第76話:【76日目】インドア娯楽の拡充と、温泉卓球の魔力
ネクロディア(CDO)が村のデジタルインフラを整え、こたつ列車という冬の風物詩も定着した。
村人たちの生活満足度は極めて高いが、PMとして見過ごせないデータがあった。
「タクト様。ヘルスチェッカーの統計データですが、冬に入ってから社員たちの『運動量』が平均して二割ほど低下しています。ゲレンデはありますが、吹雪の日は外に出られませんし……」
秘書のシルフィが、ホログラム円卓にグラフを投影して報告してくれた。
「冬の運動不足か。代謝が落ちれば免疫力も下がる。室内で、天候に関係なく体を動かせるレクリエーション(福利厚生)が必要だな」
76日目の朝。俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り290日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、大浴場の隣にある空きスペースに、新たな建屋が展開された。
『SSRアイテム【全天候型・魔導アミューズメント施設&極上・温泉卓球セット】を獲得しました』
『※天候に左右されない広大な屋内遊戯施設です。温泉卓球セットは、打つたびに魔力による爽快な打撃音と光のエフェクトが発生し、遊ぶ者のストレスと運動不足を解消します』
「キタ! 日本の温泉旅館の最強アクティビティ、温泉卓球!」
俺はすぐさま、大浴場で朝風呂を浴びていたガルドやザンギュラたちを呼び出した。
真新しいフローリングの部屋には、緑色の卓球台がずらりと並んでいる。
「ガハハ! 村長、なんだこの小さな板と軽い玉は?」
「これで玉を打ち合うスポーツだ。風呂上がりに浴衣を着てやるのが一番盛り上がるんだよ」
ルールを説明すると、闘争本能の強いドワーフや魔族たちは、あっという間に卓球の魅力に取り憑かれた。
「うおおおっ! 魔王軍四天王のスマッシュを喰らいやがれェッ!」
「甘いぜザンギュラ! ドワーフの重心の低さを舐めるなァッ!」
ピンッ、パーンッ! という軽快な音と共に、ラケットが玉を弾くたびにキラキラと光の粒子が弾け飛ぶ。
怪我の心配が一切ない「安全な闘争」は、彼らの運動不足とストレスを完璧に発散させていく。
「アーサー殿。勇者の動体視力、見せてもらおうか」
「ふふ、ネクロディアさんこそ。魔法使いの反射神経、どれほどのものか」
隣の台では、有給休暇中の勇者アーサーと、骸骨のネクロディア(CDO)が、目にも留まらぬ超高速ラリーを繰り広げている。もはや常人には玉の軌道すら見えない。
種族の壁を越えたスポーツ交流は、村のチームビルディングをさらに強固なものにした。
(残り289日。明日は何が出る?)




