第77話:【77日目】最後の四天王、暗殺鬼カーミラの潜入と光の魔法
77日目の朝。
村人たちが温泉卓球の筋肉痛を【魔導マッサージチェア】で癒やしている頃。
俺は村役場で、「残り289日」の紙をめくっていた。
『SSRアイテム【全方位・魔導セキュリティライト&ぽかぽかセンサー】を獲得しました』
『※村の全域に設置される魔法の照明網です。不審な動的エネルギーを感知すると、その場所を太陽のような明るさと極上の温もりで照らし出し、対象の隠蔽を完全に無効化します』
「お、最新のセキュリティシステムだな。シオンのドローン監視網と連動させれば完璧だ」
俺がシステムを起動させた直後だった。
村の広場の片隅、タワーマンションの影になっている雪だまりの付近で、突然「ピカァァァッ!」と強烈な光が照射された。
「……きゃあああっ!?」
光の中から、女性の悲鳴が上がった。
俺とシオン(CIO)が駆けつけると、そこには黒いボディスーツに身を包んだ、妖艶な紫の髪の美女が、眩しそうに目を押さえてうずくまっていた。
「な、なんだこの異常な光は……! 私の『影潜み(シャドウ・ハイド)』のスキルが強制解除されただと!?」
「タクト様! あれは魔王軍最後の四天王……『暗殺鬼シャドウ・カーミラ』です!」
シオンが即座に短剣を構える。
四天王の中で最も狡猾で、影から影へと渡り歩き、標的を確実に仕留める最強の暗殺者。
彼女は俺(村長)の命を狙い、結界の隙間を縫って村の影に潜伏していたのだ。
「くそっ、人間の分際で私の暗殺を妨ぐとは……! だが、私の刃はすでに貴様の喉元に――って、あ、あれ?」
カーミラが殺気を放とうと立ち上がった瞬間。
彼女を照らしている【ぽかぽかセンサー】の光から、まるで春の陽だまりのような「極上の温もり」が照射された。
「あ……あったかい……」
カーミラは毒の塗られた短剣を取り落とし、光の中で両手を広げて、うっとりとした顔で天を仰いだ。
「あぁぁ……冷え切った手足の指先まで、じんわりと温められていくぅ……。私、ずっとこんな温もりを求めていたの……」
「(……暗殺鬼が、光の中で日向ぼっこして溶けているぞ)」
「タクト様。これもタクト様の計算(罠)ですか……恐るべし」
暗殺者として「影」に潜み続けた彼女の体は、氷点下の雪原の冷気によって限界まで冷え切っていたのだ。
極上のぽかぽか光線を浴びたカーミラは、戦意を完全に喪失し、雪の上にへたり込んでしまった。
(残り288日。明日は何が出る?)




