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第98話:【98日目】ブラック国家の討伐軍と、圧倒的ホワイトPR

 村が創造の喜びに沸いていた頃。

 遥か南のブラック国家では、監査官が逃げ帰った報告を受け、ついに王国軍の「北の村・討伐部隊」が編成されていた。


 98日目の朝。

 最高情報責任者(CIO)のシオンが、村役場でドローンの映像を投影した。


「タクト様。王国軍、約三千の軍勢がこちらに向かって進軍を開始しました。……しかし、映像を見る限り、兵士たちの士気は最悪のようです」


 映像に映る兵士たちは、薄着のまま雪道を歩かされ、疲労と寒さで絶望的な顔をしていた。王国の上層部が、十分な冬装備(予算)も与えずに強行軍を命じたのだ。


「三千人か。結界があるから村は安全だが、さすがにこの吹雪の中で放置すれば、彼らは村に着く前に凍死(全滅)してしまうな」

「はい。ですが、迎え撃つにも数が……タクト様、どうされますか?」


 武力で制圧するのは簡単だが、彼らもまたブラック国家の「被害者」だ。

 俺は日めくりカレンダーの「残り268日」の紙をめくった。

 必要なのは武器ではない。彼らの「戦う理由」を根底から破壊する情報兵器だ。


『SSRアイテム【超広域・魔導投影機《ホログラム・プロジェクター》&真実の拡声器(スピーカー)】を獲得しました』

『※空に巨大な立体映像を投影し、指定した対象にのみ完璧な音響でメッセージを届ける究極のPRツールです』


「よし。シオン、ネクロディア! うちの村の『PR動画(採用動画)』を作るぞ! 素材は日常の監視カメラ映像でいい!」


 数時間後。

 吹雪の荒野を行軍し、寒さと飢えで倒れそうになっていた王国軍三千人の頭上に、突如として巨大な光のスクリーンが浮かび上がった。


『王国軍の兵士の皆さん、お疲れ様です! 私たちは、北のホワイト村です!』


 空に響き渡る、明るくクリアな音声。

 そして映像に映し出されたのは、湯気を立てる温泉に浸かる村人たち、フードコートで山盛りの焼肉やジェラートを食べる魔族たち、そして「月給(銀貨)支給日」に笑顔で給与明細を受け取る獣人たちの姿だった。


『私たちの村は、1日8時間労働、残業なし! 三食の極上まかないと、暖房完備のタワーマンションを全員に保証します! ……さあ、命を懸けて冷たい雪原を行進するか、武器を捨てて温かい温泉に入るか。選択は自由です!』


 ドドォォォン、と映像の中で打ち上げ花火が上がり、最後に『中途採用、随時募集中!』のテロップが出た。


「な、なんだあの映像は……!?」

「温泉……肉……定時退社……!?」

「おい、よく見ろ! あの映像で笑って焼肉を食ってるの、行方不明になった勇者アーサー様じゃないか!?」


 兵士たちの間に、衝撃が走った。

 自分たちは何のために、この地獄のような雪原を歩いているのか。


「……ふざけるな。俺は、俺はもう嫌だぁぁぁっ! こんな国、辞めてやる!」

「俺もだ! ホワイト村に転職するぞぉぉぉ!」


 チャリン、ガシャン。

 王国軍の兵士たちは次々と武器を雪原に投げ捨て、部隊長たちの制止を振り切り、歓声を上げながらホワイト村に向かって猛ダッシュを始めた。

 圧倒的な待遇(ホワイトPR)の前に、ブラック国家の討伐軍は、一兵の血も流すことなく「集団ストライキ(大量離反)」を起こして自壊したのだった。


(残り267日。明日は何が出る?)

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