第69話:【69日目】魔導カラオケボックスと、魂のシャウト
物流問題も解決し、外の雪を眺めながら温かい室内で過ごす平和な日々。
しかし、冬は夜が長く、屋内にこもりがちになるため、どうしても「ストレスの発散口」が不足しがちになる。
「フィットネスジムも良いが、もっとこう……大声を出して発散するような『エンタメ』が必要だな」
69日目の朝。俺は「残り297日」の紙をめくった。
現れたのは、防音素材で覆われた四角いコンテナ型の部屋と、光るマイクだった。
『SSRアイテム【全自動・魔導カラオケボックス一式】を獲得しました』
『※使用者の脳内にある楽曲の伴奏を自動生成し、完璧な防音空間で魂の歌声を響かせることができる魔法の娯楽施設です。採点機能付き』
「キタ! 日本が誇る最強のストレス発散インフラ!」
俺は広場の隣の娯楽エリアにこのカラオケボックス(大小複数の部屋)を設置し、夕方の終業後に村人たちを招待した。
「村長、なんだこの四角い箱は?」
「ここで、伴奏に合わせて大声で歌を歌うんだ。防音だから外には一切聞こえない。日頃のストレスや愚痴を、歌に乗せて叫んでくれ!」
最初は「歌なんて恥ずかしい」と躊躇していた村人たちだったが、一度マイクを握るとその魔力(エコー機能と完璧な伴奏)に取り憑かれた。
「うおおおおおっ! 俺様のぉぉぉ! ハンマーが火を吹くぜぇぇぇっ!!」
ガルドがドワーフの伝統的な労働歌を、ヘヴィメタル風の激しいアレンジで絶叫する。
「王都の馬鹿貴族どもォォォッ! 俺たちを使い捨てにしやがってェェェッ!」
勇者アーサーが、普段の温厚な姿からは想像もつかないようなデスボイスで、ブラック王国への怨念をシャウトしている。
「いいぞアーサー! 俺も魔王軍の無茶振りには散々泣かされたからな! その気持ち、痛いほどわかるぜェェェッ!」
元四天王のザンギュラがタンバリンを全力で叩きながら、勇者と肩を組んで意気投合している。
世界を救う勇者と、世界を滅ぼす魔王軍幹部が、カラオケの個室で一緒にブラック企業への不満を歌い上げる。カオス極まりないが、最高のストレス発散だ。
「タクト様っ! 私とデュエットしてくださいっ!」
「ちょ、シルフィ、マイク近いって!」
俺も久しぶりにマイクを握り、前世で徹夜明けの帰り道によく歌っていたアニソンを熱唱した。
歌うことは、心の解放だ。
カラオケボックスから出てきた社員たちは皆、憑き物が落ちたようにスッキリとした笑顔になっていた。
(残り296日。明日は何が出る?)




