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記憶喪失剣聖  作者: 融合


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102/104

101話 魔剣創造『マルティプル』

 吹雪の中に立ち上がる巨大な竜巻。

 まるで一本の大木の如く様相のそれは、事もあろうか天から切り離され地上へと落とされる。

 一帯の吹雪は掻き消され、真っ白な大地に転がる無数のモンスターの死骸と超越者2人の姿が現れる。

 一人は優雅な佇まいで地に倒れ伏すもう一方を無情に見つめている。

「・・・今のは剣王の秘技の一つか––––––それにしても馬鹿げた芸当だ。俺には到底真似できないな」

 潰れた四肢と内臓が再生し、白い息を漏らして立ち上がる剣王。

「黒陽の眷属になったことで何とか再生は間に合ってるが・・・あいつと違って俺は不死じゃない。比べて奴の魔力は尽きる気配がない・・・さて、どうしたもんか」

 剣王と言えども今の流星とまともに剣を合わせても勝ち目がない。

 速さ、腕力は悉く凌駕され、おまけに魔力量の底も知れない。更に、剣王は流星に一撃も入れられていないどころか、例え傷を負わせたとしても『万能完治』の前では何の意味もない。

 剣王は黒陽の主人であり、眷属という立ち位置であるため、黒陽のジョブ『ヴァンパイア』の権能である再生能力を行使することが可能となっている。

 眷属となったからと言って黒陽同様に血液の必要性は皆無なのだが、その再生能力はオリジナルには到底及ばない上、使用の度に相応の体力を消耗してしまう。

 それに対して流星の有する『万能完治』は、体力や魔力すら回復する神の如く権能。

 まぁそれもそうだろう。

 王魏から受け継いだ『万能完治』は、元々は天帝の権能なのだから。

 正しく打つ手なし。

 剣王の身体活動上は間違いなく全力の全力。

 しかし、今持てる全ての力を見せているかと言われれば、それは違う。

 剣王が有する『創造主』のジョブは、指定した空間を制限なく自由に異空間へと創造できる力。空間内に生み出せるのは無機物だけであり、生命の一切は創造できない。つまり、魔力を創造できないため、内側にいる者は魔法の行使が不可能となるのだが、元々外部にある存在(生命・魔力など)を持ち込むことはできる。

 要するに外部から取り込んだ魔力を自由に行使できるわけだが、あくまでも能力の範囲内での行使に限られるため、モンスターなどの生命はどうしたって生み出せない。

 ならばどうやって『万里の長城ダンジョン』を創造したのか?

 それは、剣王が有するもう一つのジョブに答えが隠されている––––––––––––

「––––––魔剣創造『マルティプル』」

 唱えた瞬間、2人を囲む広大な異空間に無数の魔剣が出現する。

 色・形が全て違うあらゆる魔剣が周囲一帯の空間を埋め尽くすほどの勢いで出現している。

 魔剣とは、魔法を入れた器のような存在。剣自身に使用者の魔力を込めることによって付与されたあらゆる魔法が行使可能となる。

 どんな魔法が付与されているのかは、生成されてからのお楽しみ。

 初めに剣王が使っていた漆黒の大剣も魔剣の一つであり、流星によってあっさりと破壊されてしまった。

 魔剣はタイプによって一度に扱える数に制限があるのだが、『創造主』と掛け合わせることによって面白い現象が起こるのだ。

 土台となる空間の中にいくつもの小空間を創造し、その小さな空間の一つ一つに魔剣を創造することにより、触れていなくとも魔剣の力を存分に行使する術を編み出した。

 現在出現している魔剣の数はおよそ10万。

 これにより剣王の魔力は底をついてしまったが、今の流星にも十分に対応可能な規模である。

「現代の剣王の力を篤と味わってもらおうか」

 そうして魔剣によるあらゆる魔法が流星を閉じ込める空間一帯を鮮やかに彩るのだった。


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