダンジョン外にも存在している。
「弱い––––––弱い––––––弱い––––––弱い––––––弱いぃ!!」
突如、全長200メートルはあろうマグナム遺跡が内側から木っ葉微塵に破壊される。
「私を楽しませてくれるモンスターはいつになったら現れてくれるんだ」
崩壊した遺跡内部から一人の人間が姿を見せる。
水中で堂々と燃え盛る漆黒の炎。
一際目立つ真っ赤な長髪。
全身を纏う真っ赤な鱗。
「何だお前たち、まさかこの私に喧嘩を売ってるのか?」
女は目の前に存在する複数の巨大生物にガンを飛ばす。
彼女にとって、目の前の存在がモンスターであろうと、その他生命体であろうと然程問題ではない。
重要なのは、その存在が自分の欲望を満たしてくれる存在かどうかのみ。
女の名前は「夜神 レオナ」。
『ヘパイストス』のギルド長「夜神 水」の姉にして、『神託者』の名を授かるS級ハンターである。
その野蛮性と凶暴性から世間では「最強生物」と称されている。
レオナの周囲に漆黒とは別の真っ赤な炎のオーラが立ち上がる。
そこには上品さの欠片も存在せず、荒々しく燃える2種類の炎は野生のそれ。
レオナが軽く片腕を頭上へと振り上げただけで、海底の周囲一帯へと巨大な渦が生じ、鯨ほどの体長を有していた複数の生物の姿は跡形もなく消えてしまった。
「つまらん」
レオナはエピックルーンを手にした24人の内の一人であり、元々神から授かった『竜人』とは別に、『天魔』のジョブを有している。
どちらも攻防に特化した、レオナにピッタリのジョブ。
「ん? 何やら臭うな」
それは物理的な話ではなく、レオナの有する獣特有の感覚的知覚。
「まぁ、ここでの楽しみも減ってきていたところだ。久々に我が弟の顔でも拝みに行ってやるとしよう」
こうして野放しにされた一頭の厄災は、故郷の地目指して太平洋を爆進するのだった。




