第83話:【83日目】爆発する食糧需要と、魔導・垂直植物工場
魔物たちの住居と衣類が整い、彼らは農業や建築、警備などの各部門に見習い(研修生)として配属された。
真面目で従順な彼らの働きにより、村のタスク消化スピードは劇的に向上した。
しかし、83日目の朝。
農業部門のリーダーである獣人のガロ族長が、深刻な顔で村役場(PMO)にやってきた。
「村長。新人たちがよく働いてくれるのは助かるのですが……彼らの『胃袋』の消費スピードが、想定を遥かに超えております。特にオークやトロールたちの食欲はすさまじく……現在の温室ドームだけでは、春までに野菜の供給が追いつかなくなる計算です」
村のCFO(最高財務責任者)であるグレイシアも、隣でホログラムのグラフを投影しながら頷く。
「魔導巨大フードトラックの豚汁は無限に出ますが、やはり栄養のバランス(ビタミンなど)や食事のバリエーションを考えると、野菜や果物の自給率をさらに上げる必要があります。ですが、冬の雪原で畑の面積をこれ以上広げるのは……」
「なるほど。土地の限界と気候の壁か」
俺は腕を組んだ。
広大な土地を横に広げられないなら、「縦(垂直)」に伸ばすしかない。前世の都市部で研究されていた、次世代の農業ソリューションだ。
「よし、今日のドロップは最先端の農業インフラで頼むぞ」
俺はカレンダーの「残り283日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、ガラス張りで何層にも重なった巨大なタワーの模型だった。
『SSRアイテム【全自動・魔導垂直植物工場ビル(ハイテクロノジー・ファーム)】を獲得しました』
『※十階建てのビル内部で、LED型魔力光と栄養循環システムを用いた水耕栽培を完全自動で行います。天候や季節に一切左右されず、従来の畑の百倍の収穫量を誇る持続可能な巨大農場です』
「キタ! これぞ未来の農業、スマートファームの極致だ!」
俺は即座に、ガルドの建築部隊とネクロディア(CDO)のシステム部隊を動員し、農地エリアの隣にこの巨大なガラス張りのビルを展開させた。
ビルの中に一歩足を踏み入れると、そこはサイバーパンクな世界だった。
天井まで何十段にも積み重なった栽培棚がズラリと並び、目に優しいピンクや紫の魔力光(LEDのような光)が、新鮮なレタスやトマト、イチゴなどを照らし出している。
「なんじゃこりゃあ! 土がないのに、水と光だけで野菜が育っておるぞ!?」
ガロ族長が驚愕して目をひん剥く。
「ここは室温も光量も栄養素も、すべて魔導コンピューターで自動管理されている。害虫も入らないから無農薬だ」
「す、素晴らしい……! これなら、雪の日でも夜でも、無限に野菜が収穫できます!」
新人研修生のオークやゴブリンたちが、タブレット型の魔導端末(魔法盤)を片手に、水耕栽培の棚のチェックを行っていく。
屈強で巨大な魔物たちが、ピンク色の光の中で繊細なイチゴの収穫や、端末の数値を真剣な顔でタップしている光景は、なかなかにシュールなギャップがあった。
「タクト様。これで食糧問題(リソース不足)は完全に解消されましたね。むしろ、王都に輸出できるほどの生産量です」
シルフィが、もぎたての真っ赤なトマトをかじりながら微笑む。
「ああ。社員の胃袋を満たすことは、経営の最優先事項だからな。持続可能性の高い事業基盤が完成した」
最先端のテクノロジーと魔法の融合により、五百人規模の食糧生産は完全にオートメーション化されたのだった。
(残り282日。明日は何が出る?)




