第70話:【70日目】村開設70日記念と、残された四天王
俺がこの異世界の荒野に降り立ち、日めくりカレンダーをめくり始めてから、今日でちょうど70日目。
55日目に盛大な祝祭をやったばかりだが、キリの良い数字はプロジェクトの節目として祝うべきだ。
70日目の朝。「残り296日」の紙から現れたのは、小さな魔石のプロジェクターだった。
『SSRアイテム【開拓70日記念・魔導プロジェクションマッピング&豪華ディナーセット】を獲得しました』
『※建物の外壁などを利用して、大迫力の立体映像と光のショーを展開し、同時に人数分の最高級ディナーを自動提供します』
「よし、今夜はタワーマンションの壁を使って、盛大なショーをやろう!」
夕方、広場に集まった村人たちの前で、タワーマンションの巨大な壁面をスクリーンにしたプロジェクションマッピングが上映された。
俺がこの村に来た最初の日から、シルフィとの出会い、ガルドの建築、獣人たちの加入、温泉の採掘、防衛戦、そして魔王軍の寝返り……。
70日間の軌跡が、光と音の魔法で感動的に描かれていく。
「アタシ、村長に拾ってもらって本当によかった……!」
ルナが感動して泣き出し、セシルやマリアがもらい泣きしている。
映像の最後には、「魔王討伐(復活)まで、あと295日! これからも最高の村を作ろう!」というメッセージが浮かび上がり、同時にテーブルにはローストビーフやシャンパン(果実の炭酸水)がズラリと並んだ。
「「「タクト村長、バンザーイ!!」」」
広場は割れんばかりの歓声と笑顔に包まれた。
――しかし、その頃。
ホワイト村の祝祭から遥か遠く、北の極寒の地にある「魔王城(仮)」。
玉座の間に集まったのは、魔王軍四天王の残り二名。
骸骨の姿をした大魔導士『リッチ・ネクロディア』と、妖艶な姿の暗殺鬼『シャドウ・カーミラ』だった。
「……南へ向かったザンギュラとグレイシアからの連絡が完全に途絶えた。監視の使い魔によれば、奴ら、人間たちが作った謎の結界村に『寝返った』らしい」
ネクロディアが、カタカタと骨の指を鳴らしながら忌々しげに吐き捨てる。
「あらあら。あの武骨なザンギュラや、堅物のグレイシアが? よほどの洗脳魔法でも受けたのかしら」
「分からん。だが、我らが魔王軍の兵站と防衛の要を失ったのは事実。このままでは、あと三百日足らずで魔王様が復活された時、お迎えする城すら完成しないという大失態になる」
ネクロディアの眼窩に、青白い怒りの炎が灯った。
「これ以上、得体の知れない人間の村を放置するわけにはいかん。……カーミラよ、私が自ら出撃し、巨大な『死の軍団』で、あの村を跡形もなく蹂躙してこよう。お前は留守を頼む」
「ふふっ、お手柔らかにね。ネクロディア」
ついに、魔王軍の最凶の策士が動き出した。
しかし彼はまだ知らない。彼が向かおうとしている場所が、アンデッドの怨念すらも温泉とコタツで骨抜きにしてしまう、世界一のホワイト村であることを。
村の開設から70日。
波乱の気配を含みつつ、俺たちのホワイト村プロジェクトは次なるフェーズへと進んでいく。
(残り295日。明日は何が出る?)
【キャラクター紹介(70日目時点)】
タクト
元PMの村長。社員のメンタルケアや乾燥対策など、細やかな福利厚生で村のロイヤリティを限界突破させ続けている。
シルフィ
エルフの秘書。タクトへの忠誠心が高すぎて、最近はカラオケで愛を熱唱しようと隙を狙っている。
ガルド
ドワーフの建築リーダー。カラオケではヘヴィメタルで魂のシャウトを見せる。
ルナ
狼獣人の警備リーダー。泥パックで肉球がぷにぷにになり、上機嫌。
セシル
元・聖女の総料理長。毎日のまかない作りが生きがい。
マルコ
行商人。ドローン配送のおかげで、雪山でも取引を継続中。
シオン
ダークエルフのCIO。ドローンや通信インフラの管理を完璧にこなす。
ザンギュラ
元魔王軍四天王(CSO)。勇者アーサーとカラオケで肩を組み、ブラック企業への恨みを歌い合う仲に。
フレイア
元Sランク冒険者の見習い警備員。サウナと温泉ですっかり丸くなった。
グレイシア
元魔王軍四天王のCFO。冬の乾燥を気にしていたが、泥パックで究極の美肌を手に入れた。
アーサー
勇者。有給休暇中。マインドフルネス瞑想により「世界を救わなきゃ」という強迫観念から解放され、真の休日を楽しめるようになった。




