表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
88/90

第88話:【88日目】魔導テーマパーク《遊園地》の熱狂と、勇者の決意

 88日目、待ちに待った休日。


 俺は朝のルーティンで「残り278日」のカレンダーをめくり、『SSRアイテム【無限ポップコーン(パーク・スイーツ)ワゴン】』をエントランスに設置した。チュロスも同時に無限生成される特別仕様だ。


 甘いキャラメルの匂いが漂う中、五百人の村人たちがゲートをくぐり、夢の国へと雪崩れ込んでいった。


「きゃあああああっ!!」


「ガハハハハッ! 最高だぜぇぇぇっ!!」


 上空を凄まじいスピードで駆け抜ける絶叫マシン(ジェットコースター)


 その最前列に並んで座っていたのは、なんと最高防衛責任者(CSO)である元・魔王軍四天王のザンギュラと、有給消化中の勇者アーサーだった。


「どうだ勇者の坊主! この落ちる時の内臓が浮く感覚! 魔物の背中に乗って空を飛ぶよりスリルがあるぜ!」


「はははっ! 風が気持ちいい! ザンギュラさん、もう一回乗りましょう!」


 かつては世界を賭けて殺し合うはずだった二人が、ポップコーンを片手に絶叫マシンをリピートしている。


 ルナたち獣人は回転木馬(メリーゴーランド)のような動物型のアトラクションに乗り、シオンやカーミラたち最高情報責任者(CIO)監査役(CISO)の元・暗殺者コンビは、お化け屋敷の中で「あのトラップの配置は甘い」とプロ目線でダメ出しをしていた。


 夕方。


 遊び疲れた俺は、村の景色を一望できる巨大な観覧車(フェリスホイール)に乗って一息ついていた。


 向かいの席には、勇者アーサーが座っている。彼の顔は、この村に遭難してきた時の「死んだ魚のような目」から一変し、年相応の明るく精悍な青年の顔に戻っていた。


「タクト村長。今日は本当に最高の休日でした。……俺、こんな風に腹の底から笑ったのは、勇者に選ばれてから初めてです」


「それは良かった。有給消化は順調みたいだな」


「はい。王国にいた頃は、毎日『お前が世界を救うのだ』『遊んでいる暇などない』とプレッシャーをかけられ、誰かのために剣を振るうのが苦痛で仕方ありませんでした」


 アーサーは、眼下に広がる夕日に照らされたテーマパークと、笑顔で歩く住人たちの姿を見つめた。


「『世界を救え』という曖昧な言葉じゃ、俺は頑張れなかった。でも……今、この場所で笑っているザンギュラさんや、エルフや獣人たちの『具体的な笑顔』を見ていると、俺の心の底から、熱いものが湧き上がってくるんです」


 アーサーは、腰に帯びた伝説の聖剣をポンと叩いた。


「タクト村長。俺の有給休暇は今日で終わりにします。明日から、俺をこの村の防衛部隊(セキュリティ)の正式メンバーとして雇ってください。俺は魔王を倒すためじゃなく、この村の皆の『笑顔と休日』を守るために、剣を振るいます」


 強迫観念(やりがい搾取)から解放され、自分自身の明確な意志ビジョンで働く目的を見つけた男の顔だ。


 これほど頼もしい人材はいない。


「歓迎するよ、アーサー。明日からよろしく頼む」


「はい! とりあえず、明日はこの聖剣を使って、食堂の薪割りを全力で手伝わせてもらいます!」


 伝説の聖剣を薪割りに使うのはどうかと思うが、彼がそれで幸せなら文句はない。


 最強の勇者が正式に村の社員となり、ホワイト村の防衛力はもはや神の領域へと到達した。


(残り277日。明日は何が出る?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ