第79話:【79日目】魔王城のブラック崩壊と、魔導通信ネットワーク
四天王が全員揃い(全員がホワイト村の役員となり)、村の運営体制はかつてないほど強固なものになった。
防衛、財務、デジタルインフラ(ネクロディア)、そして監査。王国すら凌駕する最強の経営陣だ。
しかし、79日目の朝。俺は一つの懸念を抱いていた。
「四天王が全員いなくなった魔王城(本社)は、一体どうなっているんだ?」
魔王の復活まであと300日を切っている。上層部が消えた組織がどうなるか、PMとしての嫌な予感がする。
情報を得るため、俺は日めくりカレンダーの「残り287日」の紙をめくった。
『SSRアイテム【魔導・超高高度通信ドローン(人工衛星)&広域ネットワーク網】を獲得しました』
『※成層圏に滞空し、世界のあらゆる場所の映像と通信を村に中継する最強の監視・通信インフラです』
「完璧だ。これで魔王城の様子をリモートで視察できる」
俺はネクロディア(CDO)とシオン(CIO)に指示し、人工衛星ドローンの映像を村役場のホログラム円卓に投影させた。
映し出された北の果て、魔王城。そこには、目を覆いたくなるような惨状が広がっていた。
『ぎゃあああ! 腹が減ったぁぁ! 今月の食糧の配給はまだか!』
『グレイシア様もネクロディア様もいない! 誰に指示を仰げばいいんだ!?』
『城の建築資材が届かないぞ! 吹雪の中でどうやって仕事しろってんだ!』
ホログラムに映る魔王城の現場は、完全に「崩壊」していた。
幹部が全員失踪したため、現場の末端の魔物(労働者)たちは指示を失い、給料も食糧も配給されず、極寒の中でパニックに陥っていたのだ。
「……ひどい有様だな」
「無理もありません」とネクロディアがため息をつく。「魔王軍の兵站と指揮系統は、我々四天王の『個人的な過重労働』によってギリギリ保たれていたのです。それが一気に抜けたら、現場のシステムが崩壊するのは当然です」
「だが、魔王は復活に向けて動いているんじゃないのか?」
「魔王様は『365日後に復活する』という絶対のプログラム(休眠状態)にあります。幹部がいなくなろうが、現場が飢えようが、予定の期日までトップは動けない(意思決定できない)のです」
経営トップが不在で、中間管理職が全員逃げ出し、現場だけがデスマーチに取り残されている。
それは、最悪のブラック倒産(プロジェクト破綻)の光景そのものだった。
「……タクト様。彼ら末端の魔物たちに、罪はありません。ただ、不遇な環境で搾取されているだけです」
元魔王軍であるザンギュラが、辛そうに映像を見つめている。
俺はPMとして、決断を下した。
「分かった。彼ら(魔王軍の残党)を、全員うちの村で受け入れる(吸収合併する)ぞ」
(残り286日。明日は何が出る?)




