第92話:【92日目】社内託児所の設立と、万能保育ゴーレム
学習ポッドの導入により、新人たちの業務習熟度は劇的に向上した。
しかし、500人規模のコミュニティともなれば、単なる「労働者」の集まりではなく、一つの「社会」が形成される。
92日目の朝。
建築リーダーのガルドが、困ったような顔で村役場にやってきた。
「村長、ちょっと相談があるんだが……最近、建築現場や農地の周りで、小さい子供たちがウロチョロしてて危ねえんだ」
「子供たち?」
「ああ。難民として受け入れた魔物の中には、家族連れも多かったからな。親が働いてる間、チビっ子たちが遊び回ってるんだよ」
窓の外を見ると、小さなゴブリンの子供や、獣人の子供たちが、雪原を元気いっぱいに走り回っている。
親たちは仕事に集中したいが、子供の安全が気になって常にヒヤヒヤしている状態だ。これは重大な労災リスクであり、親の心理的安全性も著しく損なう。
「働く親を支援するインフラ(育児支援)が不可欠だな」
俺は「残り274日」のカレンダーをめくった。
光の粒子が現れたのは、カラフルな遊具が揃った巨大なプレイルームと、柔らかい素材でできた丸っこいロボットたちだった。
『SSRアイテム【全自動・魔導託児所&万能保育ゴーレム】を獲得しました』
『※子供たちの年齢に合わせた知育プログラムと、絶対に怪我をさせない安全結界を完備した夢の保育施設です。ゴーレムは無限の慈愛で子供の世話をします』
「キタ! これぞ最強の福利厚生、社内保育園!」
俺はすぐさま、居住区と職場の中間地点にこの巨大なキッズルームを展開した。
床は転んでも痛くない魔法のクッション素材。壁には自動で読み聞かせをしてくれる絵本が並び、常に適温に保たれている。
「みんな! 今日からここが村の保育園だ! 仕事の間は、この保育ゴーレムたちが責任を持って子供たちを預かるぞ!」
「ほ、本当に良いんですか!? 俺たちみたいな下っ端の子供を、こんな立派な施設で……!」
「ああっ、これで安心して仕事に集中できますぅぅ!」
親たちは涙を流して感謝し、子供たちは丸っこい保育ゴーレム(ナニー)に抱きついて大はしゃぎしている。
「ピーッ。ミルクの時間デス。オムツ、替エマスネ」
機械的だがどこか温かい音声で、ゴーレムたちが完璧な保育をこなしていく。
育児と仕事の両立。
前世の社会でも永遠の課題だったそれが、魔法とインフラの力で完全に解決された。
子供たちの元気な笑い声をBGMに、親たちはかつてないほどの集中力で定時内の業務に打ち込むのだった。
(残り273日。明日は何が出る?)




