第87話:【87日目】ブラック王国の焦りと、魔導テーマパーク《遊園地》
――その頃。ホワイト村から遥か南に位置する、人間たちの巨大な国家『聖王都』。
王城のきらびやかな会議室では、国王と大臣たちが青ざめた顔で円卓を囲んでいた。
「どういうことだ! 勇者アーサーの一行からの定期連絡が完全に途絶えて、もう二ヶ月になるぞ!」
「はっ……! 最後に通信魔法で『猛吹雪で野宿をしている、予算を回してくれ』と泣き言を言っておりましたが、それ以降はぷっつりと……」
「馬鹿者が! 魔王討伐という聖なる使命を帯びた勇者が、予算ごときで音を上げるはずがなかろう! 我らが彼らに渡した支度金(金貨百枚)があれば、贅沢などせずとも魔王城まで歩いて行けるはずだ!」
現場の過酷さを一切理解せず、精神論だけで予算を削る典型的な暗黒経営の上層部たち。
彼らは、勇者一行がホワイト村のコタツで丸くなり、ジェラートを貪っていることなど知る由もない。
「それに、西の辺境伯爵が放った私兵(傭兵団五十名)も、北の荒野で忽然と姿を消したというではないか!」
「さらに恐ろしいことに、北の魔王軍の拠点から、全く魔力の動き(侵略の気配)が感じられなくなりました。嵐の前の静けさ……我々を一網打尽にするための、恐ろしい罠を張っているに違いありません!」
自分たちの失策と怠慢を棚に上げ、見えない恐怖に怯えるブラック国家の重鎮たち。
そんな彼らの悲喜こもごもをよそに、北の果てにあるホワイト村は、かつてないほどの熱気に包まれていた。
87日目の朝。俺は村役場のスマート端末で、全社員に一斉通知を飛ばした。
『明日、明後日は週休二日の休日です。しっかり休んで英気を養ってください』
「村長! 明日はお休みですね! アタシたち、どこで遊ぼうかってみんなで相談してるんです!」
ルナが尻尾を振りながら、獣人や魔物たちと一緒に嬉しそうに駆け寄ってきた。
五百人という規模になると、休日の過ごし方も多様化する。大浴場やカラオケボックスだけでは、キャパシティが足りなくなる恐れがあった。
「五百人が同時に、全力で遊び尽くせる超大型のエンタメ施設が必要だな」
俺は日めくりカレンダーの「残り279日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、色鮮やかな城やレールのミニチュアが詰まった巨大なジオラマボックスだった。
『SSRアイテム【夢の魔導テーマパーク展開キット】を獲得しました』
『※広大な敷地に、絶叫マシン、観覧車、パレードルートなどを完備した究極の魔法遊園地を展開します。アトラクションは安全性100%の魔法結界で保護されています』
「キタ! 休日の覇権を握る最強の福利厚生!」
俺は即座にガルドの建築部隊を呼び出し、村の東側に広がる空き地(すでに整地済み)にこのキットを展開させた。
ズゴゴゴゴォォッ! という地響きと共に、荒野の空に巨大な絶叫マシンの光るレールが組み上がり、巨大な観覧車が回り始め、楽しげな音楽が村中に響き渡った。
「な、なんだあのバカでかい車輪は!?」
「空を……鉄の箱が空を飛んで一回転しているぞ!?」
突如出現した夢の国に、五百人の社員たちは目を丸くして釘付けになった。
「みんな! 明日の休日は、この『ホワイト・パーク』を解放する! 乗り物はすべて無料、好きなだけ遊び尽くしてくれ!」
「「「うおおおおおおおおっ!!」」」
割れんばかりの歓声が、冬の荒野の空を揺らした。
王都の人間たちが怯える中、魔王軍の残党と勇者一行は、明日の遊園地デートの約束を取り付けるのに夢中になっていた。
(残り278日。明日は何が出る?)




