第91話:【91日目】500人の新人研修と、全自動魔導学習ルーム
人口が500人規模へと膨れ上がり、統合基幹システムやスマート端末による最先端の業務管理が導入されたホワイト村。
だが、91日目の朝。村役場の最高デジタル責任者ネクロディアから、一つの懸念事項が報告された。
「タクト村長。端末の配布自体は完了しましたが……元魔王軍の末端兵士や、字の読めない者たちの一部が、システムの操作に手こずっているようです」
「なるほど。情報格差が発生しているんだな」
ネクロディアが空中に投影したグラフを見ると、業務連絡の未読率や、誤操作によるシステムエラーの発生率が、一部の部署で少しだけ跳ね上がっていた。
全員が同じツールを与えられても、それを使いこなす「基礎スキル(リテラシー)」には個人差がある。
これを現場のOJT(先輩からの指導)だけでカバーしようとすれば、教える側の先輩社員(獣人たちなど)の負担が激増し、業務効率が低下してしまう。
「大規模な組織には、統一された『新人研修プログラム』が必要だ。しかも、誰でも一瞬で基礎スキルを身につけられる仕組みがな」
俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り275日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、流線型の白いカプセルがいくつも並んだセットだった。
『SSRアイテム【|全自動・魔導学習ルーム《ラーニングポッド》】を獲得しました』
『※カプセルの中で15分間リラックスして眠るだけで、脳に直接「読み書き」「ツールの操作方法」「村の就業規則」などの基礎知識を安全にインストールします』
「完璧だ! これぞ究極の社員教育インフラ!」
俺は即座に村役場の隣に研修センターを設立し、操作に手間取っていた新人たちをカプセルに案内した。
「本当に、この箱の中で寝るだけで字が読めるようになるんスか……?」
不安そうにカプセルに入るオークの青年。
だが、15分後にプシュッという音と共にカプセルから出てきた彼は、手元のスマート端末をスラスラと操作し始めた。
「す、すげえ! 今まで謎の模様にしか見えなかった文字が、すーっと頭に入ってくる! シフトの申請も一瞬だぜ!」
「おおっ! 俺も、農業ドローンの操作マニュアルが完全に理解できたぞ!」
学習カプセルから出てきた魔物たちは、誰もが自信に満ちた顔つきになっていた。
知識がないことは恥ではない。ただ、学ぶ機会がなかっただけだ。
教育コストを極限まで圧縮し、全員の基礎スキルを底上げすることで、ホワイト村の組織力はさらに強固なものへと進化した。
(残り274日。明日は何が出る?)




