第75話:【75日目】魔導こたつ列車と、冬の慰安旅行
ネクロディア(CDO)が加入し、村のIT化(魔導具間のネットワーク連携)が劇的に進んだ。
スプリンクラーの水量データと温室の温度データが連動し、タワマンの空調までが自動最適化されるという、スマートシティ化が一気に進んだのだ。
「素晴らしい進捗だ。プロジェクトの大きな節目として、ここらでみんなで『チームビルディング』を行いたいな」
75日目の朝。俺は「残り291日」の紙をめくった。
村はすっかり雪景色。この美しい景色を、温かいまま全員で楽しめるようなレクリエーションが欲しい。
『SSRアイテム【絶景・魔導こたつ列車&無限の雪見酒セット】を獲得しました』
『※結界の内外を安全に周回する魔法の観光列車です。全席に極上のこたつを完備し、窓からは最高の雪景色を楽しめます』
「キタ! 日本人の冬のロマン、こたつ列車!」
俺はガルドの建築部隊とネクロディアのシステム連携を駆使し、村の周囲をぐるりと囲むように光のレール(魔力線)を敷設させた。
そして午後。
仕事を半休にした村人たち(二百名以上)が、広場に現れた長い長い「こたつ列車」に乗り込んだ。
「ぽぉぉぉぉっ!!」
汽笛の音と共に、列車が雪原を滑るように走り出す。
車内は、長い掘りごたつがずらりと並んでおり、窓のすぐ外にはキラキラと輝く銀世界が広がっている。
「おおおおっ! あったけえこたつに入りながら、雪山の中を走ってるぞ!」
「ガハハ! 最高だぜ村長! しかもこの『雪見酒(熱燗)』、五臓六腑に染み渡りやがる!」
ガルドと獣人たちが、こたつで向かい合って豪快に盃を交わしている。
別の車両では、信じられない光景が広がっていた。
「アーサー殿。お主、なかなか良い飲みっぷりだな。どうだ、もう一杯」
「ありがとうございます、ザンギュラさん。グレイシアさんも、こちらのスルメ(マルコからの輸入品)をどうぞ。ネクロディアさんは……ホットミルクですね」
世界を救うはずの勇者アーサーが、かつては血で血を洗う宿敵であったはずの魔王軍幹部(四天王のうち三人)とこたつを囲み、一緒にお酒を飲んで談笑しているのだ。
「……勇者と魔王軍が、こたつでスルメをかじって意気投合か。平和な世界だな」
「タクト様。これもすべて、タクト様が作られた『ホワイトな環境』の賜物ですよ」
俺の隣のこたつで、シルフィが嬉しそうに微笑みながらお茶を淹れてくれた。
「同じプロジェクトを進める仲間として、一緒に同じ景色を見て、温かい飯を食う。これが一番のチームビルディングだからな」
窓の外では、雪雲の隙間から冬の太陽が顔を出し、雪原を黄金色に照らし出していた。
残る四天王は、暗殺鬼カーミラのみ。そして魔王の復活まで、あと290日。
どんな脅威が迫ろうとも、この温かい「こたつ列車」に乗っている仲間たちがいれば、全てをホワイトに解決できるだろう。
俺たちは、極上の雪見酒を傾けながら、ホワイト村のさらなる発展を誓い合った。
(残り290日。明日は何が出る?)
【キャラクター紹介(75日目時点)】
タクト
元PMの村長。アンデッドの強制労働を「コンプライアンス違反」と断じ、死者の尊厳を守るために霊園を作るほどの徹底したホワイト志向。
シルフィ
エルフの秘書。こたつ列車ではタクトの隣の席を死守し、甲斐甲斐しくお茶を淹れている。
ガルド
ドワーフの建築リーダー。こたつ列車で雪見酒の魅力に完全に憑りつかれた。
シオン
ダークエルフのCIO。アンデッド軍団の襲来に青ざめていたが、タクトの常識外れの迎撃(足湯)に再び度肝を抜かれた。
ザンギュラ
元魔王軍四天王(CSO)。勇者アーサーとこたつで酒を酌み交わす「良きおじさん」と化している。
グレイシア
元魔王軍四天王(CFO)。スルメの味を知り、予算管理の合間のおやつに採用しようとしている。
ネクロディア(New)
元魔王軍四天王『大魔導士』。村の最高デジタル・データ責任者(CDO)。古いシステムの保守から解放され、タクトが用意した最新インフラで生き生きとプログラミング(魔法構築)を楽しんでいる。骨磨きが日課。
アーサー
有給休暇中の勇者。四天王たちと酒を飲み交わし、もはや「魔王討伐」というタスクを完全に記憶の彼方へ葬り去ろうとしている。




